HRガバナンスリーダーズ株式会社(代表取締役社長 CEO 内ヶ崎 茂、 以下 「HRGL」)は、日米欧のCEO報酬に関する調査を行いましたので、調査結果を公表いたします。本調査では、2022年における日本、アメリカ、イギリスドイツ企業のCEO報酬の報酬実績、報酬構成比(報酬ミックス)、および業績評価指標を比較しています。調査概要は以下の通りです。
【調査実施目的】
・CEO報酬制度における各国の報酬水準や設計の特徴を明らかにする
・企業の皆様をはじめ、多くのステークホルダーの方にグローバル基準の報酬プラクティスへの理解を深めていただく

【主な調査結果】

  • 日本企業のCEOの報酬水準は、海外企業と比較すると低い。(アメリカ企業のCEOの報酬水準は日本企業の約14倍、イギリス企業は約2.7倍、ドイツ企業は約2.9倍)ただし、倍率の観点から前年と比較すると、米ドルをはじめ各通貨で円安の影響があるにも関わらず、他国との報酬格差は縮小傾向にある
  • 実績に基づく報酬ミックスをみると、他国と比較して日本企業は固定報酬の比率(41%)が高く、中長期インセンティブ(LTI)の比率(22%)が低い傾向に変化はない。ただし、前年と比較すると日本企業の固定報酬の比率は9%pt低下している。業績・株価の好調な推移と個社の報酬設計変更の両方が影響したと考えられる
  • 業績連動報酬において採用される財務指標について、短期インセンティブ(STI)では営業利益や純利益を採用する日本企業が多い傾向がみられた。LTIにおいては、資本効率や営業利益を採用する日本企業が多く、欧米企業との比較では、1株当たり利益(EPS)、株主総利回り(TSR)の採用企業が圧倒的に少なかった
  • 非財務指標(将来財務指標)を採用する日本企業の割合は、STIで23%、LTIで28%であり、前年から増加している。海外企業はSTIで将来財務指標を採用する傾向がある一方、日本企業はLTIで将来財務指標を採用する傾向がある

■2022年CEO報酬実績
各国のCEO報酬実績の中央値は、日本企業が合計2.2億円、アメリカ企業が31.3億円、イギリス企業が5.9億円、ドイツ企業が6.2億円という結果でした(図表1)。アメリカ企業のCEOの報酬水準は日本企業の約14倍、イギリス企業は約2.7倍、ドイツ企業は約2.9倍と、日本企業のCEOの報酬水準は、海外企業と比較すると低い結果となりました。ただし、倍率の観点から前年と比較すると、米ドルをはじめ各通貨で円安の影響があるにも関わらず、他国との報酬格差は英国以外で縮小しています。英国についても、為替影響を考慮すると前年より報酬格差が縮小する結果になります。(図表1)
*2022年:2022年為替レート(平均TTM(公表仲値))をもとに、日本円に換算:1ドル=131.43円、1ポンド=161.92円、1ユーロ=138.04円
2021年:2021年為替レート(平均TTM(公表仲値))をもとに、日本円に換算:1ドル=109.80円、1ポンド=151.07円、1ユーロ=129.89円

■2022年CEO報酬ミックス(実績)
日本企業の実績に基づく報酬ミックスは、基本報酬が全体の約4割を占めており、他国と比較して業績に連動しない固定報酬の割合が大きくなっています(図表2)。ただし、2021年の基本報酬の構成比50%と比較して2022年は41%と、9%pt*1低下しています。
中長期インセンティブ(LTI)は22%にとどまっており、欧米企業の構成比と比べて依然低い水準です。アメリカ企業の構成比は、基本報酬が6%と限られる一方、変動報酬が94%(短期インセンティブ(STI)が15%、LTIが79%)と大部分を占めています。イギリスおよびドイツ企業は、基本報酬が約3割、STI・LTIがそれぞれ3~4割程度で、概ね均等な構成になっています。(図表2)
*1 %pt…%で表された2つの値の差(パーセントポイント)

