乃木坂46のエースとしてグループを牽引した 1期生 齋藤飛鳥の卒業コンサート2日目の公演が東京ドームで開催された。


応募総数63万人の中から幸運にもプラチナチケットを手にしたのべ10万人のファン。ついに“アイドル齋藤飛鳥”としての最後の日となった18日も、東京地方は5月とは思えない真夏日を記録。齋藤飛鳥の「最後の勇姿」を目に焼き付けようと意気込むファンの熱気でドーム周辺はさらにヒートアップ


その熱気を更に高めたのが、乃木坂46チーフマネージャー菊地氏の影ナレ。そして乃木坂46LLC代表・今野氏による、乃木坂46の円陣をファン5万人と一緒にやるという提案に否が応でも盛り上がる東京ドーム。「努力・感謝・笑顔。うちらは乃木坂上り坂、46!」。ファンならおなじみの円陣コールをファンとメンバーが行い、齋藤の門出を祝う。



白・水色のあすかカラーのサイリウムが乱舞する中の「oveture」は、齋藤飛鳥のアイドル最後の日の始まりを告げる。一筋の光から姿を表した斎藤は、勇ましさと可憐さが調和した真紅のベロア衣装で姿を現した。センターステージまで少しだけほほえみを浮かべながら、おもむろにドラムセットへ座ると、魂のソロプレイ。その流れで齋藤がリズムを刻む『ジコチューで行こう! 』でメンバーも登場。間奏では齋藤に与田祐希がハートを贈り早くも涙ぐむ場面も。『インフルエンサー』では間奏でソロダンスを披露。さらに『 シンクロニシティ』『ハウス! 』『ダンケシェーン』 と、まるで終盤のような豪華な畳み掛けでドームが揺らぐ。


最初MCでは小川彩が「ついにこの日が来てしまった。憧れてるからこそ近づけなくて…。もしかしたら泣いちゃうかもしれないんですが、笑顔で見届けられたらと思います」とにっこり。賀喜遥香は「飛鳥さんが思っているより好きなんです。ずっとにやにやしちゃうんです。今日は頑張りたい…です」とデレデレ。山下美月は「3期生にとっては後輩でいられる日が最後なんです。可愛がられたいんですよ。今なんかいただいてもいいですか?」と無茶振り。齋藤は山下の背中に乗って押しつぶす“かわいがり”を披露し会場を沸かせた。


齋藤曰く「後輩ちゃんたちと濃ゆーく絡んで行きます」といたずらっぽくほほえみ、5期生曲で名曲もほまれ高い『絶望の一秒前』。4期生楽曲の代表曲と言って良い『I see…』。MCで言っていたとおり、センターポジションの賀喜のにやにやは最高潮に。間奏では「あすかさんのことが大大大好きですーー!」と涙をいっぱいに溜めて感謝のメッセージを。3期生とは『トキトキメキメキ』をきゃぴきゃぴに披露。同曲のセンター岩本蓮加も「飛鳥さんの3期生推しという言葉を胸に頑張ってきました。これからの乃木坂46は私達3期生に任せてください。3期生はあすかさんにトキトキメキメキー!」とメッセージ。齋藤は爆笑していた。


アンダー」をテーマにしたインタビューVTRにつづいて、齋藤がアンダー時代に初めてセンターを努めた『扇風機』をパフォーマンス。生駒里奈ラストセンター曲で、齋藤もフロントメンバーだった『Against』へ。モニターには当時のパフォーマンスやMVが流れ、歴史の歩みを噛み締める。


後半ブロックについて、「卒業コンサートなら、このあたりで落ち着いて行きたいところなんですが、可愛い楽曲をたくさんやってきたので、もう誰かの前で可愛い子ぶって踊ることも一生ないし(笑)。今日最後みたいな楽曲たちです」と、しっかり10代の頃はちゃんときゃぴきゃぴしていたということを裏付ける?ナンバーが並ぶ。見納めとなる“映像研トリオ”(齋藤、梅澤、山下)での『ファンタスティック3色パン』では、胸キュンセリフルーレットを決行。“あしゅ”の萌えセリフも見納めとなった。齋藤、岩本、筒井あやめ3人での『なぞの落書き』。遠藤さくらとの“尊いペア”による『他の星から』。柴田柚菜、賀喜、伊藤理々杏、金川紗耶、中村麗乃と『制服を脱いでサヨナラを…』。久保史緒里、阪口珠美、清宮レイ、田村真佑と『あらかじめ語られるロマンス』。3期生から5期生が揃い『ロマンティックいか焼き』を披露、ここで“トリンギョ”が再び登場。気球に乗って5万人のファンに手を振る。山下の「騒げー!!」の煽りでヒートアップした『ガールズルール』ではメンバーがトロッコでアリーナエリアを周り、コールの盛り上がりも最高潮に。


