ほとんどの動物なら、ハチやスズメバチの大群からはできれば距離を置きたいだろう。ところが自ら進んで巣に乗り込んで、周りに大量のハチがブンブンしてようと、平気な顔してハチの幼虫を食べる珍しい鳥がいる。
タカ科ハチクマ属のハチクマだ。これだけ大量にいたら刺されまくで大変なことになっちゃうんじゃない?と思うかもしれない。
だが、刺されることはほとんどないと考えられている。ここではハチクマの生態について見ていこう。
猛禽類、タカの仲間なのにハチが主食という珍しい鳥がいる。和名の「ハチクマ」は、同じタカ科のクマタカに姿が似ていて、ハチの幼虫を食べることからその名がついた。
やはり興味深いのは自らハチの巣に出向いてそれらを食べる姿だろう。写真家のチェン・チェングァン(Chen Chengguang)さんが撮影した写真には、大量のハチに囲まれているにもかかわらず、涼しい顔でハチを食しているハチクマの姿がとらえられている。
ハチクマ属は、ミツバチやスズメバチの幼虫や蛹(さなぎ)を主食とする。なので積極的にハチが大量に飛び交う巣に向かい、それらを食べているのだ。
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見ている方がぞわぞわするが、ハチクマは全く平気な顔をしている。
ハチクマがハチを恐れない理由
ハチクマはユーラシア大陸や東南アジアに広く分布しており、日本では夏鳥として渡来し、九州から北海道までの各地で繁殖しする。
全長は57~61cm、体重は0.5~1kgほどでメスの方がオスよりもやや大きい。翼を広げると1.2~1.3mになり、日本に分布するタカ科の仲間の中では大型だ。
ハチクマは、ミツバチからスズメバチ、アシナガバチに至るまでハチの種類を選ばない。ハチの巣を襲って中にいる幼虫や蛹をついばむ。時には巣にあるハチミツも舐める。
Honey Buzzard vs Honey bee || Hunting tricks of Honey Buzzards--Honey Buzzards hunt Honey bees nest
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ハチクマはハチに刺されるのが怖くないのだろうか?
ハチの攻撃を受けてもハチクマは逃げることなく捕食行動をし、刺されることもほとんどないというが、詳しい理由は分かっていない。
だがいくつかの仮説が存在する。
ハチクマは硬い羽が鱗のように厚く生え、さらにその下に羽毛が厚く密生していることで、毒針が貫通しないという説、ハチが嫌がる臭いやフェロモンを出している説、ハチの毒に耐性を持っている説などだ。
ただし、ハチクマといえど全く刺されないということはないようで、頭に羽毛が生え揃っていない若鳥などは、ハチの反撃を受けて退散することもあるそうだ。
Honey Buzzards vs Hornets _ Honey Buzzards hunting Hornets nest | Hunting tricks of Honey Buzzards
なぜハチの幼虫を主食にするようになったのか?
ハチクマは、ハチの少なくなる秋から冬にかけては昆虫類や小鳥、カエル、ヘビ等の動物も捕食するが、主食はやはりハチの幼虫だ。
ハチクマがハチを食べるようになった理由についてもまだ確かなことはわかっていないが、いくつかの説が考えられている。
・元々は昆虫類や小鳥、カエル、ヘビなどを食べていたが、ハチの巣にある幼虫や蛹が高カロリーで栄養価の高い餌であることに気づき、次第にハチを好むようになったという説
・元々は植物食で、松葉や松の実などを食べていたが、松林が減少したことで餌が不足し、代わりにハチの巣にあるハチミツや幼虫を食べるようになったという説
・元からハチを食べていて、その過程でハチの毒素に対する耐性や防御機構を獲得し、他の猛禽類には真似できない独自の食性を確立したという説。
いずれにせよ、ハチクマはハチを食べることで生存に有利な利点を得ていると考えられる。
ハチの巣は一箇所に多くの餌が集まっており、効率的に捕食できる上に、ハチの巣は他の動物には敵わない防御力を持っており、競合する動物が少ない。
ハチクマはハチを食べることで様々な利点を得ており、その食性は適応進化した結果だと考えられている。
いずれにせよ変な生き物(良い意味で)であることは確かで、それだけに興味深い存在なのである。
written by parumo
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