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 誰にでも不安はある。だがその不安や心配が過度になりすぎて日常生活に影響が出ていたら、それは「不安障害」かもしれない。

 不安障害には様々な種類があるが、どれも共通して言えることは、精神的な不安から、心と体に様々な不快な変化が生じることだ。世界で最も一般的な精神疾患の一種とされているが、近い将来新たな治療法の道が開かれるかもしれない。

 『Nature Communications』(2023年4月25日付)に掲載された研究によると、科学者たちはマウスの脳内に存在する「不安遺伝子」にブレーキをかける物質(マイクロRNA)を特定することに成功したという。

 将来的には、不安障害に効果的な治療法が見つかるかもしれないと期待されている。

【画像】 不安を感じる脳の中では何が起きているのか?

 誰だって時には不安に苛まれることがある。だが、日常生活に支障をきたすほど不安が大きくなり、なかなか消えないようなら「不安障害」なのかもしれない。

 不安障害は割と一般的な病気で、パニック障害、全般性不安障害、社会不安障害、強迫性障害など様々な種類がある。

 2002~2006年度に厚労省の疫学調査によると、不安障害の生涯有病率は9.2%と報告もされている。

 こうした「不安障害」は、薬でや認知行動療法と呼ばれるカウンセリングなどで症状を和らげられることもある。

・合わせて読みたい→不安や心配に心を縛られ、ネガティブな考えが頭から離れない。「高機能不安障害」の兆候を示す9つの特徴

 しかし不安を抱く人の脳内で何が起こっているのかはっきりしない以上、効果のある治療法を見つけるまでには時間がかかるものだ。

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マウスの脳で不安遺伝子を抑制するブレーキを発見

 不安を引き起こす脳内で何が起きているのかを理解するために、英エクセター大学をはじめとする研究チームはマウスを6時間拘束し、強いストレスを与え、そのときの脳を分子レベルで分析した。

 すると、不安と関連する脳領域である扁桃体で5種類の「マイクロRNA(miRNA)」が増加していることが判明したのだ。

 マイクロRNAとは、細胞内で働くべき遺伝子を決める手助けをする小さなRNAだ。

 私たちの体はDNAに書かれた情報を元に作られている。だが、それを使う際は、DNAの情報をまずRNAに写し換えねばならない。これを元にタンパク質が作られることで、遺伝子は機能する。

[もっと知りたい!→]不安で胸が張り裂けそうなあなたへ。過度に心配していることの多くは現実にならない(米研究)

 マイクロRNAはこのRNA(正確にはメッセンジャーRNA)に結びつくことで、タンパク質を作る邪魔をするという役割がある。

 不安を感じるマウスの脳内で一番たくさん見つかったのは、「miR-483-5p」というマイクロRNAだ。

 そして、このマイクロRNAが「Pgap2遺伝子」と呼ばれる「不安遺伝子」の働きを抑えていることがわかった。マウスのストレス反応や、不安による行動が減ったのである。

 つまり扁桃体の「Pgap2遺伝子」が働くと不安が大きくなるが、マイクロRNAの「miR-483-5p」はその働きにブレーキをかけているということだ。

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新しい不安障害の治療法に期待

 これはマウスによる研究なので、同じことが人間に言えるかどうかはわからない。

 だがもし人間でもこの不安を制御するブレーキが確認されれば、これを標的にすることで不安障害を治療できる可能性もあるとのことだ。

References:miR-483-5p offsets functional and behavioural effects of stress in male mice through synapse-targeted repression of Pgap2 in the basolateral amygdala | Nature Communications / Scientists discover "anxiety gene" in the brain / written by hiroching / edited by / parumo

 
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不安を作り出す「不安遺伝子」を抑制する物質を特定。新たな治療法の道が開かれる