新型コロナウイルスの大流行や、ロシアのウクライナ侵攻……このような「世界を揺るがす出来事」の前後には、必ずと言っていいほど「投資のチャンス」が存在します。では、そのタイミングを逃さないためにはどうすればいいのでしょうか。「日経新聞の切り抜き」を25年間継続し、会社四季報を100冊読破した複眼経済塾の渡部清二代表が、「自身の失敗談」を交えて解説します。
「後悔、先に立たず」の失敗談
これは、注意を怠ったためにチャンスを見逃した私の失敗談だ。この見出しを指標ノートのコメント欄に書き写した際に即座に反応していれば、私はテンバガーを確実にものにしていたに違いない。
■「新型コロナウイルス肺炎日本で初確認」(指標ノート2020年1月15日)
私は2020年1月に産業ガス大手のエア・ウォーターの研究・開発拠点である『国際くらしの医療館・神戸』を訪問しており、同社の最新の手術室セットや関連会社の川本産業(3604)が生産している医療用マスクが並んでいるのを実際に目にしていた。
その後、全国的なマスクの品薄状態になるわけだが、すでに新型コロナの大流行に備えて工場が稼働し始めていることに気づかなかった。その理由は日経新聞の「肺炎」という言葉を、何も疑わずにそのまま受け止めていたことに尽きる。
つまり、私はあのとき、新型コロナウイルスを肺炎程度の病気としてしか見ておらず、世界的なパンデミックになるとは想像していなかったことになる。
ちなみに同社の株価は、2019年12月の時点で447円だったが、翌1月には3795円まで上がっている。
要は、あまりにも情報に近すぎて状況を客観視できずにニアミスしてしまったわけで、「後悔、先に立たず」とはまさにこのことである。
ロシア・ウクライナ戦争から見えるメディアの一面性
最初はロシア軍の大規模な演習と思われていたものの、米バイデン大統領が「ウクライナ侵攻の可能性大」と発表したのも束の間、ロシア軍が唐突にウクライナに侵攻し、世界を震撼させた。
多くの人がこのニュースに触れ、「まさか、この21世紀にこんなことが起ころうとは?」と思ったことだろう。
当然、私はこのニュースを1面トップで伝えていた日経新聞の大見出しを指標ノートに書き写した。そして、「ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争が勃発した1992年3月から丁度30年後に、こうした事態が起きている」ことが頭をよぎり、紛争・戦争にもサイクルがあるように感じた。
その後、現時点(2023年2月現在)までのウクライナ情勢に関するニュースによれば、ロシアがウクライナの東部や南部の一方的な併合を狙った「住民投票」を行い、大多数が賛成の票を投じたこと、兵力増強のために約30万人の部分的動員令を発令し、これに伴い徴兵逃れをする人が増えていることなどが伝わっている。
また、ウクライナ情勢に関わる以下の記事があるので、加えて紹介しておきたい。
■「ロシア、ウクライナ侵攻」(日経新聞切り抜き2022年2月25日)
この記事には、コメンテーターの意見として、以下のように書かれている。
国際社会は第2次世界大戦後、最も深刻な危機に直面している。ロシアは主権国家に全面戦争を仕掛けた。現代において、まれにみる大国の暴挙である。1945年以来、80年近くにおよんだ「戦後」は終わってしまった。今日は昨日の延長ではなく、世界は再び、危うい時代に逆戻りしたと考えざるを得ない。この記事の末尾の「軍事力は最後のとりでであり、外交で平和を守ることが最善なのは言(げん)をまたない。ただ、軍事力という『力の裏づけ』がない交渉や制裁圧力に限界があることも、苦々しい現実である」という記述には甚(いた)く共感した。
ロシア軍がウクライナに侵攻して以来、すでに1年以上が経過しているが、依然としてウクライナ情勢の出口は見えない。
では、そもそもなぜロシアがウクライナ戦争を引き起こしたのか。
次の記事が伝えているように、発端は「ミンスク合意」についての解釈の違いにあるようだ。
「投資のタイミング」を間違えないために大切なこと
■「ミンスク合意ロシアの論拠」(日経新聞切り抜き2022年2月17日)
この記事に目を通してみると、「ロシアはウクライナ東部紛争の和平への道筋を示した『ミンスク合意』の履行(りこう)を迫る。一方の米欧はロシアこそが過去に結んだウクライナの安全を保証する『ブダペスト覚書』に違反していると批判する」と書かれている。
「ミンスク合意」とは、ロシアとウクライナ、独仏首脳が2015年にまとめたものである。ウクライナ東部で2014年から続く同国軍と親ロシア派武装勢力との紛争について、停戦と和平への道筋を示した内容になっており、独ロ首脳も会談で、同合意の枠組みが重要との認識で一致したとしている。
この履行に向けて最大の争点となったのが、親ロシア派が占領する東部地域に広範な自治権を持たせる「特別な地位」の付与だ。ウクライナとしては、それは事実上の連邦制とロシアによる実効支配につながると警戒していたという。
また、ウクライナは同地域での地方選の実施についても、親ロシア派を支援する名目で侵攻してきたロシア軍の撤収や、ウクライナによる国境管理を条件にしていると報じられている。
要は何事にも原因・理由があるわけで、その後の推移を判断する上で、また投資のタイミングを間違わないようにするという意味でも、真相を見極めることが大切になる。
渡部 清二
複眼経済塾
代表取締役塾長
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