キャンプに行った?」そんな風に私が意表を突かれていたのは月曜日、もしCL準決勝敗退してしまったら、決勝前のメディアデーもないしと、久々にバルデベナス(バラハス空港の近く)のレアル・マドリー練習場を訪問。アンチェロッティ監督とクロースの記者会見を聞いた後、RMカスティージャにいる中井卓大選手も参加していて驚かされたセッション15分を見学した後、サンティアゴ・ベルナベウに寄って、マンチェスター・シティロドリコとグアルディオラ監督の会見も聞いて帰宅してから、リーガ戦のない週末を過ごしたマドリッドのチームたちがどうしているのか、チェックしていた時のことでした。

というのも先週水曜には復帰したボルダラス監督の下、7試合ぶりに勝利した弟分のヘタフェはこのミニparon(パロン/リーガの停止期間)を利用して、日曜から火曜までオリバ・ノバ(地中海沿岸のゴルフリゾート)で合宿。17位のバレンシアと勝ち点では並んでいるものの、降格圏の18位という順位を、CL準決勝マンチェスター・シティ戦の狭間、土曜開催となる、サンティアゴ・ベルナベウでの兄弟分ダービーで絶対、抜け出してやるという、ヘタフェの意気込みが感じられたから。

その一方で次の試合が来週月曜のベティス戦となるもう1つの弟分、ラージョはコパ・デル・レイ決勝の結果、コンフェレンスリーグ出場権が与えられることになった現在、勝ち点差1の7位到達チャレンジの準備は余裕を持って始めることにしたようで、先週木曜にバジャドリーに勝った後、金曜から月曜まで練習をお休みに。

同様に兄貴分のアトレティコも水曜にカディスに勝利した後、翌日こそリハビシトレに勤しんだようですが、金土日と連休で、マハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場に選手たちが戻って来たのは火曜の夕方になってから。試合中にネンザしたコレア、休暇中に鼻の手術をしたサウールがいなかったものの、こちらも次節は日曜のエルチェ戦とかなり先ですからね。未だに頸椎捻挫のGKオブラクが参加していないのは気になるとはいえ、ようやく這い上った2位の座をあっさりお隣さんに明け渡すことがないよう、ミッドウィークに試合のない今週はしっかりトレーニングしてもらいたいものです。

そうそう、ようやくリーガ4連戦が終わり、コパ・デル・レイ決勝のために1部の試合がない先週末は私も一息ついて、土曜にはおよそ1カ月ぶりに2部のレガネスを応援にブタルケへ。最後に見たカルタヘナ戦で負けた直後、スタンドから「Vete ya!/ベテ・ジャー(もう出て行け)」と歌われていたイディアケス監督が解任となり、Bチームのカルロスマルティネス監督を昇格させたチームはその最初の2試合に勝利。続くアウェイ戦で連敗して、この日はホームにウエスカを迎えたんですが、もう今季はプレーオフ出場圏の6位まで勝ち点差10以上と、昇格の夢は遠い彼方へと消えてしまいましたからね。

むしろ降格圏と勝ち点差6しかない方が気になる感じでしたが、1部のお隣さん、ヘタフェ程、切羽詰まっている訳でもなかったため、スタジアムの雰囲気は普通に戻っていたかと。キックオフ前にはピッチでどちらも控えだった柴崎岳選手とウエスカの橋本拳人選手がお喋りしているシーンなどもあり、相手もチーム状況は似たり寄ったりとあって、そんな熱い闘いにはならないだろうと思ったんですが、とんでもない。前半7分にはミラモンのシュートをGKアンドレス・フェルナンデスが弾いたところにカリカブルが詰め、レガネスが先制するという幸先のいいスタートと切りながら、とにかく追加点がなかなか取れなくてねえ。それが仇となり、42分にはクリアしきれなかったCKから、こぼれたボールをゴール右前でファン・カルロスレアルに押し込まれ、ハーフタイムを目前にして、同点に追いつかれてしまったから、さあ大変!

後半は両チームがせめぎ合うことになったんですが、早い時間にアップに出て来た橋本選手、柴崎選手にはいつまで経っても出番が回ってこず。ゴールもないまま、終盤まで進んだんですが、いやまさか、41分にFKからのボールをブラスコが腕に当て、レガネスにPKが与えられようとは。ただねえ、これはVAR(ビデオ審判)のモニターを見てのジャッジとなったんですが、まずは選手たちの抗議攻めに遭って主審がなかなか、画面を見れないわ、周りでわいわいやられて、カードを出しまくっているわと、PKを蹴るまで無茶苦茶時間がかかり、カスミが勝ち越し点を挙げたのは49分になってからのこと。

