那覇空港を拠点とする国内唯一のスタイルの航空機整備企業「MRO Japan」には、ユニークなデザインのトーイングカーが存在していました。この車両が生み出されたのは、さまざまな狙いがありました。

グラデーションが特徴

沖縄・那覇空港には、特定の航空会社の整備を担うのではなく、さまざまな航空会社から整備や修理などを引き受ける国内唯一のスタイルの航空機整備企業「MRO Japan」の格納庫があります。ここにはユニークなデザインの「トーイングカー(飛行機を牽引するための車両)」が存在していました。この車両はなぜ生み出されたのでしょうか。

この車両は青のグラデーション塗装をベースに星柄をちりばめたもので、下部には琉球王朝の時代から沖縄に伝わる伝統的な柄「ミンサー織り」のラインが入っています。またドア横にはシーサーが大きく描かれ、ところどころにワンポイントでうさぎ、キャラクターの「ムック」「ガチャピン」、プロボクサーの具志堅用高さんなどが描かれています。

このトーイングカーが特別塗装をまとってデビューしたのは、2019年のこと。那覇空港に隣接する航空自衛隊那覇基地で行われた航空祭イベント「エアーフェスタ」で披露し、当時那覇空港に拠点を移したばかりの同社の認知度を向上する目的だったといいます。

デザインは社内公募により決められたもの。それを生み出した担当者によると、デザインにはさまざまなポイントがあったそうです。

独特なデザインとなった狙いとは

MRO Japanのトーイングカーのデザインで重視されたのは、沖縄らしさのほか、技術を要するということだったといいます。

「これまで経験がなかったグラデーション塗装を採用することで、『そういうこともできるんだ』とアピールする狙いもありました。また、こういった技能を沖縄のプロパー(直接採用や生え抜きのスタッフ)に伝承できるような塗装方法ということで、このデザインに決定しています」。担当者は次のように話します。

また、「後輩にも好きに入れていいよ!といったら描かれた」のが、先述の「うさぎ」のワンポイント。「実際に塗っているプロパーの子たちも『(ワンポイントデザイン)入れちゃいました!』と報告されることもしばしばで、塗装作業は遊び心を持ちながら進めてました」と話します。

サイズこそ小さいながら、異彩を放つ具志堅用高さんのワンポイントデザインについては「格納庫具志堅さんがいらっしゃるので、顔を入れることになった」とのこと。「そうやって細かいワンポイントがどんどん増えていったんです」とその特別デザインの歴史を振り返ります。

「この車両をきっかけに、いろいろな整備車両の塗装をプロパーの子に担当させており、どんどんスキルを向上させているところです。飛行機まるごと1機となると、人数も必要ですし、商品としてご提供するレベルに達しないと担当させられないので。整備車両であればきれいな会社と思っていただける面もありますし、プロパーの子たちが実績を積む訓練にもなります」(担当者)

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なお、この特別デザインのトーイングカーはすでに運用期間を終えており、2023年4月現在は真っ白な2代目のトーイングカーがその役目を担っています。この2代目のトーイングカーも今後、社内公募によりデザインが決められ、特別塗装をまとう予定だそうです。

「MRO Japan」特別デザインのトーイングカーにけん引されるスターフライヤー機(乗りものニュース編集部撮影)。