※本稿は、チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。

バブル崩壊後最高値30,600円台更新なら、フィボナッチ・リトレースメント示唆の31,300円台へ。

●長期上昇トレンドを形成する下値支持線は6月末27,250円、上値抵抗線は33,550円に位置。

●ただ過熱感から調整売りも想定される、今後は国内好材料の持続性と海外の景気動向に注意。

バブル崩壊後最高値30,600円台更新なら、フィボナッチ・リトレースメント示唆の31,300円台へ

日経平均株価5月17日、30,093円59銭で取引を終え、約1年8ヵ月ぶりに終値ベースで心理的節目の30,000円台を回復しました。本日5月18日の東京株式市場でも、日経平均は前場寄り付きで続伸し、2021年9月14日につけたバブル崩壊後の最高値である30,670円10銭(終値ベース、以下同じ)に迫っています。そこで今回のレポートでは、日経平均バブル崩壊後の最高値を更新した場合の上値目途について考えてみます。

まず、テクニカル分析の1つである「フィボナッチ・リトレースメント」を用いて検証します。日経平均の過去最高値は1989年12月29日につけた38,915円87銭で、過去最安値は2009年3月10日につけた7,054円98銭です。この下げ幅(31,860円89銭)から、フィボナッチ・リトレースメントで目安とされる76.4%戻した水準は31,396円70銭となり、ここが1つの上値目途として考えられます(図表1)。

長期上昇トレンドを形成する下値支持線は6月末27,250円、上値抵抗線は33,550円に位置

次に、レポートで何度か紹介している日経平均の「長期上昇トレンド」を改めて確認します。長期上昇トレンドは、2012年10月安値と2016年6月安値を結んだ「下値支持線」と、2013年5月高値と2018年1月高値を結んだ「上値抵抗線」で形成されています(図表2)。日経平均はここ10年ほど、おおむね長期上昇トレンドに沿って推移しており、足元の30,000円台回復も、このトレンド内の動きです。

過去の推移をみると、日経平均は下落局面で下値支持線に支えられ、上昇局面で上値抵抗線にはばまれている様子がうかがえます。この先、下値支持線と上値抵抗線は、6月末でそれぞれ27,250円と33,550円、9月末は27,700円と34,000円、12月末は28,150円と34,450円に位置しています。仮に、各四半期末あたりで日経平均がいずれかの線に近づく展開となれば、下値支持線が下値目途、上値抵抗線が上値目途として意識されると思われます。

ただ過熱感から調整売りも想定される、今後は国内好材料の持続性と海外の景気動向に注意

一方、日経平均はここ数日で、急速に水準を切り上げてきたこともあり、過熱感が高まっています。実際、相場の過熱感を判断するオシレーター系チャートを確認すると、日経平均の「RSI(相対力指数)」の数値は、5月17日時点で76.8%となっており、一般に買われ過ぎとされる70%を超えています。そのため、日経平均が目先、調整売りに押される展開も十分に想定されます。

5月16日付レポートで指摘した通り、日本株には好材料が複数浮上しています。今後は、インバウンド需要の回復が続くか、日銀の金融緩和姿勢に変化がないか、国内企業に成長持続のための構造改革を進める動きが広がるか、賃上げの流れが続くかなどを見極める必要があります。また、米国をはじめとする海外景気が大きく冷え込むことはないかなど、国外要因も、日経平均の長期上昇トレンド継続のための重要なポイントと考えています。

(2023年5月18日

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『約1年8ヵ月ぶり「30,000円台」回復だが…テクニカル分析で考える「日経平均株価」の上値目途【ストラテジストが解説】』を参照)。

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

(※写真はイメージです/PIXTA)