新記録樹立ならず。「トラの村神サマ」こと村上頌樹投手が、開幕から32イニング目となる5月9日ヤクルト戦の7回表にサンタナからソロアーチを浴び、「セ・リーグ連続無失点」の新記録達成を逃した。

 「村上の失点はこの『1点』だけ。打線が援護できず、敗戦投手になってしまいました」(在阪メディア)

 しかし、タイ記録もスゴイことなのは間違いない。「31イニング無失点」の記録が生まれたのは、1963年だという。60年、誰も触れることのできなかった“古(いにしえ)の快挙”に並んだのである。

 「村上は規定投球回数に到達し、防御率0.28でリーグトップに立ちました」(前出・同)

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 試合後の岡田彰布監督も敗れたとは言え、穏やかな表情を浮かべていた。だが、同時に見えてきたものもある。この村上を先発ローテーションの要所に据えるつもりだ。

 「そら、だから火曜日を任せようと思うやんか」

 監督インタビューが始まり、新記録を逃した村上のコメントが記者団から間接的に伝えられた。「村上が新記録は気にしていない、自分一人の力ではなく、皆さんのおかげだと話していましたが?」と聞かれ、岡田監督は「火曜日を任せたい」と答えたのだ。

 このコメントは意義深い。

 通常、ペナントレースの日程は「火曜日」に始まって、日曜日に終わる。月曜日の移動・休日を挟んで、「また火曜日から」となるのだが、その6連戦の初戦を落としたくないというのが指揮官の心境だ。これは、全球団の監督が考えていると言っていい。

 「当初、村上の先発は6日の広島戦でした。2試合連続で雨天中止となったため、岡田監督は先発ローテーションの再編に乗り出しました」(プロ野球解説者)

 ローテーションの再編には、プラスとマイナスの両方が絡んでいる。

 昨季まで「一軍登板2試合」だった村上の成長はプラス材料だが、青柳晃洋西勇輝の実績組はまだ1勝ずつしか挙げていない。岡田監督が期待していた才木浩人も二軍降格で、ベテラン・秋山拓己の調子も上がって来ない。

 2試合連続での雨天中止は「ローテーション再編」の機会、プラス材料ともなったわけだが、
「阪神はすでに5試合の雨天中止をカウントしています。うち2試合は9月の『予備日』に振り分けられましたが、3試合については未定のまま。今後の台風シーズンも考えると、夏場以降、連戦に次ぐ連戦となりそう」(球界関係者)

 との声も聞かれた。

 ペナントレース終盤での連戦はマイナス材料である。

 先のプロ野球解説者がこう続ける。

 「9日対戦のヤクルト・吉村貢司郎とは、早くも今季3度目の対戦です。4月30日にプロ初勝利をプレゼントし、9日は6回無得点(1安打)。阪神キラーになりつつある」

 その辺に関しては、岡田監督も「苦手を作ったらあかんよな」とこぼしていた。

 「火曜日のオトコ」となる村上は、今後、エース対決も避けられないだろう。その村上は試合を落としたことを悔しがっていた。現状に満足しない性格は「火曜日」に適任である。どうやら、1963年の記録に並んだ右腕が前半戦のキーマンになりそうだ。(スポーツライター・飯山満)

岡田彰布監督