量子力学のことに詳しくなくても、何だかこの分野がとてもエキサイティングであることは想像できるし、同時にこの役者がとても魅力的であることも強力に伝えてくれる…それが「アントマン&ワスプ:クアントマニア」、そして気鋭の俳優キャスリン・ニュートンの印象だ。彼女は同作でポール・ラッド演じる“体のサイズを自由自在に変えて戦うアベンジャーズの最小ヒーロー”アントマンの愛娘にして、量子世界につながる装置を作ってしまった天才ティーン”キャシー・ラングを好演している。そんなマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)“フェーズ5”のトップを飾った注目作が、このほど早くも配信開始。マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長が「今までの映画と違い、新たな“アベンジャーズ”に直結する作品」と語った「アントマン&ワスプ:クアントマニア」の持つ筋書きの面白さは一旦置いといて、今回はキャスリン・ニュートンのキャリアを紹介したい。

【写真】ほほ笑ましい“父娘”!ポール・ラッドとの仲良し2ショット

中条あやみらと同世代の注目俳優

1997年2月生まれ、ということは日本の俳優で言えば今田美桜中条あやみ芳根京子などと同い年だ。出身地のアメリカ・フロリダ州オーランドは、テーマパーク“ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート”のある都市。すでにここでディズニーとの縁があった。4歳でモデル、5歳で役者デビューを果たし、有名ブランドのコマーシャルに登場。キャメロンディアス主演の「バッド・ティーチャー」(2011年公開)で長編映画初出演の後、翌年公開のホラー映画「パラノーマル・アクティビティ4」で主役を務め、ヤングアーティスト賞主演若手女優賞(長編映画部門)に輝いた。

日本でブレイクするきっかけとなったのは、2019年「名探偵ピカチュウ」のヒロイン、ルーシースティーヴンス役だろう。日本版吹替声優を飯豊まりえが務め、“日米ルーシー”として一緒に日本でワールドプレミアイベントに出席していたのも記憶に新しいところ。さらに2021年には、ホラー映画「ザ・スイッチ」が日本公開。キャスリンはベテランの名優ヴィンス・ヴォーンと共に主役を張り、「連続殺人鬼と高校生が入れ替わり、24時間以内に元に戻らないと、一生そのままになる」という予想の斜め上を行くシチュエーションの中、見る者を徹底的にハラハラさせた。

この作品に関するキャスリンのインタビューを見たことがあるのだが、「連続殺人鬼の役を演じてみたかった」「普段の私は弱い性格だから、殺人鬼に変身したかった」という趣旨のことを語っていて、これまた痛快な気分になった。演技の上では何者にもなることができるし、自分を解放することもできる。だからキャスリンは子役の頃から、この職業に打ち込んでいるのかもしれないな、とも思ってしまった。

■念願の「マーベル・ファミリー」入りでますます人気に

アントマン&ワスプ:クアントマニア」で、三代目キャシー役に選ばれたことで、キャスリンの未来はさらに明るいものとなっているはず。本人的にも憧れのMCU作品、マーベル・ファミリーの仲間入りに、発表時から大変な喜びようだったことは海を越えて伝わっていた。キャシーの年齢設定は18歳だが、そこで表現されるのは子役時代から磨き上げてきた経験の反映であろう安定の演技、抜群の発声、しなやかな動きが加わった上での「18歳」だ。制作スタッフは、20代半ばのキャスリンが持つ、この「若きベテラン性」に賭けたのではないか。

父親役のポール・ラッドによるアドバイスも彼女を大きくリラックスさせた。それは「撮影の休憩中にポールが『僕には君が面白いことが分かる。遠慮しないで、ジョークでもアドリブでも、撮影中に思いついたこと、やりたいことは全部やりなさい。結局のところ、監督が面白くないと判断すればカットするだろうし、面白ければ使うだけだ。君が好きなように演技すべきだ』と、私に言ってくれたんです。私は『マーベルの映画でそんなことしていいの!?』と、とても驚きました」というもので、まるで父が何らかの発表会を前に緊張する娘へ諭す助言のようなやりとりだ。

Instagramのフォロワー数は200万に迫ろうかという勢いで、インフルエンサーとしても注目を集めるキャスリン。今後どんな監督や共演者が、彼女の潜在能力を引き出していくのか、注目していこう。

なお、「アントマン」シリーズ3作品および、「アベンジャーズ」シリーズなどのMCU作品はディズニープラスで配信中。

◆文=原田和典

アントマン&ワスプ、そしてキャシーが活躍!作品を象徴する場面カット/(C) 2023 Marvel