コロナ禍をきっかけに、一気に増加した女性芸能人のYouTubeチャンネル。テレビ出演を本業とする彼女たちだが、YouTubeではまた別の魅力を発揮しており、パブリックイメージとは異なる面を楽しむことができる。

参考:【写真】後藤真希の撮り下ろしカット

 YouTube配信に力を入れている女性芸能人に、動画投稿を始めたきっかけやYouTube活動の展望について聞いていく連載企画「YouTube with her」がスタート。

 第一回には、2020年3月にYouTubeチャンネル「ゴマキギルド」を立ち上げた、後藤真希を迎えた。

 2023年4月現在、登録者数34万人を超える同チャンネルでは、後藤がゲームを楽しんでいる姿を中心に、「歌ってみた」や「踊ってみた」、ライブの密着動画など幅広いジャンルの動画が投稿されている。チャンネル開設から3年、後藤にとってYouTubeとはどんな場所なのか。改めて話を聞いた。

・「YouTubeを始めてから、自分のことをたくさん話せるようになった」

ーー「ゴマキギルド」を始めたきっかけを教えてください。

後藤:コロナ禍に入ったころに「ファンのみんなに、おうち時間を楽しんでもらいたいな」と思って始めました。趣味のひとつであるゲームを軸に、普段の私の雰囲気を見てもらいたくて今のような内容になったんです。

ーーゲーム配信動画では、これまでの後藤さんとはまた違った印象を受けます。

後藤:たしかにゲーム配信のときは、素のまんまだなと思うことが多いですね。ゲームタイトルによっては、声が枯れるぐらい叫ぶやつもあるし、『モンハン』(モンスターハンターシリーズ)をやっているときは、舌打ちをしてしまうこともありますから(笑)。

 そうなりすぎないように、スタッフさんから質問してもらうようにしているんですが、最初はゲームと会話のどちらに集中すればいいのか苦戦していましたね。さすがにもう慣れましたけど。

ーー(笑)。ファンの方から「いま、舌打ちした!」って言われないんでしょうか?

後藤:結構コメントが荒れたこともありましたね。そういう姿を見せたことがなかったので、びっくりしたのかなって。でも、周りに対して舌打ちをしているわけではなく、自分のプレーに対してのものなので、「そこは誤解なきよう!」と伝えたいです(笑)。

ーー自然体な様子を見せることには抵抗なく?

後藤:ないかもしれませんね。むしろ「どこまでなら放送できるかな?」って感じです。ハロプロのときはメンバーも多かったので、あまり積極的に発言をする機会がなかったんですけど、YouTubeを始めてから、自分のことをたくさん話せるようになったのはよかったなと感じています。

ーー配信タイトルは、どのように選んでいますか?

後藤:自分が普段やっているタイトルが中心ですね。基本的にひとつのゲームにしか集中できないタイプなんです。『モンハン』をやっている時期は、家でも配信でも『モンハン』しかやらないし、『Apex Legends』をやっているときは『Apex Legends』しかやらない。配信しようがしまいが、極めたくなっちゃうんです。

AKB48とのコラボは「子どもたちがいっぱいいる」感覚

ーーゲーム配信では、貴島明日香さんやダイアンの津田さんなど、いろんな職業の方とコラボされてますね。

後藤:そうなんですよ! 『Apex Legends』をやってらっしゃる方に声をかけていたら、気づけばいろんなジャンルの人たちとコラボしていました。ファンのみんなからも「こういうコラボ、ここでしか観られないよね」と言ってもらえるので、やってよかったなとすごく思えます。

ーー後藤さんから見て「うまいな」と思った人はいますか?

後藤:貴島明日香ちゃんは上手でしたし、説明もわかりやすかったですね。明日香ちゃんのうしろをついていったら、なんとなくできるし、なんとなく勝てるみたいな感じでした。

ーーコラボといえば、以前AKB48と歌番組でコラボした際の密着動画も、ゲームではありませんが反響は大きかったですよね。

後藤:これまでにないコラボだったので、私自身ドキドキしました。オーディションに受かって、新しい現場に行く感覚でしたね。

ーーモーニング娘。AKB48、それぞれのグループに違いはありましたか?

後藤:とにかくみんな若い!(笑) そして、イマドキの顔の子たちがそろっているなと思いました。

 モーニング娘。ってすごい年齢幅が広かったですし、加入当初は私が一番年下だったから「お姉さん方に囲まれて活動している」っていう感覚だったんですよね。それが一番年上になっちゃったので「子どもたちがいっぱいいる!」って思いました。

ーーコラボした方でも、そうではない方でも、ライバルとして意識しているYouTubeチャンネルはありますか?

後藤:意識しているチャンネルは、そこまでないですかね。私と同じタイトルの配信をしている本田翼ちゃんや貴島明日香ちゃんに対しては「いま、ランクどこまで行ったんだろう」って、ゲーム内でのランクの方が気になっちゃいます(笑)。

 同じタイトルを配信している方の動画はよくチェックしているので、狩野英孝さんのチャンネルも観るのですが、本当に天然具合がたまらなくおもしろいなと視聴者として楽しんでいます。

ーーゲーム配信のほかに「歌ってみた」や「踊ってみた」など、さまざまなジャンルの企画も投稿されていますね。

後藤:そうですね。「歌ってみた」は、再生回数もコメントの量も多くて、やっぱりみんな歌ってほしいのかなと感じます。

ーー選曲は、どのように決めているのでしょうか?