乃木坂46にはシングルの中で唯一、小室哲哉プロデュース楽曲がある。実は制作を提案したのは齋藤飛鳥。「秋元康さんなら断られることはないと踏んで言ってみました。私を参加させてとか、センターやりたいとかまったく思ってなかったけど、依頼された側からすると、“お前が言ったんだから責任持ってやれよ”ってなりますよね(笑)。センター楽曲を1曲取る形になって“ごめんなさい!”って思ったんですが、楽曲のデモをもらったときに“あー小室さん作ってくれたんだあ”って感激しました。スタッフさんもテンション上がってました」とエピソードを語り『Route 246』をパフォーマンス。事を経緯を聞いて聴くと味わい深いものがある。続いて『ありがちな恋愛』、オリジナルは大園桃子と与田の3人の楽曲だが今夜はアコースティックヴァージョンのソロ披露で『地球が丸いなら』をパフォーマンス。


ファンに向かって「乃木坂には伸びしろがたっぷりあるメンバーがたくさんいますが、みなさんからの声がないと外にも届かないと思うので。これからはどうか皆さんの声で後輩をどんどん上へ押し上げていってほしいなあって思います」とメッセージを贈ると、後ろにはメンバー全員が整列している。振り向いた齋藤は言葉を詰まらせながらも「乃木坂をよろしくね…」と未来を託し、メンバーも涙をこらえながらしっかりうなずいた。


つづいては、齋藤卒業後に発表された『人は夢を二度見る』を最初で最後のパフォーマンスにどよめく会場。齋藤直筆の後輩ちゃんへのメッセージが映し出され、“この楽曲のフォーメーションにあすかがいる…”こんなエモいパフォーマンスが観られるとは思っていなかったのではないだろうか。余韻を味わいながら『帰り道は遠回りしたくなる』『サヨナラの意味』と、一抹の寂しさも去来する選曲に胸がアツくなる。そして齋藤センターのシングルナンバー『裸足でSummer』、さらに“声出し解禁”を体現するような『Sing Out!』と、きらきら煌めく“あすか”を胸に刻みながら、声援を送り続けるファンのアツい気持ちは途切れない。“公式おにいちゃんバナナマンのサプライズメッセージに笑顔を見せ、「私が最後にいただいた楽曲です」と『ここにはないもの』をパフォーマンスし本編は終了。


「後輩たちもモニターで観てくれていると思うので、未来の話をします」と切り出し、「恩返しと言う言葉があると思うんですけど、私にはもっと好きな言葉があって、“恩送り”。この言葉を知ってからメンバーやスタッフさんに対しても気持ちの整理が出来たような気がします。誰かの恩をその人に返すだけじゃなくて、色んな人に送っていく、そうやって連鎖していけば素敵なことだなって思うし。私は今日が終わったらみなさんとお別れしますが、今まで私を見て少しでも楽しかったり、明るい気持ちになったと思ってもらえたんだったら、その気持ちを後輩のみんなに渡してほしいなって。今は乃木坂を守ってくれてる後輩のみんながとても大切です。私が卒業して、なにかに追われることとか、なにかで頭がいっぱいになることが少しなくなるとしたら、その分穏やかな日常や優しい気持ちを後輩のみんなに味わってもらいたいです。明日から1期生がいない乃木坂46になりますが、これからもどうかよろしくお願いいたします」と、自分の未来は語らず、なんどきも後輩のことを慮る、彼女の姿勢に感服するばかりだ。


