3月1日にリリースした9枚目のフルアルバム『POWER』が、グループ史上過去最高初動売上となる24.9万枚を突破したジャニーズWEST。その追い風を受けてスタートしたアリーナツアー「ジャニーズWEST LIVE TOUR 2023 POWER」の横浜アリーナ公演が3月24~27日に渡って開催された。

【写真を見る】取材が入っているということで、「みんなで(取材のカメラマンさんに)写真撮ってもらおうや」と横一列で座る7人

観客が声を出して声援を送ることが徐々に可能となり、本来のジャニーズWESTらしいコンサートが戻りつつあることを実感した今回のステージ。開演前のアナウンスは、アルバム『POWER』のTV SPOTにも登場して話題となった“なかやまきんに君”が担当。公演中の禁止事項などをユーモアたっぷり語る“前説”にファンは爆笑(時々入るジャニーズWESTの容赦ないツッコミも最高!)で、場内の空気は一気に熱を帯びる。

客電が落ちると、7人が順に紹介されるオープニング映像が流れ、歓声に沸き立つ横浜アリーナ。戻ってきた“当たり前の景色”に、その時点でグッと込み上げるものがあったが、バンドを背負って幕を開けたオープニングのパワフルな展開にがぜん胸を揺さぶられることになる。メインステージで固まって熱唱する「僕らの理由」は、ド派手な炎の演出と力強い7人のヘドバンが圧巻。「初っ端からアツいのぶつけていくぜ!!」という重岡大毅の宣言通り、未だかつてないほどの熱気で冒頭から観客を飲み込む。小瀧望は「久しぶりの声出しライブ、気合い入ってるか!?」と煽り、桐山照史も「アゲていくぞ!!」と絶叫。そして始まったデビュー曲「ええじゃないか」は“真剣にふざけて遊ぶ”WESTの真骨頂とも言えるムードで盛り上げ、会場の熱狂の渦に。自分たちがまず全力で楽しみ、その1回1回でしか見られないライブ感を大切にしたステージは見ている側も最高にテンションが上がる。

■これでもかと見せつける、ジャニーズWESTの振り幅の広さ

様々なアーティストからの提供楽曲も注目を集めたアルバム『POWER』。ヤバイTシャツ屋さんのこやまたくやが作詞作曲を手掛けたアゲアゲソング「WEST NIGHT」は、濵田崇裕の振り付けレクチャーでファンも一緒にダンス。ペンライトが一斉に彼らに向けて振られる光景も壮観だ。3ピースロックバンド・ズーカラデル作曲・編曲の「似てないふたり」はアコースティック編成で披露。担当は、重岡=ピアノ、中間淳太=グロッケンシュピール(鉄琴)、桐山=パーカッションカホーン)、アコギ=濵田&神山智洋、藤井流星=タンバリン、小瀧=シェイカーで、アイコンタクトを取りながらの息の合った柔らかなメロディーと歌声に誰もがうっとり。7人の固い絆がその表情や音からも窺い知れるパフォーマンスだったように思う。

2:2:3に分かれたユニット曲は3者3様の仕上がり。桐山と神山が情感たっぷりに紡ぐラブソング「真っ直ぐ」は、2人の声質ならではの心に沁みる歌声が絶品。お互いを見つめながら歌う姿も、どこか切なくて胸を締め付ける。重岡と藤井による「ぼくらしく」(竹原ピストルの提供曲)は、重岡がブルースハープ、藤井がアコギを演奏。シンプルな音数だからこそ映える、飾らない男くさい歌声にドキッとした人も多かったことだろう。中間、濵田、小瀧の「エゴと一途」は、一人一台のソファーや顔を覆うマスクを使った耽美な世界にクギヅケ。3人のセクシーさが大いに引き出された美しすぎる瞬間を堪能させてもらった。

