バレンシアは23日、21日に行われたラ・リーガ第35節のバレンシアvsレアル・マドリードの一戦で発生したブラジル代表FWヴィニシウス・ジュニオールに対する一部サポーターの人種差別的な言動を受け、改めてクラブとしての声明を伝えた。

 同試合はホームチームの1点リードでタイムアップを迎え、バレンシアは残留に向けて貴重な勝ち点「3」を獲得していた。だが、試合前から一部のサポーターによってヴィニシウスに対する人種差別的なジェスチャーが横行。70分過ぎのシーンではゴール裏のサポーターから人種差別的発言を受けたヴィニシウスが激昂し、試合が約10分程度止まる事態にまで発展していた。スタジアム全体に人種差別発言を咎めるアナウンスが発せられた後に試合は再開したが、後半アディショナルタイムにヴィニシウスが退場処分を受けた場面では、スタンドから同選手を侮蔑するチャントも歌われていた。

 このような事態を受け、当然ながらヴィニシウスやカルロ・アンチェロッティ監督、チームメイトが苦言を呈していた。レアル・マドリードはクラブとして検察庁に訴状を提出しており、ヴィニシウスの母国であるブラジルのルラ大統領やブラジルサッカー連盟(CBF)も非難の意思を表明していた。

 バレンシアも22日付で、ヴィニシウス対して人種差別的なジェスチャーを行ったサポーター1名を特定したこと、同サポーターに対して生涯に渡る入場禁止処分を科したことを発表。加えて、引き続き捜査を続けることを表明していた。今回の声明によると、前述のサポーター1名に加え、新たに2名のサポーターが警察によって特定されたという。新たに特定された2名についても同様に生涯に渡る入場禁止処分を科されることとなる。改めて、人種差別を断固として許さない姿勢をクラブとして表明した。

バレンシアCFはカンプ・デ・メスタージャでの人種差別をなくすため、当局の捜査に協力しています。クラブはあらゆる形態の人種差別と暴力に対する強い非難と断固とした立場を改めて表明します。そして、最も厳しい措置であるスタジアムからの永久追放を適用することで、特定されたすべての人に同じ強さで行動していくつもりです」

バレンシアCFは、いかなる人種差別的な攻撃も許しません。私たちのクラブに人種差別は存在しません。私たちは長年に渡り、具体的かつ一貫した行動で、私たちが尊敬に値するクラブであることを実証してきました。近年、バレンシアCFは、サッカースタジアムにおけるこのような惨劇に対して、プロトコルを確立する必要性を訴えてきました。クラブとして人種差別との闘いをリードしてきたという自負があります。2019年には、ヨーロッパリーグのアウェイゲームでファシスト的なジェスチャーをしたファンが、スタジアムから生涯追放されました」

 バレンシアはクラブとして人種差別に対する非難を表明しつつも、今回の行動が一部サポーターによって行われた愚行であることも訴えている。「レアル・マドリードとの試合は生中継されていました。その中で、スタジアム全体、バレンシアのサポーターのほとんどが人種差別的かつ侮辱的な言葉を口にしていたというのは、まったく事実ではありません」とした上で、一部サポーターの行動をクラブ全体の思想と拡大解釈することを控えるように呼び掛けた。

「この数日間、多くの混乱が起こり、誤報も報じられています。バレンシアCFは責任と厳粛さを呼びかけたいと思います。今回の問題は非常にデリケートな問題であり、誰もが事実に忠実になり、その事実に基づいて発言すべきだと考えています。その中で、“バレンシアニスモ”(バレンシア主義)が人種差別的な思想だという烙印を押されておりますが、それを受け入れることはできません。決して事実ではなく、良識あるサポーターに対して敬意を払う必要があります」

サッカー界にも社会にも人種差別の場所はありません。バレンシアCFは人種差別を強く非難します。共に人種差別に立ち向かいましょう」

バレンシアの本拠地「エスタディオ・デ・メスタージャ」 [写真]=Getty Images