さまざまな個性を放つ作品がスタートした4月期アニメで内容、絵面、描写、どれもスリリングで面白いのが「【推しの子】」(毎週水曜夜11:00-11:30ほか、TOKYO MXほか※AMBMAで地上波同時配信、ディズニープラスDMM TVほかで見放題配信)だ。原作漫画のファンはもちろん、アニメで初めて触れた層、「話題だから見てみるか!面白い…!結果=沼落ち」のパターンもSNSなどを見る限り多そうで、勝手に同志を見つけたような気分になっている。CVの人選も良いし、第1回から“次のシーンはどう展開するんだろう?”という楽しみが尽きない。その物語が終了する頃には、次回放送が楽しみでしょうがなくなる。個人的には元「10秒で泣ける天才子役有馬かな(CV:潘めぐみ)に、回が進むごとに感情移入してしまっているが、今回はストーリー本線と同じくらい大きな話題になっているオープニングテーマ曲、YOASOBIの「アイドル」について紹介する。(以下、物語のネタバレを含みます)

【動画】“1億”再生間近…!YOASOBI「アイドル」のMV

■そもそも【推しの子】とは?

深く曲がりくねった物語だが、その導入部というべき部分についてざっくり説明すると、地方都市で働く産婦人科医・ゴロー(CV:伊東健人)はアイドルグループ「B小町」のセンター・星野アイ(CV:高橋李依)のファン。難病のため若くして亡くなった少女・さりな(CV:高柳知葉)がアイに憧れていて、彼女を通じてハマることになった。ある日、16歳のアイが事務所社長に連れられて病院にやって来る。彼女は双生児を妊娠していたのだが、ゴローは出産に立ち会う前に殺されてしまう。

やがてアイは男女を出産。ゴローは男児・アクア(CV:大塚剛央)に転生、さりなは女児・ルビー(CV:伊駒ゆりえ)に転生した。アイは事務所の社長夫人にも子育てを協力してもらい、芸能界に復帰。ますますアイドルとしての輝きを放っていくが、良いことは続かない。アイはストーカーに殺されてしまい、悲劇の伝説のアイドルとなり、時はどんどん流れ、双生児は高校生に。アクアは深く考える。「自分たちの父親は誰なのか?」と。そしてアクアは犯人に情報提供したと思われるその父親に復讐(ふくしゅう)するためあの手この手で奔走し、ルビーは母と同じアイドルを志して芸能界の門をたたく…という流れだ。

■オープニングテーマが話題沸騰

ストーリー展開に先駆けて、我々はもう一つのスリルに立ち会うことになる。YOASOBIが担当するオープニングテーマ「アイドル」だ。この曲がガッチリと耳と心をつかんだところで、本編が始まる。その流れが快い。YouTubeで公開されたMVの再生数は、5月16日の時点で9600万回超え。4月13日にMVが公開されてから約半月後に5000万回再生を超えたと一部でニュースになっていたが、その勢いのまま驚異的に伸び続けていることになる。1億突破も時間の問題だろうし、ビルボードのグローバルチャートにもランクインしており、アジア、ヨーロッパにおけるさらなる人気上昇も間違いなく期待できそうだ。

3分45秒ほどの内容のうち、アニメのオープニングで流れるのは、およそ90秒。イントロはない。“天才的なアイドル様”という歌詞の所で、ようやくアイの写し(ただし口元だけ)となり、メロディーよりもリズム感を第一に優先したようなパートから一転、“今日何食べた?”からメロディアス展開その1へ。と思ったら“ないないない”という箇所ではドラムの代わりに言葉を連打するかのような打楽器的な歌い方をして、それが“誰もが信じ崇めている”から始まるメロディアス展開その2への快い導入部となる。

このパート、たとえばアイドルファンの“オイオイ”的なコールや、もう懐かしい“PPPH”(パン、パ、パン、ヒュー)にもばっちり対応できるリズムだ。この歌、いったい誰が歌っているんだろうという興味が十二分に高まってきた頃を見透かしたかのように、曲名やアーティストのクレジットが出るタイミングも実に鋭い。本編が持つ「次はどうなるんだろう」的展開が「アイドル」にもしっかり憑依していて、歌詞には登場キャラクターの名前が埋め込まれていたり、YOASOBIの2人をはじめとする楽曲製作チームの、原作に寄せるリスペクトと創作への練りっぷり、遊び心が伝わる。

カラオケやTikTokでパフォーマンスする側としては相当なリズム感を要求されるナンバーではないかと思うのだが、リズミカルな部分とメロディアスな部分のコントラストをうまく引き立たすことができたら、歌ったり踊り終えた後の快感は倍増するに違いない。

6月21日(水)にはCDとして発売されるというから、ますますうれしくなる。「やっぱり楽曲はブツで所有したいよな」「店で買うことが生きがいなのさ」派の人にもガッツリ届いて、ヒットの第二波が来るのだ。しかもジャケットの大きさは昔の“シングルレコード”サイズだし、表紙絵はアイがほほ笑む赤坂アカ氏の描き下ろしイラストだ。アイが他界したところから物語が大きく展開するのだが、根本はやっぱりアイありきなのである。

このリリースによって、初めてCDを買う人やCD再生のやり方を覚える人も増えるのかと思うと、わくわくさせられる。かっこいい音楽はいろんなフォーマットで出回ってほしいし、ヒットすれば人々も業界も笑顔になるのだ。

◆文=原田和典

YOASOBI「アイドル」ジャケット/(C)赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会