二度の監督交代に踏み切りながら迷走する、今シーズンのチェルシー。実際のところ、彼らの戦力はどの程度なのだろうか?

 2022年5月30日ロサンゼルス・ドジャースの共同オーナーであるトッド・ベーリー氏らの共同事業体によって買収されたチェルシーは、積極的な戦力補強を行ってきた。昨夏の移籍市場ではイングランド代表FWラヒーム・スターリングスペイン代表DFマルクククレジャ、フランス代表DFウェズレイ・フォファナセネガル代表DFカリドゥ・クリバリなどを獲得。夏の移籍市場における補強費の記録を塗り替える大型補強を行った。さらに今年1月にはアルゼンチン代表MFエンソ・フェルナンデスウクライナ代表FWミハイロ・ムドリク、フランス代表DFブノワ・バジアシーレなどを確保。この1年で戦力補強に6億ポンド(約1,022億円)もの大金を投じたと言われている。

 それでもチェルシーは結果を出せていない。昨年9月にトーマス・トゥヘル氏を解任してブライトンからグレアム・ポッター氏を引き抜くも、わずか7カ月で同指揮官も解任。クラブOBであるフランク・ランパード氏を暫定監督に据えたが、ランパード体制は公式戦6戦全敗という泥沼状態にある。

 メンバー表を見ればタレントだけは揃っていそうなチェルシー。彼らについてイギリスメディア『BBC』が「ポジション別の戦力批評」をしているので紹介しよう。

[写真]=Getty Images

◆■ゴールキーパー

 チェルシーはこのポジションに大金を投じてきた。2018年にはゴールキーパーの移籍金最高額となる7,100万ポンド(約121億円)でアスレティック・ビルバオからGKケパ・アリサバラガを獲得するも、同選手はイングランドの水に慣れるのに苦労した。そのため2020年にはレンヌからセネガル代表GKエドゥアール・メンディを2,200万ポンド(約37億円)で連れてきて一時は守護神に据えたのだが、ポッター前監督とランパード暫定監督はケパを優先している。

 元チェコ代表GKペトル・チェフ氏やベルギー代表GKティボー・クルトワ(現レアル・マドリード所属)が抜群の安定感を誇っていた時期が懐かしい。記者も「チェルシーの守備の脆さは威厳のあるゴールキーパーがいないから」として、今オフに補強することを提言している。

 なお、『BBC』のアンケートによると、チェルシーの現ゴールキーパー陣の評価はAからFまでの6段階で3番目となる「C」に最も票が集まっている。

◆■サイドバック

 本来ならばチェルシーの最大の強みとなるポジションがサイドバックだろう。「左サイドバックのベン・チルウェルと右サイドバックのリース・ジェームズはピッチに立てば欧州屈指のサイドバック」と記事も評価している。だが、問題はピッチに立てない機会が多すぎること。二人とも負傷に悩まされており、チルウェルは今季リーグ戦22試合、ジェームズに至っては16試合の出場にとどまっている。

 今後に目を向けると、1月に加入した後にリヨンに貸し出されたフランスU-21代表の右サイドバック、マロ・ギュスト(19歳)が控えている。さらにはウイングバックをこなせるルイス・ホール(18歳)やバーンリーに貸し出し中の左サイドバック、イアン・マーステン(21歳)など若い才能も豊富だ。なお、記者は「左サイドバックのククレジャは酷い1年目を送っている」と夏の新戦力に辛口だ。

BBC』のアンケートによる通信簿では、2番目に評価の高い「B」に最多票が集まった。

◆■センターバック

 ブラジル代表DFチアゴ・シウヴァイングランド人DFトレヴォ・チャロバー、クリバリ、W・フォファナ、B・バジアシーレなど、センターバックの層の厚さは折り紙付きだ。さらにブライトンで武者修行しているレヴィ・コルウィル(20歳)も評価を高めており、このポジションはチェルシーの財産になるだろう。

 ここまでリーグ戦で12位に低迷しながら「失点数はリーグで3番目に少ない」と記事もセンターバック陣を評価している。記者も「負傷さえなければ十分な戦力が揃っているポジション」と、守備ライン中央に関しては自信をのぞかせている。

BBC』のアンケートによる通信簿も、サイドバックと同じく2番目に高い「B」の評価がついている。

◆■セントラルミッドフィルダー

 移籍金世界ランキングで歴代5位の1億700万ポンド(約182億円)で加入したE・フェルナンデスが名を連ねる同ポジションもタレントは豊富だ。クロアチア代表MFマテオ・コヴァチッチイングランド代表MFコナーギャラガーといったダイナミックなオールラウンダーもおり、献身的なフランス代表MFエンゴロ・カンテも健在だ。記者は彼らを高く評価しながら「バランスを取るため、守備に強いミッドフィルダーがどうしても必要」と訴えている。

BBC』のアンケートによる通信簿では「B」が37%、「C」が35%という得票率になっており「Bマイナス」といった感じだろうか。

◆■攻撃的ミッドフィルダー

 ポルトガル代表FWジョアンフェリックスやドイツ代表MFカイ・ハフェルツ、イングランド代表MFメイソン・マウントモロッコ代表MFハキム・ツィエク、アメリカ代表FWクリスティアン・プリシッチイングランド人FWノニ・マドゥエケ、スターリング、ムドリクなど――。選手表を見れば、よだれが出るほど多種多様の才能が揃っているが、トゥヘル氏やポッター氏、そしてランパード暫定監督も正解コンビネーションを見い出せずにいるのがこのポジションだ。

BBC』はプリシッチ、ツィエク、マウントが今オフに退団する可能性を指摘し、どの組み合わせが機能するのか答えを導き出すためには「夏の解体作業」が必要になると説明。記者も「選択肢が多すぎる。誰を放出するか選ぶことになる」と考えている。

BBC』のアンケートによる通信簿は「C」が最多得票率を集めた。

◆■ストライカー

 チェルシーの最大の問題点がこのポジションだ。今季チェルシープレミアリーグで33試合を戦って31ゴール。マンチェスター・Cノルウェー代表FWアーリング・ハーランドの得点数(35ゴール)を下回っているのだ。ランパード体制になってからの6試合ではわずかに2ゴール。公式戦最近8試合で見ても、その2点だけしか奪えていない。

BBC』も、現在33歳の元ガボン代表FWピエール・エメリク・オーバメヤンは長期的な答えではなく、1月に加入したコートジボワール代表FWダトロ・フォファナ(20歳)は粗削りと指摘。インテルに貸し出しているベルギー代表FWロメル・ルカクもいるが、彼が戻ってくるかは不透明で、戻ってきたとしても活躍する補償はない。記者も「ストライカー問題を解決するまで、優勝争いどころかトップ4争いにさえ絡めない」と、致命的な問題を抱えていることを認めている。

BBC』のアンケートによる通信簿では、40%を超える人が最低評価である「F」をつけている……。

 果たしてチェルシーは今オフにチームを立て直すことができるのだろうか? 彼らの巻き返しに期待したい。

(記事/Footmedia)

英メディア『BBC』がチェルシーの「ポジション別戦力批評」を実施 [写真]=Getty Images