他にも、ジャニーズWESTのふり幅の広さに唸る楽曲は満載。神山が振り付けしたEDMジャンルの楽曲「Mood」は、野性味溢れるダンスに脱帽。燃え盛る火柱をバックにバキバキに踊り狂う7人に興奮が止まらず、ラストは神山が口を指でぬぐう仕草で客席を一人残らず骨抜きに。楽曲の解禁時から話題沸騰だったトンチキ(!?)ソング「膝銀座」は、彼らにしかできないステージでファンを湧かせる。楽曲のナレーションを担当した友近が今ツアーの曲前の映像に出演し、その後登場した7人は、クールな黒スーツ姿なのだがよく見るとなんと膝に“膝”のシールが。一筋縄ではいかない、この緩急こそがやっぱりジャニーズWEST。期待を裏切らない爆笑のステージで会場を温めた。

■7人が歌うからこそ心揺さぶられる「むちゃくちゃなフォーム」

メンバーがダンベル型のペンライトを持ち、エアロビ風のカラフルなコスチュームでファンと体を動かした“POWERエクササイズ”も今回の目玉シーン。キレキレに踊る7人の額に汗が滲み、その全力ぶりに会場のボルテージもぐんぐん上昇する。放送中の重岡出演ドラマ「それってパクリじゃないですか?」(日本テレビ系)のオープニング曲としてオンエア中の「パロディ」は、爽やかなストリングスブラスのサウンドに乗せて明るくステップを踏み、同じく放送中の桐山主演ドラマ「ゲキカラドウ2」(テレビ東京系)の主題歌「しあわせの花」は直球の応援歌エネルギッシュに。2つの新曲をプレゼントして、会場に笑顔の花を咲かせたのだった。

あっという間にやってきたラストスパートは、アルバムの表題曲「POWER」で最後の力を振り絞るジャニーズWEST。藤井が「ありったけのパワーを見せてくれ!!」と叫び、吠えるように歌う7人と、それに呼応して全てをぶつけるファンの化学反応が圧倒的なグルーヴを作り出す。神山が「声が出せなかった3、4年、取り戻せてますか!?」と煽った「証拠」も凄まじい熱気。間違いなく全員が一つになった奇跡のような瞬間。いい意味でアイドルのそれを超越したようなロックバンド顔負けの熱量とパワフルなステージングを、一人でも多くの人に体感してもらいたいと心底思った。

最後に、今回のツアーで多くの人が聴くのを楽しみにしていた1曲を紹介したい。重岡大毅が作詞作曲を手がけた、彼にしか書けない全力のメッセージソング「むちゃくちゃなフォーム」だ。歌う前、重岡が「メンバー、今日もありがとうございます」と言うと即座に「ありがとう」の声が返る。続けて「しっかりと、歌いましょう!」(重岡)とも。こんなに生っぽい言葉のやり取りは、筆者の知る限り、ジャニーズのライブでは見たことがない。そんな、どこかワクワクと緊張感が混ざった空気の中で始まった「むちゃくちゃなフォーム」は、ステージのセットに7人が座って揺れながら熱唱。無骨さと不器用さが何とも言えないエモさを生み出す重岡らしい楽曲――そこに魂を込めて歌う責任感と喜びを彼ら自身が全身で感じているような美しいシーンだった。

4年ぶりに会場全体で叫ぶ「俺たちが…ジャニーズWEST!!!!!!!」が実現したこの日。その掛け声は、決して当たり前のものではない。尊いものだ。今回の演出を手掛けた藤井は「僕らは皆さんと運命共同体だと思ってます!」と最後に心を込めて叫んだ。観客を誰一人置いていかない、結束力と温かさに満ちたライブ。その唯一無二の幸福な感覚こそが、ジャニーズWESTのエンターテイメントなのだと改めて気付かされた。

(取材・文=川倉由起子)

このポーズはおなじみ「ええじゃないか」。7人で歌うことが本当に楽しそうなメンバー。/  撮影=阿部岳人