アンコールに応えた1曲目は、「みんなに向けて歌うんですが、誰よりも支えてくれたお母さんを思いながら歌おうかなと思います」と告げ『硬い殻のように抱きしめたい』を熱唱。白いドレスでスポットを浴びる“あすか”は歌姫だ。以降はメンバーが合流して『僕だけの光』から、テンションブチアゲの『ロマンスのスタート』、ライブでも大いに盛り上がる2ndシングル『おいでシャンプー』と立て続けに披露。“どうか終わらないで…”そんな大きな思いがドームを支配した。


ここで遠藤さくらと与田がメンバーを代表して齋藤にメッセージを。最初から涙目の遠藤は「なにもできないわたしに、いろんなことを教えてくれて、大きな背中を見せてくださって、ほんとうにたくさんのものをもらったのに、全部返したかったのに、全然間に合いませんでした…。飛鳥さんからいただいたものを一生懸命抱えて頑張るので、いつか言ってくださった”自分を認めてあげられるように”なったら会いに行きます」と懸命に自分の言葉で話し、胸を打つメッセージだった。


さらに与田は「飛鳥さんは私には“ツン”多めのツンデレだったけど、思い返すと優しい温かい思い出がたくさん出てきて、加入したての頃先輩とまだ話せないなか、ライブで羽交い締めにしてくれたこと、それがすごく嬉しかったです。私、普段泣かないけど、飛鳥さんの前だとウザいくらいいっぱい泣いて、いつも笑いながら慰めてくれて…そんな飛鳥さんのさりげない優しさに救われた後輩は私だけではありません」と言ったところで、堰を切ったように大号泣。「ダメかもしれない…」とめげそうな与田に、齋藤の“よしよし”の緊急救助が入るも、「飛鳥さん…いつも助けてもらったばかりで、私なんにも返せなくて、最後まで頼れる後輩になれなくて、ほんとにごめんなさい!」とふたたび感情が爆発した。いつもは淡々とした与田がここまで感情を露わにするのはあまり見たことがない。彼女にとってはそれだけ尊敬し、慕っていた先輩の最後の日がいかに大事な時間であったかをものがたり、自ずと目頭が熱くなった。


最後に梅澤が「こうしてみんなで送り出すことができてうれしいし、みんな本当に楽しんでいたから、これがみんなの思いのすべてだなと思いました。先頭に立っていろいろ大変なこともあったと思うけど、11年と8ヶ月本当にお疲れ様でした!」と労いの言葉を送り、ラストナンバーとして『ジコチューで行こう!』を全員でパフォーマンス。


齋藤は「最後にこんな景色が見られて、もう人生大満足です。明日からは恋とかもするかもしれませんね(笑)。お前らの誰かの嫁が飛鳥になるかもしれませんね(笑)」などと冗談を交えつつ、翼の生えたゴンドラに乗って上空へと羽ばたいていき、約3時間にわたるアイドル人生ラストステージは幕を下ろした。


去年の大晦日を最後に乃木坂46の活動を終えた齋藤は「さらっといなくなるよ」と言っていた。あれから5か月、今野氏は「コロナの制限が緩和されて、声出し解禁となってから送ってやりたい」と、影ナレ時に明かした。スタッフにメンバーにファンに愛され、何につけても自分より後輩のことを思い続けた、齋藤飛鳥に喝采を贈る。


乃木坂46LLC



セットリスト

0.Overture

1.ジコチューで行こう! 

2.インフルエンサー

3.シンクロニシティ

4.ハウス! 

5.ダンケシェーン 

6.絶望の一秒前

7.I see…

8.トキトキメキメキ

9.扇風機

10.Against

11.ファンタスティック3色パン

12.なぞの落書き

13.他の星から

14.制服を脱いでサヨナラを…

15.あらかじめ語られるロマンス

16.ロマンティックいか焼き

17.ガールズルール』

18.Route 246

19.ありがちな恋愛

20.地球が丸いなら』

21.人は夢を二度見る

22.帰り道は遠回りしたくなる

23.サヨナラの意味

24.裸足でSummer

25.Sing Out!

26.ここにはないもの

アンコール

27.硬い殻のように抱きしめたい

28.僕だけの光

29.ロマンスのスタート

30.おいでシャンプー

31.ジコチューで行こう!

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