その間、45分を過ぎても副審が掲示板を出さず、後付けで知ったロスタイムは10分という超ロングなものだったんですが、うーん、コパ決勝に間に合うよう、早くスタジアムを出たかった私に意地悪してる?結局、15分ぐらいロスタイムプレーしていましたが、お隣さんを見習って、recogepelota(レコヘペロータ/ボールボーイ)総引き揚げ作戦に出たレガネスは何とか、ウエスカの反撃を抑えて2-1で勝利。おかげで降格圏の一番上にいるマラガとの勝ち点差も9に広がり、何せ2部はあと3つしか、残り試合がありませんからね。残留はほぼ決定でしょうが、新監督になって、柴崎選手の出場機会が減っているのはちょっと、気になりますよね。

そしてバスとメトロを乗り継いで、カルトゥーハでのコパ決勝レアル・マドリーvsオサスナ戦のキックオフ10分前には家に辿り着いた私でしたが、よく考えてみれば、RTVE(スペイン国営放送)の試合は国内であれば、スマホアプリで見られるため、息せききってTVの前に駆けつける必要はなかった?昼間のニュースでは開催地のセビージャが両チームのファンで大賑わいしていたのと対照的に、マドリッド市内は普通の週末と変わりなかったんですが、いやあ、午前中はロンドンチャールズ国王の戴冠式に出席していたフェリペ6世がトンボ帰り。パルコ(貴賓席)で国歌を聞いているのを見たすぐ後、開始からたった2分、ビニシウスから折り返しのパスをもらったロドリゴが先制点を決めてくれるとは!

直前のリーガレアル・ソシエダ戦とは大違いの気合の入った立ち上がりには唖然とするばかりでしたが、その前節を出場停止でお休みしたビニシウスなど、よっぽどエネルギーが有り余っていたんでしょうね。先週、ナチョ・ビダルをヒザの靭帯断裂で失い、本職でない左SBを務めたモンカジョラをキリキリ舞いさせていましたが、残念ながら、やはりサン・セバスティアン遠征には体力温存で行かなかったベンゼマの24分のシュートはGKセルヒオ・エレラにparadon(パラドン/スーパーセーブ)で弾かれてしまうことに。逆にその1分後にはアブデのゴール左前からのシュートをGKクルトワは防げず、カルバハルがやっとこゴールライン前でクリアするというピンチもあったんですけどね。モドリッチはベンチスタートだったものの、アラバのFKが枠を直撃するなど、前半はマドリーが優位を保ち、1-0でハーフタイムを迎えます。

え、選手たちがロッカールームに引き揚げる時、ビニシウスがオサスナ勢と揉めていなかったかって?そうなんですよ、またファールを受けているうちに頭に血が昇ったか、控えだったチミ・アビラと口論になったようですが、そこはベテランのルーカス・バスケスやナチョが引き離し、乱闘には至らず。後でそのチミは「Puedes ser buen jugador, pero si tienes el corazón negro es imposible que sea así/プエデス・セル・ブエン・フガドール、ペロ・シー・ティエネス・エル・コラソン・ネグロ・エス・インポシーブレ・ケ・セア・アシー(彼はいい選手になりうるけど、もしハートが黒かったら、そうなるのは不可能だ)」と言っていたんですけどね。何となく、どちらもピッチでは口が悪そうな2人なので、もう勝手にやってくれとしか思えないのは私だけ?

早い時間の失点で、「Teníamos que madurar el partido, portería a cero, ha sido un fallo tonto el del principio/テニアモス・ケ・マドゥラル・エル・パルティードー、ポルテリア・ア・セロ、ア・シードー・ウン・ファジョ・トント・エル・デル・プリンシピオ(ウチは無失点で試合を熟成させないといけなかったのに、序盤に愚かなミスを犯してしまった)」と後でルーカス・トロも認めていたように、ゲームプランの変更を余儀なくされたオサスナだったんですが、彼らは後半、持ち直すことに成功。ええ、13分にはアブデが左から入れたパスがカルバハルに当たり、エリア外にいたトロがvolea(ボレア/ボレーシュート)を決めたから、18年ぶりの決勝に張り切って応援に来ていたオサスナファンがどんなに盛り上がったことか。

だからって、スタンドでbengala(ベンガラ/発煙筒)を焚くのは感心しませんが、最近は私もリーガグダグダマドリーばかり見せられていましたからね。「En el segundo tiempo estuvimos muy bien y con el empate, vi al equipo entero/エン・エル・セグンド・ティエンポー・エストゥビモス・ムイ・ビエン・コン・エル・エンパテ、ビ・アル・エキポ・エンテーロ(後半はとても良かった。同点になって、チームが完璧な状態であるのを見たよ)」とアラサーテ監督も言っていたように、もしやしたら、逆転されてしまうのかと不安が頭をよぎったものでしたが、大丈夫。

