いよいよ5月26日(金)に東京の日本青年館ホールにて開幕する、GANMI×宝塚歌劇 OG DANCE LIVE 『2STEP』。3月からスタートし宇月颯、湖月わたる、GANMIのSotaに話を訊いてきた、宝塚歌劇OGでライターとして活躍する早花による連載『早花まこの、「2STEP、できますか?」』も、残すところあと2本となった。今回は稽古場レポートの第三弾をお届けする。

春の嵐も吹き飛ばす

明るい日差しが続いていた5月の空が一転、この日は朝から激しい雨が降っていた。しかし私が足を運んだ場所では、大雨を蒸発させてしまいそうな熱い風が巻き起こっていた。

ライブパフォーマンス、振付、演出までを手掛けて国内外で活躍しているダンスアーティストGANMIが、7人の宝塚歌劇OGとコラボレーションを果たす。

そんな異色のDANCE LIVE『2STEP』は、5月26日(金)の日本青年館ホールでの初日に向けて、出演者とスタッフによる連日のお稽古が続いている。

この日、見せていただいたのは、全てのシーンを繋げる通し稽古だった。ひとつずつ作り上げてきた各場面を通してやってみると、完成の形が目に見える。それと同時に新たな改善点や欠けている部分も浮き彫りになり、今後の練習を充実させるために大切なお稽古なのだ。

朝から踊り続けている出演者の皆さんは汗を拭き、水分補給をしながらも、通し稽古の直前まで念入りに踊りを確認していた。疲労は増しているはずだが、それでもやはり笑顔が絶えない。

19人のパワー、爆発

「始まり」を予感させるオープニングミュージック。全員がシックな雰囲気で踊り出したかと思いきや、ダンサーのパワーが一気に爆発した。あっという間に力ずくで『2STEP』の世界へ引き込まれていく。

プロローグから爽快で激しいナンバーが数曲続き、舞台はどんどん加速していく。宝塚歌劇OGは、男役時代に鍛えた底力を発揮し、勢いを失わずに踊り続ける。そしてどれだけアップテンポになってもGANMIのメンバーの足取りは重々しく、力強い。ステップを滑らせることなく、細やかな一歩まで踏みしめて踊る。身体の重心が揺るがないからこそ、軽やかな腕の動きが目を見張るほど美しい。

たくさんのナンバーが連なる通し稽古では、出演者の様々な顔が見えてくるのがとても面白い。ミュージカルや大人数のレビューの舞台を多く経験している宝塚歌劇OGの皆さんは、踊っている時以外も見る人を楽しませてくれる。他のダンサーが踊る姿を見つめたり、振りの無い一瞬だけ佇む時も、とても表情豊かなのだ。

そしてまた、宝塚歌劇OGが7人だけで踊るナンバー「New World」は、GANMIと一緒のシーンとは雰囲気がガラリと変わった。全員が元男役というキャリアを強みにするといっても、ただパワフルで直線的なダンスではない。しなやかな妖艶さが、宝塚歌劇OGの新鮮な一面を見せてくれる。

GANMIのメンバーのみのダンスシーンは、まさに圧巻の迫力だった。フロアを使ったアクロバティックなステップから、細かい動きを刻み、しなる曲線を見せるまで、あらゆる表現で緩急をつける。まさに「自由自在」といったダンス。

ショーの中盤になり、舞台の様子が大きく変わる。ダンスシーンの連続かと思いきや、楽しく始まったお芝居のような場面にわくわくした。大道具や小道具でシーンの設定を作り、ダンサーたちが役になり切って踊るのはGANMIならではの魅力的な演出だ。

ここで活きるのは、出演者各々のキャラクター。演技をするうち、ダンサーの個性と温もりが滲み出てくる。演じている役柄の向こうに等身大のダンサー本人が透けて見えるのは、舞台の魔法のようなものなのかもしれない。そう感じるほど、18人の見せる身体の表情に心を惹きつけられた。

このシーンで見逃せないのは、今回の公演で振付に初挑戦する、湖月わたるさんのパフォーマンスだ。湖月さんは宝塚歌劇団で星組トップスターを務め、卒業後は多くの舞台に出演してきた。お芝居、歌、そしてダンスと、湖月さんの幅広い表現力がふんだんに発揮された、楽しくてクールな場面。

お稽古を真剣な眼差しでチェックしているスタッフの方々からも、思わず大きな感嘆のため息が聞こえてきた。

『2STEP』の姿が見えた

「DANCE LIVE」と聞くと、抽象的なダンスシーンが連続する作品が思い浮かぶが、この通し稽古を見ているうちにその認識はすっかり変わった。19人の出演者とは思えないほど密度の濃いステージは、様々な演出と音楽、振付とダンサーの個性が目一杯詰まっている。

宝塚歌劇のスタンダードナンバー「すみれの花咲く頃」では新鮮なタカラヅカ流ダンスに心躍り、GANMIの真骨頂「学園天国」では興奮し過ぎて立ち上がりそうになり……一人の観客としてすっかり楽しんでいた。

シーンの繋がり方や舞台転換を細かく確認しながらも、出演者の皆さんは全力で踊っていた。その熱い気迫に心を掴まれて、気がつけばもうラストシーンだった。

通し稽古では、自分のパフォーマンスと皆のパフォーマンスを広い視野で見ることができるものだ。自分のダンスと向き合って練習を積み、ふと目線を上げると一緒に踊る仲間たちが懸命に汗を流している。異なるキャリアとダンスを携えて集まった出演者たちが「共に踊る」、その喜びと楽しさが伝わってきた。

2STEP』は、ここからさらに進化する。いよいよ迫る初日に向けて、スタッフと出演者は心を昂らせている。

取材・文=早花まこ

GANMI×宝塚歌劇 OG