人間関係や労働環境、給与など、現状に不満や不安を覚えて新天地を目指す……転職はいまや当たり前ですが、なかなか100%の満足を得られることは難しいようです。みていきましょう。

日本のサラリーマン…転職者は1年で700万人超え

厚生労働省令和3年雇用動向調査』によると、2021年1年間の入職者数は 720万人、離職者数は717万人。転職入職者率*1は、男性の場合、20~40代まで下降線を辿り、その後は大きな増減はないものの、60歳定年を機に大きく跳ね上がります。

*1:常用労働者数に対する入職者数の割合で、「入職者数」÷「1月1日現在の常用労働者数」×100で算出

【年齢別「サラリーマンの転職入職率」】

20代前半:15.3%

20代後半:11.5%

30代前半:9.2%

30代後半:7.8%

40代前半:5.4%

40代後半:4.5%

50代前半:4.6%

50代後半:5.2%

60代前半:12.0%

出所:厚生労働省令和3年雇用動向調査』より

明らかになっている転職理由*2で多いのが、「職場の人間関係が好ましくなかったから」で(全体8.1%)、僅差で「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」(全体8.0%)。「給料等収入が少なかった」(全体7.7%)が続きます。

*「個人的理由」(61.2%)と「その他理由(定年や会社都合など)」(38.8%)に分類された前職の離職理由のうち、個人的理由から「その他の個人的理由」19.1%を除いた42.1%について

人間関係、労働環境、そして給与。この3つが、サラリーマンが会社を辞める三大理由といったところでしょうか。

――給与に不満があったわけではない

そう投稿したのは、42歳のサラリーマン。以前は日本でもトップクラスの大企業で課長を務めていたそうです。

厚生労働省令和4年賃金構造基本統計調査』によると、大企業(従業員規模1,000人)の課長クラスの平均給与は、大卒で月58.4万円、年収で994万円。同年代の平均給与は、月収で41.4万円、年収で685万円ですから、確かに給与面では不満はなかったかもしれません。

大企業に閉塞感を覚えていた大企業・課長のもとに熱烈スカウト

そんな男性が転職を決めたのは、誘いを受けた企業からの甘言。

ーー部長のポジションで活躍いただきたい

同世代のなかでも出世は早く、評価されているという自負はあったといいます。ただ大企業ならではの閉塞感を覚え、もう少しチャレンジできる環境で働けないかと漠然に考えるようになり、軽い気持ちで転職サイトに登録をしたのだとか。そこでスカウトされたのが、いま勤めている会社。部長職として招き入れたいという熱烈オファーを受け、その気になった男性。唯一気になったのが、会社規模。従業員数100名に満たず、社歴も浅い中小企業大企業ほどの福利厚生は望めないが……しかし、現状を打破したいという気持ちがまさり、ほぼ2つ返事で転職を決めたといいます。

新天地で愉しい毎日を過ごしているかといえば、あまりに早く決断してしまったことに、1ミリも後悔していないかといえば嘘になると男性。後悔した理由のひとつが給与で、転職後、2割ほど減給となったといいます。

単純計算、年収で795万円ほど。課長職から部長職になり、大企業ならではの閉塞感からも解放されたものの、「給与減」が現実になった今は昔を惜しむことも。

もし課長から部長への昇進が約束された大企業から大企業への転職だったなら……あくまでも平均値ですが、年収は994万円から1,200万円と、大きく給与アップも望めたかもしれません。しかし中小企業の部長職。従業員10~99人企業で年収766万円が平均値。それと比べると、男性の場合は厚遇だったことに変わりはありませんが、転職で給与減という事実は変わりません。

前出の厚生労働省の調査によると、転職で給与アップを実現した人は34.6%で、1割以上の増加は23.7%。一方、給与ダウンとなったのは35.2%で、1割以上の減少となったのは26.3%でした。

男性のように大企業から中小企業への転職であったり、異業種・異職種のキャリアチェンジだったりする場合は、給与減となるケースが多いでしょう。当然、転職前には給与の提示があり納得のうえでの決断であるものの、現職よりも低い給与だったならそれを上回る魅力があるのかとともに、入社後に給与の上昇の余地があるのかも確認したいところ。あくまでも想定なので、実現できるかは分かりませんが、転職後のモチベーションにもなるはずです。

(※写真はイメージです/PIXTA)