
ニワトリの卵は人間にとっては欠かせない食材となっている。だが、それを育てている養鶏場では、日々生まれたばかりのオスのヒヨコが生きたま殺処分されるという、恐ろしい現実がある。
もしも卵が孵る前にヒヨコの性別を鑑定することができれば、オスのヒヨコがこんな悲しい運命のたどらなくてもう済むかもしれない。
そこでカリフォルニア大学デービス校の研究チームが考案したのが、卵のニオイを嗅いでヒヨコの性別を判別する方法だ。
ふだん卵や鶏肉を食べている消費者としては認めたくないが、目をそむけたくなるような現実がある。
養鶏産業では、それはオスのヒヨコが生まれると、直ちに殺処分されてしまうということだ。
オスのヒヨコにはあまり市場価値がない。成長しても卵を産まないし、食肉にするにしてもメスに比べて成長が遅く餌代がかかる。だからオスのヒヨコのその多くが巨大な高速粉砕機に入れられ、粉砕されている。
こうした残酷なやり方には批判の声も多く、たとえばドイツは世界に先駆けて2022年からヒヨコの大量殺処分を禁止している。
だが現実に悲しい運命の下に生まれるオスをなくすには、まだ卵の段階から生まれてくるヒヨコの性別を鑑定できなければならない。
[もっと知りたい!→]もうオスを殺さなくていい。孵化する前にヒヨコの性別を鑑定する画期的方法が考案される(ドイツ)
これまでのオスとメスの判別法は完璧ではなかった
今のところ、その方法は主に2つある。
1つは、卵のカラに小さな穴を開け、卵液を採取して分析する方法。もう1つは、ハイパースペクトルカメラで卵のカラを透かして胚を観察する方法だ。
しかし、どちらも完璧ではない。卵液を分析する機器はまだまだ高価だし、ハイパースペクトルカメラでは卵内の胚がかなり成長してからでないと性別を鑑定できない。

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卵のニオイでヒヨコのオスとメスを判別する新技術
そこでカリフォルニア大学デービス校の科学者は、もともとは卵をつかむための吸盤を改造し、これで卵のニオイを嗅ぎ分けて性別を調べる方法を考案した。
もう少し説明しよう。ニワトリの卵の中に胚が作られると、そのカラから性別に応じた「揮発性有機化合物(VOC)」が漂いだす。その成分を分析することで、中の胚がオスかメスか鑑定するのだ。
これまでの実験では、8日目の胚であっても、たった2分間ニオイを嗅ぐだけで、性別を8割以上正しく判定できたとのこと。
改良が進めば、サンプリング時間も正確さもどちらも大幅に改善されると期待されるそうだ。

卵をあつかう吸盤を改造したデバイス。カラから漂うニオイを集めて、オスかメスか判別する / image credit:om Turpen, Sensit Ventures
卵がオスのものとわかば孵化させる前に食用や肥料用に
もし卵がオスのものだった場合、中身がヒヨコに成長する前に食用や肥料用の卵として出荷すればいい。これで、せっかく生まれたのにすぐに殺されるという残酷な運命を防ぐことができる。
カリフォルニア大学デービス校のスピンオフ企業「Sensit Ventures社」は、現在このシステムの商業化に取り組んでいるとのことだ。
この研究は『PLOS ONE』(2023年5月22日付)に掲載された。
References:Active sampling of volatile chemicals for non-invasive classification of chicken eggs by sex early in incubation | PLOS ONE / Egg-smelling tech may keep male chicks out of the grinder / written by hiroching / edited by / parumo

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