クイーン・エリザベス級航空母艦の2番艦「プリンス・オブ・ウェールズ」の現状がイギリスで話題となっています。就役から故障続きで目立った活躍がなく、ついに、姉妹艦「クイーン・エリザベス」の部品の供給源になったというのです。

3年のうちで900日も動いていない…

2023年4月下旬からイギリスで、同国海軍に所属するクイーン・エリザベス級航空母艦の2番艦「プリンス・オブ・ウェールズ」が話題となっています。姉妹艦である「クイーン・エリザベス」の部品の供給源にされているというのです。

同艦は2022年8月27日、ポーツマス港を出港しアメリカに演習へ向かう途中、ワイト島沖で右舷のプロペラシャフトを結合する部分に故障が発覚し、急遽引き返しドック入りすることとなり、現在も修理中です。

それ以前にも同艦は故障が頻発しており、2020年5月に乗員のレクリエーションエリアのパイプが破損。同年10月には、機関室近くで漏水が発生し約1mが浸水、電子機器が使い物にならなくなり、修理に193日を要しました。

修理のほか、定期的メンテナンスなどを含めると、2019年12月に就役開始してから約900日もの日数をドックで過ごしているということで、ほぼ海軍の空母としての任務についていません。にもかかわらず、2022年8月に発生した損傷の修理費は膨れ上がり、現状で約2500万ポンド(約43億円)必要ということで批判も起きていました。

結果的に空母2隻体制で行う任務を1番艦「クイーン・エリザベス」だけが担当し、同艦に負担がかかっているわけですが、同艦が故障した際に備えスペアパーツとして、「プリンス・オブ・ウェールズ」のオイルフィルターや燃料フィルター、航空機用のエレベーターの部品の一部が取り外されていると、2023年4月24日に報じられました。

このことを一部イギリスメディアはいわゆる「共食い整備」であるとし、「プリンス・オブ・ウェールズ」は部品取り用のスクラップヤードになったと批判的な論調です。

一方、これには反対意見もあります。元海軍軍人らは、「プリンス・オブ・ウェールズ」から取った部品は特注品で、すぐに交換品を入手することが不可能であるため、空母の運用を維持するため応急処置的に姉妹艦から取ったものではとしています。

また、海軍の広報担当者も「姉妹艦でパーツを共有するのは、軍艦にとって一般的な方法で珍しくありません」としており、生産体制が整えば、問題ないとしています。

しかし、特注部品の生産が滞っていることは事実であるため、「プリンス・オブ・ウェールズ」が予定通り2023年8月に復帰できるのか疑問視する声が多いうえ、2024年に予定されている「クイーン・エリザベス」のドック入りに間に合うのか、という懸念もあるようです。

滅多に揃わない姉妹艦、手前で艦載機が駐機されていないのが「プリンス・オブ・ウェールズ」(画像:イギリス海軍)。