■2022年CEO報酬ミックスターゲット
日米欧企業の報酬ミックスターゲット構成比*2と実績を比較すると、構成比に目立った違いはありませんでした(図表3)。日本企業の基本報酬のターゲット構成比は39%と、欧州企業とほぼ同水準です。
日本企業および欧州企業においては、STIの実績の構成比がターゲット構成比を5%pt上回っており、STIの評価期間における好調な企業業績を反映した結果と考えられます。また、2021年の日本企業の基本報酬のターゲット構成比が41%であったことから、基本報酬の実績の構成比が前年と比較して9%pt低下したことについては、業績・株価の好調な推移に加え、個社の報酬設計の変更による影響があったとも推測されます。(図表3)
*2 ターゲット構成比…対象年度における業績連動報酬の各指標について過達、未達などがなく目標を達成した場合の基本報酬、STI、LTIの報酬総額に占める構成比
※日本企業は連結報酬等が開示されている企業のうち、ターゲット構成比の開示があった企業を対象にデータを集計

■2022年CEO報酬における業績評価指標の採用状況
1. 財務指標の採用状況
日本企業はSTIにおいて、営業利益や純利益に関する指標を採用する企業が多い一方、欧米企業と比較して、キャッシュフローや1株当たり利益(EPS)に関する指標を採用する企業は少ない傾向がみられました(図表4)。欧米企業のSTIの業績評価指標について、前年と比較して、純利益を採用する企業の割合は減少し、営業利益を採用する企業の割合は増加していました。また、日本企業はLTIにおいて、資本効率に関する指標を採用する企業が多い一方、欧米企業と比較して、EPS、株主総利回り(TSR)に関する指標を採用する企業が圧倒的に少ない傾向がみられました。(図表4)
*日本企業の財務指標および非財務指標については、2023年1月末時点のTOPIX100構成企業のデータを集計

2. 非財務指標(将来財務指標*3)の採用状況
CEO報酬の業績評価指標に非財務指標(将来財務指標)を採用する日本企業の割合は、STIで23%、LTIで28%であり、前年よりも将来財務指標の採用が進んでいました(図表5)。欧米企業においても同様の傾向にあり、欧米企業全体ではSTIで約75%、LTIで約20%が採用していました。日本と比較して、特にSTIで将来財務指標を採用する欧米企業が圧倒的に多いことが分かります。(図表5)
*3 将来財務指標…サステナビリティに関連した指標をはじめ、中長期的な企業価値の源泉である未実現の財務価値を表す指標

3. 領域別の将来財務指標の採用状況
CEO報酬の業績評価指標に将来財務指標を採用している企業を対象に、E/S/G(Environment(環境)/Social(社会)/Governance(企業統治))の各領域の指標を採用する企業数の割合を調査しました(図表6)。日本企業においては、「サステナビリティ」など、E/S/G 全領域にかかる将来財務指標の採用が多い傾向にありました。一方で、欧米企業においては3 領域のうち S 領域で、将来財務指標への採用が進んでいました。また、STI/LTI の双方において、日本企業の E/S/G 各領域の将来財務指標の採用割合は、米英独企業を下回っていることがわかります。(図表6)

本調査の結果について、HRGL代表取締役 CEO 内ヶ崎 茂は次のように述べています。「経営環境の不確実性が増す現代において、中長期的な企業価値向上を実現できるような、優れた経営陣や経営チームを組閣するためのインセンティブ報酬制度を設計する重要性は高まっている。今回の調査からは、中長期インセンティブのKPIとしてTSRが積極採用されているように、CEOに対する資本市場からの評価は時価総額であることが再確認できた。また、未実現の将来財務指標を業績評価指標に積極的に取り込む動きが各国で着実に進展していることが見てとれる。日米欧企業の区別なく、社会課題の解決と経済の発展を両立するサステナブルな社会の実現への取組みを強化する動きは、今後さらに加速していくだろう。」

HRGLは、今後も強靭な取締役会を起点としたサステナビリティ経営の実現に向けて、クライアント企業の多様なニーズにお応えし、企業の成長ストーリーをともに描く、コーポレートガバナンスの“かかりつけ医”としての役割を担ってまいります。

配信元企業:HRガバナンスリーダーズ株式会社

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