そこは「Sabemos competir las finales y ahí están los resultados/サベモス・コンペティール・ラス・フィナレス・イ・アシー・エスタン・ロス・レスルタードス(ウチは決勝で競うことを知っていて、それで今までの結果がある)」とカルバハルも豪語するだけのことはあって、25分にはダビド・ガルシアがエリア内からクリアし損ねたボールをクロースがシュート。こちらは枠を捉えていなかったものの、またしてもいいところにいたロドリゴが蹴り入れて、マドリーの勝ち越し点を奪っているのですから、ホント、お手柄じゃないですか。

結局、必死の反撃にも関わらず、この1点をオサスナは返すことができなかったため、試合は延長戦に入ることもなく、2-1で終了。まあ、昨季のCL決勝リバプール戦も1-0の勝利でしたし、クロースなども「Las finales están para ganarlas y no siempre para brillar/ラス・フィナレス・エスタン・パラ・ガナールラス・イ・ノー・シエンプレ・パラ・ブリジャル(決勝は勝つためにあって、常に輝けるとは限らない)」と言っていましたしね。2度目のコパ決勝でも夢が叶わなかったオサスナ陣営には気の毒ではありましたが、はい?アトレティコなど、CL決勝で2度もお隣さんに負けているんだから、マドリーの決勝での強さが筋金入りなのは最初から、わかっていただろうって?

まあ、その通りですが、カルトゥーハのピッチでのお祝いでは2014年、メスタジャでバルサを破り、コパ優勝を果たした後、CL準決勝でバイエルン、決勝でもアトレティコに勝ち、当時、クラブの悲願だったDecima(デシマ/10回目のCL優勝のこと)を達成したことを思い出していたんでしょうか。そのサンティアゴ・ベルナベウでの祝賀行事では自らマイクを握って、Himno de la Decima/イムノー・デ・ラ・デシマ(デシマのクラブ歌)を熱唱していたアンチェロッティ監督など、この日もファンと一緒に歌っていましたっけ。

その彼が言うには、「このチームが唯一、やらないといけないのはサッカープレーすることで、それは非常に上手くできるから。Lo demás es perder el control y perder la concentración/ロ・デマス・エス・ペルデル・エル・コントロル・イ・ペルデル・ラ・コンセントラシオン(それ以外はコントロールや集中力を失わせるだけだ)」そうですが、まあ次の試合は火曜午後9時(日本時間翌午前4時)からのCL準決勝マンチェスター・シティ戦1stレグですからね。

土曜の夜はセビージャに連泊し、ホテルで優勝を祝った後、バルベバスの練習場に戻った足でリハビリトレ。普通にセッションができるのは月曜1回しかないとはいえ、「Ganar este título nos da energía positiva y no notaremos tanto el cansancio ante el City/ガナール・エステ・ティトゥロ・ノス・ダ・エネルヒア・ポシティバ・イ・ノー・ノタレモス・タントー・カンサンシオ・アンテ・エル・シティ(タイトルを獲ったことがボクらにエネルギーを与えてくれるから、シティ戦ではあまり疲れを感じないだろう)」(クルトワ)となれば、ファンも心配することはない?

ええ、コパ決勝MVPとなったロドリゴもこのオサスナ戦がマドリーに来て一番の出来の試合かと訊かれ、「No, la semifinal contra el City del año pasado fue la más especial/ノー・、ラ・セミフィナル・コントラ・エル・シティ・デル・アーニョ・パサードー・フエ・ラ・マス・エスペシアル(違うよ。昨季の準決勝シティ戦はもっと特別だった)」と2ndレグの後半45分過ぎに自身のゴール2本で総合スコア同点に持ち込み、延長戦でベンゼマがPKを決めて、奇跡のremontada(レモンターダ/逆転突破)を果たしたグアルディオラ監督のチームとの対戦を挙げていたぐらいですからね。実際、何はなくてもCLでは豹変するマドリーですし、前日会見ではアンチェロッティ監督がモドリッチの先発出場を確約。たとえ、ミリトンが出場停止だったり、コパ決勝前日に左太ももの筋肉痛を起こしたセバージョスがプレーできずとも不足はないかと。

ちなみに昨季のシティとの対戦は総合スコア6-5という、撃ち合いだったんですが、今季との一番の違いは相手に51得点とゴールの止まらないハーランドが加わっていること。ええ、グアルディオラ監督も「Si tienes a Haaland, ¡cómo no lo vas a aprovechar! ¡Pues jugaremos para él!/シー・ティエネス・ア・ハーランド、コモ・ノー・ロ・バス・ア・アプロベチャル!プエス・フガレモス・パラ・エル!(ハーランドがいたら、彼を利用しない手はない!ウチは彼のためにプレーする!)」と言っていたぐらいですからね。それに対してマドリーの攻撃陣は変わっていないため、アンチェロッティ監督は前回の結果をリピートしても構わないようでしたが、2ndレグがエティハド・スタジアムであることも考えて、初戦は手堅くいった方がいいかもしれませんよ。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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