多くの消費者は、スーパーで同じ商品があれば数十円単位でも価格が安いものを選びます。一方、FXトレードでは元手の3%ほどの損失であれば、気にせずに受け入れてしまう場合があります。この背景には、取り扱う金額が大きければ大きいほど損得感情が鈍くなるという、深層心理の特徴があるのです。FXで継続して利益を出すには、この特徴をしっかり意識できていることがカギになると、株式会社ソーシャルインベストメントの清水一喜氏はいいます。みていきましょう。

FXトレードに隠された「心理的な罠」

多くの消費者は、スーパーで同じ商品であれば価格が安いものを選ぼうとします。なかには、10〜20円ほどの値引きのために遠出をする人も存在します。

しかし、兼業トレーダーのなかには、FXトレードで元手の3%ほどの損失であれば、なにも気にせずに次のトレードに移ってしまう人もいます。3%といえど、元手が100万円であれば3万円の損失です。なぜ、普段は数十円の価格にこだわる人が、トレードになるといきなり数万円の損を受け入れてしまうのでしょうか? 

今回は「感応度逓減性(かんのうどていげんせい)」という心理用語を用いて、FXで稼げない人が意識するべき行動を解説していきます。

感応度逓減性とは?

感応度逓減性とは「人は取り扱う金額が大きければ大きいほど、損得感情が鈍くなる」という心理的な特徴です。有名な例で、普段は数十円の価格に一喜一憂する人が、数千万円のマイホームを買うときには、数十万円のオプションを躊躇なく頼んでしまうというものがあります。車を買うときにさまざまなカスタムをしてしまう人も、この深層心理の原則に当てはまるでしょう。

お金そのものの価値は変わらないはずですが、人間には環境によって金額による心理的負担が増減する深層心理があります。しかし、レバレッジを掛けて通常の投資以上にリスクを負って取引をするFXにおいては、人間の深層心理に抗う必要があります。

FXでなかなか稼げず悩んでいる人は、この記事で感応度逓減性の原理を理解し、普段のトレードで応用していけば、よりよいトレード結果が生まれてくるはずです。

FXで稼げない人は財布の紐が緩い?

FXを始めて、安定したプラス収益を出せない人には「資金管理に対する意識が低い」という特徴があります。貯金をしようとしている人でも散財癖があると、当然ですがお金が貯まることはないでしょう。

FXトレードも同様で、損失に対してシビアに向き合えない人は、自分の1回の損失が元手の何%であるかを即答できないばかりか、なかなか安定したプラスの収益を出すことができないでしょう。継続して利益を出せる人や、プロトレーダーは、1回のトレードであり得る損失額を計算して、限られた損失範囲のなかで利益を最大化しようとします。稼げないトレーダーの多くは、自分が思っている以上に損失を出していることがほとんどです。

資金管理に対して、意識的な行動をとっていない人は、約定履歴を確認してみましょう。利益以上に損失が多いことに気がつくかもしれません。また、利益トレードのpips数よりも損失トレードのpips数のほうが大きい人は要注意です。

自分の損益に対する意識の見直しは、稼げているようで稼げていない原因を突き止める第一歩になります。

元手の額に関わらず損失にシビアなプロトレーダー

元手の額が大きければ大きいほど、1回の損失に対する感情が鈍くなってしまう初心者トレーダーに対し、プロトレーダーは、元手の大きさに感情を左右されない意思を持っています。

たとえば、プロトレーダーは起こり得るリスクを把握して、トレードごとに扱うロット数を調整しています。ボラティリティの高い相場では、損切りの幅が広くなる可能性があるため、扱うロット数を低くします。ロット数を調整することで、普段の利益額以上の大きな損失を出す可能性をとことん潰しています。

プロトレーダーの損失に対する探究心は計り知れません。トレード毎のロット数の振り返りや、損切幅が正しかったかどうかを常に試行錯誤しています。損に対してシビアな姿勢を貫くプロトレーダーは、元手の金額に関わらず、よい結果を出すことができています。 

「感応度逓減性」を意識して、安定したプラス収益を出す

今回は、人間の深層心理である感応度逓減性の法則を解説しました。扱う金額が大きくなればなるほど、人間は損得感情が鈍くなります。

しかし、トレード世界において、損得感情が鈍くなるということは、継続的に利益をあげていくことに大きな支障をもたらすことを意味します。日常のトレードで、なんとなく元手の10%の損失を出してしまった、ということがあってはプロトレーダーにはなれないでしょう。

FXで勝つためには、人間の深層心理に打ち勝つ必要があります。感応度逓減性の法則を意識して、元手の多い少ないに関わらず、1度の損切で元手の何%を失ってしまったのかを考えるようにしましょう。

FX初心者であれば、1度の損失は元手の1%以内に収めると心理的負荷も小さくなり、トレードの内容を落ち着いた精神状態で振り返ることができます。

FXでなかなか稼げていない人が稼げるようになるためには、まず1度のトレードにおける許容損失の範囲を決めましょう。「損失は元手のOO%まで」という決まりを作っておけば、たとえ扱うロット数や金額が増えても、損失率の範囲は一定になります。

稼げない人の共通点は、扱う金額が大きくなればなるほど、損失に対してルーズな姿勢になってしまうことです。あなたも損失に対する意識を高めていけば、いずれプロトレーダーのような、感情や深層心理に惑わされない強い精神を持ったトレーダーになれるでしょう。

清水 一喜

株式会社ソーシャルインベストメント 執行役員

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