やっぱり、気にしている…。先発・山崎伊織が責任イニングを投げ、打線も小刻みに得点を積み重ねていた。試合は完全にジャイアンツペースだったが、原辰徳監督は「魔の8回」に動いた。

 用心に用心を重ねるように、リリーバーの三上朋也が四球を出した途端、「投手交代」が告げられた。

 5月12日、敵地・横浜スタジアムで行われたDeNA戦で原巨人が連勝した。

 「先発・山崎は投球テンポも良かったと思います。この日は縦の変化球(カットボール)が効果的に決まっていました」(プロ野球解説者)

 しかし、原監督が試合を“動かした”。

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 「イニング別の失点を見てみると、巨人が8回に奪われた失点は計23点。総失点が137だから、約20%が8回に奪われた計算です」(ベテラン記者)

 5月に行われた8試合中、6試合で8回に失点している。その6試合がDeNA2戦前までの5月の全試合であり、前カードの中日3連戦では「8回に失った点」が全て決勝点となっている。

 指揮官が慎重になる気持ちも分かるが、三上は8回の最初から投入され、打者2人から2アウトを取っている。3人目に四球を出した途端の投手交代である。この慎重さは守備に就いていた巨人選手たちにも“マイナス”となって広まった。

 「いや、三上が8回のマウンドに上がってからも、他のリリーフ投手は気持ちの面で待機させられていたと言うか、『万が一に備えろ』みたいなことは言われていました」(関係者)

 さらに聞くと、投球練習をしていたのは、実際に登板した大江竜聖ロペスの2人。クローザーの大勢が投球練習を開始したのは「9回表の巨人の巨人が始まってから」(前出・同)とのことだが、大江が走者を出していたら、ロペス投入、他投手も投球練習を開始していただろう。

 「今までの原監督なら、三上が四球を出しても動かなかったでしょう。中日3連戦での連敗で、考え方を変えたようです。8回をゼロで抑えなければ、チームの雰囲気も変わらない、と」(前出・同)

 試合後の原監督だが、メディアとの質疑は打線のことに集中したため、継投策のことは語っていない。

 同日の先発は左腕・東克樹だったが、吉川尚輝丸佳浩大城卓三門脇誠と左バッター4人をスタメン出場させた。

 「粘っこく、良い攻撃ができたと思いますね」と、原監督が言った。

 大久保博元・打撃チーフコーチなどの話も総合すると、9日の同カードで2020年サイ・ヤング賞投手のバウアーに打ち勝った勢いをそのまま出したかったという。

 継続させたいことと、断ち切ってしまいたいことの両方が今の巨人にはあるわけだ。

 「9日は4本のホームランが出て、今日(11日)はタイムリーヒットや犠牲フライで1点ずつ積み上げていきました。巨人の持ち味はホームラン、でも、この試合で見せた『打線の繋がり』も意義深い」

 バックネット裏にいたセ・リーグ球団スコアラーがそう言う。巨人が浮上してくるとすれば、このDeNA2戦がターニングポイントとなるだろう。(スポーツライター・飯山満)

原辰徳監督