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 アメリカで、マクドナルドのコーヒーが熱すぎたため、うっかりこぼして火傷をしたとして訴訟問題に発展した、マクドナルド・コーヒー事件を覚えているだろうか?

 1991年のこの事件では、マクドナルドに80%の過失があるとして損害賠償金を支払うよう命じる評決が下されたが、今回また似たような事件が起きた。

 フロリダ州で、ドライブスルーで母親が購入したハッピーセットの箱を後部座席の子供に渡し、食べさせていたところ、子供は太腿に落としたチキンナゲットで火傷を負った。

 両親は、「危険なほど熱い」チキンナゲットで子供に火傷を負わせたと主張して、マクドナルドとフランチャイズ店に1500万ドル(約21億円)の損害賠償金額を要求しており、次の裁判で受け取る金額が決まるという。

【画像】 チキンナゲットで子供が太腿にⅡ度の火傷

 2019年、フィラナ・ホームズさんフィラナ・ホームズさんは、フロリダ州フォート・ローダーデール近郊のタマラックにあるマクドナルドのフランチャイズ店で、ドライブスルーを利用し、息子と当時4歳の娘、オリビアちゃんのために箱に入ったハッピーセットを購入した。

 商品を受け取ったホームズさんは、後部座席にいた子供たちに食べ物を手渡し、ドライブスルーを出た。

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 ところがその後、後部座席にいるオリビアちゃんが叫び声をあげた。オリビアちゃん(現在は7歳)は自閉症で話すことができなかったため、ホームズさんはすぐに車を脇に寄せた。

 車を止めてオリビアちゃんを見ると、足に火傷を負っていたので驚いた。

 後の訴状によると、車内でオリビアちゃんはハッピーミールを開けてチキンナゲットを食べていたが、その1つを太腿に落としてしまったという。

 シートベルトと太腿の間に2分近く挟まれていた熱いチキンナゲットは、オリビアちゃんの皮膚が変形し、傷痕が残るⅡ度熱傷を負った。

 II度熱傷(または部分層熱傷)は、皮膚の中間層(真皮)まで損傷が及んでいる火傷のことだ。

 iPhoneで火傷の写真を撮影したホームズさんは、パートナーでオリビアちゃんの父親ウンベルト・カラバロ・エステベスさんとともに、「ハッピーミールに入っていたチキンマックナゲットは、危険なほど熱く、娘の皮膚と太腿周りの肉が火傷を負った」と、マクドナルドおよびフランチャイズ店であるアップチャーチ・フーズを訴えた。

注:火傷の画像が含まれています McDonald's found liable for hot Chicken McNugget that burned girl

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1500万ドルの損害賠償を求めて訴訟を提起

 夫妻は、マクドナルドとフランチャイズ店のオーナーが、従業員を適切に訓練しなかったこと、食品の「危険な」温度について顧客に警告しなかったこと、食品を必要以上に高い温度で調理したことなどを理由に、1500万ドル(約21億円)の損害賠償金を求めて訴訟を起こした。

 陪審員は2日間にわたって証言と弁論を聞いたが、判決は意見が分かれたようだ。

 陪審員らは、フランチャイズ店が熱い食品の危険性について顧客に警告しなかった過失と責任を負う一方、米国マクドナルドは食品の安全な取り扱いに関する指示を提供しなかった責任があると判断した。

 ただし、米国マクドナルドに対して「製品に欠陥があった」という夫婦の主張は却下されたという。

 マクドナルドおよびフランチャイズ店は、チキンナゲットが火傷の原因であることには同意したが、夫妻の弁護士は、娘が手渡されたチキンナゲットの温度が摂氏93度を超えていたと主張したのに対し、両企業の弁護側は、摂氏71度以下だったと主張した。

 裁判では、夫婦が「危険なほど熱い」チキンナゲットで子供に火傷を負わせたという主張に対し、マクドナルドの弁護士らは、「サルモネラ菌中毒を避けるために食べ物は熱い温度で調理しなければならない。また、チキンナゲットはシートベルトと人間の皮膚の間に2分以上押し付けられることを意図していない」と指摘した。