後藤:自分が「歌ってみたいな」と思った曲や、スタッフの方がおすすめしてくれた曲を集中的に聴き込んで歌うようにしています。細かいブレスのタイミングとか、母音の音とかは、本家からかけ離れたくないなと思っているので、同じフレーズを何度も繰り返していますね。

ーーこれまでに投稿した曲で、大変だった曲はなんでしょう?

後藤:SPEEDさんや、モーニング娘。などの人数が多い曲をひとりで歌ったのは、本当に大変でした。特に『泡沫サタデーナイト!』は、ガヤもいっぱい入っている曲なので、モーニング娘。のメンバー数に対して私ひとりだと、ボーカルの厚みが全然違うんですよ。コーラス録りも込みで大変でしたね。

ーーその分、反響も大きかった印象です。

後藤:そうですね。いまのモーニング娘。を知らない私のファンの子たちも、いまのモーニング娘。を好きな子たちも観てくれました。それぞれのファンを橋渡しするような存在になれたのは、うれしかったです。

ーーモーニング娘。の楽曲といえば、辻希美さんとの「踊ってみた」も話題になりました。どういう経緯で実現したんでしょう?

後藤:辻ちゃんとLINEしているときに「コラボしようか」って決まったんです。辻ちゃんが「どうしても『ぴったりしたいX'mas!』を自分のチャンネルで踊りたい」と言っていたので、じゃあ、私は辻ちゃんのデビュー曲でもある「ハピサマ」(ハッピーサマーウェディング)にしようって。

 衣装はAmazonとか楽天で検索して、同じような雰囲気のものを買いました。いまでも結婚式の余興とかで使ってくださる方が多いんですね。

ーーまさか本家が着るとは(笑)。どのくらい練習したのでしょう?

後藤:練習してないですね。当日「ここって、ああだっけ? こうだっけ?」ってちょっと合わせて、すぐ撮影みたいな。意外と踊れるもんだなと思いました。「エモい」って言ってくれた人がたくさんいたので、定期的に企画としてやっていきたいなと思っています。

・大事なのは“視聴者目線”で楽しめるかどうか

ーー後藤さんは、YouTubeのどんなところに楽しさを感じていますか?

後藤:生配信を通して、視聴者の方とリアルタイムでやりとりできるのは、やっていて楽しいなと思います。Instagramでライブ配信をするときとは、観てくれている人が全然違うんですよ。YouTubeでの生配信はゲームを軸にしているだけあって、一緒にゲームの話で盛り上がることが多く、楽しいですね。

ーーYouTubeをコンスタントに投稿するモチベーションはなんなのでしょうか?

後藤:撮影が楽しくて、たくさん観てもらえて、コメントもたくさんいただけたらもちろん最高ですよね。ただ、全部がうまくいくことばかりではないので、自分が視聴者の目線に立って動画を観たときに「おもしろい」と感じられたら、やってよかったな、またやろうと思えます。

ーー逆に、辞めたいなと思ったことはありますか?

後藤:辞めたいと思ったことはないですけど、自分に合う企画を見つけるのに悩むことはあります。そういうときは、これまでの動画の再生回数をチェックしたり、SNSでエゴサしてみたりして、新しい企画を考えるヒントにするようにしています。

ーーご自身のやりたいことだけでなく、ファンの方の「観たい」も大切にされているんですね。

後藤:そうですね。でも、いろんなタレントさんのYouTube動画で伸びている企画があったとして、それを私がやりたいわけではなかったら、無理にやらなくてもいいかなと思っています。

 逆に「やりたい」と感じたものは、思いついたときにスタッフさんにすぐ言ってみるようにしています。コロナ禍でなかなかできなかったような企画も、今後できるようになると思うので、どんどん新しいことをやっていきたいですね。

ーー今後、力を入れたいジャンルはありますか?

後藤:5月のライブは、ファンのみんなが「もう一度観たい」と思っていたであろうライブを再現しようと思っています。ダンスをバキバキやっていたころにタイムスリップしたような感覚になってもらいたいなと思っているので、ぜひ盛り上げたいです。

 そのために、ライブを作る過程、ライブの密着やリハーサル風景などを、YouTubeでもこまめにアップしていけたらいいなと思っています。

ーーもしも、モーニング娘。時代にYouTubeがあったら、どんな企画をやるのがよさそうでしょう?

後藤:うーん……考えてみれば、当時も似たようなことをやっていたんですよね。『ASAYAN』とかで、自分たちでビデオカメラを回してたなって。

 ただ、いまよりもアイドルのプライベートが見えづらい時代だったので、メンバーと普通にゲーセンに行ったり、おでかけしたりしている様子を投稿してみたいなとは思います。

 それから、モーニング娘。はケーキの食べ方が“異常”なんです。ホールケーキを切らずに、みんなでフォークを持ち寄って好きなところを食べる。あれをYouTubeに投稿したら、さぞ驚かれていたでしょうね(笑)。

(文・取材=於ありさ

後藤真希(撮影=洞澤 佐智子(CROSSOVER))