災害により長期運休を余儀なくされている鉄道路線が、今も全国各地に多数あります。中には再開を断念したり、バスに転換されるところもあります。

相次ぐ大雨、台風で「次々と運休」に

2016年の熊本地震で被災し、一部区間をのぞいて長期運休となっていた南阿蘇鉄道。ことし7月にいよいよ、6年ぶりの全線運転再開となります。

いっぽう、災害により長期運休を余儀なくされている鉄道路線は、今も全国各地にあります。中には再開を断念したり、バスに転換されるところもあります。

●JR根室本線 東鹿越~新得 41.5km【北海道/廃止予定】
2016年8月末の台風10号で被災し、土砂流入が相次ぎ、橋梁への被害も発生。東鹿越までは10月に再開しましたが、残り区間は今もバス代行輸送が続いています。

同年11月には富良野~新得間の輸送密度(1kmあたりの1日平均旅客輸送人員)は「152」と極めて低いことから「当社単独で維持することが困難」と発表、バス等への転換について地元と相談したいとしました。そして2023年3月、JR北海道富良野~新得間について廃止届を提出。不通区間の鉄路は草に覆われたまま、列車を再び迎え入れることなく、歴史に幕を下ろします。

●JR肥薩線 八代~吉松 86.8km【熊本県鹿児島県/復旧に向けて検討会議中】
2020年7月の豪雨で、橋脚や盛土、駅施設が大規模に流失し、復旧が困難な状況に追いやられました。復旧費用は235億円にのぼると試算され、うち2本の橋梁復旧が半分を占めます。

八代から人吉までは延々と球磨川に沿って走る風光明媚な区間で、そこから過酷な山越えとなります。ループ線やスイッチバックで標高差を克服し、秘境駅として知られる大畑(おこば)駅や日本三大車窓「矢岳越え」を経て、吉松へ至ります。九州屈指の名物ルートのひとつで、観光列車「かわせみ やませみ」「いさぶろう」「しんぺい」が運行されていました。一方、屈指の閑散区間でもあり、人吉~吉松間の普通列車はわずか3往復でした。

現在、鉄路での復旧を視野に入れ、「JR肥薩線検討会議」がこれまでに3回開かれています。今のところ「何をどう直さないといけないのか」まで整理があらかた付いており、次は「誰がどれだけお金を出して復旧し、管理運営していくのか」を国・自治体・JRで調整する段階に入っています。

「復旧」にめど、あるいは暗雲垂れ込める路線も

くま川鉄道 人吉温泉~肥後西村 5.8km【熊本県/2025年度復旧予定】
JR肥薩線とともに被災し、球磨川を渡る橋梁が流失。バス代行輸送が続き、列車は人吉市街地からやや離れた肥後西村駅から、終点の湯前(ゆのまえ)までを往復する状況が続いています。肥薩線の不通で人吉駅そのものに鉄道が来なくなったことから、もっぱら地元輸送のための鉄道となっています。

全線再開は2025年。国の「特定大規模災害」に指定され、さらに過去3年間赤字だったこと、線路や施設を公的機関へ移譲することを条件に、「国と自治体で半分ずつ負担」という形で復旧が進められています。

●JR日田彦山線 添田~夜明 29.2km【福岡県大分県BRT転換】
2017年7月の大雨で、県境の山岳区間が大規模に被災。JR九州は「単独での復旧は困難」とする一方で、地元自治体からは「地元の負担なしでの鉄道復旧が大前提」と、意見は平行線に。JRは「鉄道敷地をバス専用道に整備し、BRTとして復旧」という提案をし、2020年7月に正式決定となります。

BRTひこぼしライン」として再出発する日田彦山線。開業は今年8月28日に控えています。添田~彦山は一般道、彦山~宝珠山は専用道(全長14km)、宝珠山~日田は一般道を走行します。駅の数は鉄道時代の12駅から一気に24駅増加し、全36駅となります。

先行き不透明…「長期運休」になりそうな被災路線

そのほか、まだ運休から1年未満ですが、復旧の見通しがまったく立っていない路線もあります。

●JR津軽線 蟹田~三厩 28.8km【青森県/廃止も含め協議中】
津軽半島の末端部にあたる当区間は、2022年8月の大雨で、盛土流出などの被害を受け運休。赤字区間であることから、JRは「鉄道以外の復旧方法も含め検討する」とし、廃止も視野に入れています。同時に蟹田から三厩地区、竜飛崎方面に直行する乗合タクシー「わんタク」の実証実験が開始。増便も行われ、「津軽線の代替交通」としての地盤固めが着々と進んでいます。

●JR米坂線 坂町~今泉 67.7km【山形県/協議中】
津軽線と同時に被災し、橋梁の損傷など大規模な被害が発生。全線復旧まで5年を要し、約86億円がかかると試算されたことから、やはり鉄道以外も含めた復旧協議が開かれています。

付近の磐越西線花輪線五能線などはすでに復旧済みですが、津軽線は100円収入に7744円、米坂線は2659円のコストがかかる「超赤字区間」を抱えており、沿線自治体は地元負担をふくめ難しい判断を迫られそうです。

肥薩線を走る観光列車「いさぶろう・しんぺい」(画像:写真AC)。