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フランチャイズ店に過失があったと裁判所が判決

 最終的に、陪審員らはマクドナルドではなくフランチャイズ店のアップチャーチ・フーズに過失があるという判決を下した。

 この判決を受けて、フランチャイズ店の運営者ブレント・アップチャーチ氏は声明で、次のように述べた。

この不幸な事件が起きたご家族には、深くお詫び申し上げます。

私たちは、顧客の安全を最優先事項の1つとしているため、チキンマックナゲットを含むすべての食品の調理と提供に関しては、常に厳格な規則に従っています。

フロリダ州タマラックにある私たちの店も、この規則に順守しているため、私たちは今日の判決に非常に失望しています。

ここ南フロリダの私たちのコミュニティは、アップチャーチ・マネジメントのレストランで50年以上にわたって提供してきました。

今後も、レストランの従業員たちには、安全で高品質の食事を顧客に提供し続けることに自信を持っていてほしいと思っています。

 また、マクドナルドはメディアにこのような声明を出した。

当社はすべての苦情を真剣に受け止めております。この1件は残念な出来事でした。しかしながら、私たちはこの判決に同意することはできません。

 ホームズさん一家の弁護士ジョーダン・レデヴィッド氏は、次のように話している。

これはオリビアちゃんとご両親にとって重要な第一歩です。

彼らは何年にもわたって、疑いもなく予見可能で回避可能であり、決して起きるべきではなかった出来事に対処することを余儀なくされてきました。

 オリビアちゃんの父エステベスさんは、法廷で娘の足には今も傷跡が残っていると語ったという。

傷跡はもう娘を悩ませていませんが、娘は時々傷痕を「自分のチキンナゲット」と呼んでいます。(エステベスさん)

 夫妻が受け取る損害賠償金額は、2回目の裁判で金額が決まる予定だ。

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過去にもコーヒー訴訟で注目を集めたマクドナルド

 マクドナルド訴訟といえば、有名なのが日本でも話題になった「マクドナルド・コーヒー事件」だ。

 1992年2月、ステラ・リーベックさん(当時79歳)とその孫がドライブ・スルーで朝食を購入。ステラさんはその後、マクドナルドの駐車場で停車しているときにコーヒーを膝の間に挟み、ミルクシュガーを入れるためにコーヒーの蓋を開けようとした。

 そのとき、誤ってカップが傾いてしまい、コーヒーがすべてステラさんの膝にこぼれ、着用していた服に染み込み、第3度の火傷の火傷を負った。

 ステラさんは、火傷の直接的な原因が自分の行動にあることは認識していたが、火傷の一因となったコーヒーの熱さは異常であり、この点についてマクドナルドは是正すべき義務があり、治療費の一部を補償するべきであるとして訴訟を起こした。

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 ニューメキシコ州の陪審員は、「訴訟と同様の苦情が過去10年間に700件あったこと、マクドナルドのコーヒーが客に提供される際の温度は摂氏約85度だが、家庭用コーヒーメーカーのコーヒーは華氏摂氏約72度であったこと、コーヒーを渡す際、マクドナルドはなんら注意をせず、またカップの注意書きも見にくいこと」などを理由に、ステラさんに20%、マクドナルドに80%の過失があると評決を下した。

 その上で、本来の填補賠償額(16万ドル)に懲罰賠償額(270万ドル)を含め、286万ドル(当時約3億円)の支払いを命じる評決が下された

 この事件は、訴訟大国アメリカを象徴するものとしてテレビ番組などで取り上げられたが、実際には、判事のスコット氏が評決後の手続で、懲罰賠償額を「填補賠償額の3倍」に当たる48万ドルに減額を命じ、最終的にはマクドナルドが合計64万ドルの賠償金支払いを命じる判決が下された。

 だがその後、和解が成立し、マクドナルドは60万ドル未満(非公開)の和解金をステラに支払ったそうだ。

References:McDonald’s found liable after girl, 4, suffered second-degree burns from hot Chicken McNugget / written by Scarlet / edited by parumo

追記:損害賠償金額の間違いを訂正して再送します。

 
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マクドナルドのチキンナゲットで子供が火傷したとして両親が訴訟を起こす