今年の4月に入社したZ世代の社員が現場に配属され始める5月。初めての連休を経てモチベーションが低下しやすいこの時期は、新入社員の早期離職が懸念されます。では、新入社員の離職を阻止するにはどうすればよいのでしょうか? 1日たった5分でできる指導方法をマクドナルドの元教育責任者・有本均氏が解説します。

初めての連休明け…新入社員の早期退職が増える5月

コロナ禍を経て、今年は新入社員の採用人数を増加させた企業が増えました。社会人生活に胸を躍らせたZ世代の新入社員も入社時研修を終え、現場に配属されている時期でしょう。この時期は、初めての長期休暇を経て、モチベーションが低下しやすい時期です。

人手不足が深刻な日本社会では、優秀な人財を採用することはますます困難な状況になっています。そのため、せっかく採用した新入社員の早期離職を阻止することは経営するうえで非常に重要です。

特に筆者がクライアントとして多く抱えるサービス業の現場では以前から人材不足が深刻化しており、最近では省人化ロボットを導入する企業も増えました。するとどうでしょうか。人を少なくしたからこそ少数精鋭でなくてはいけない状況となっています。

この状況では、1人がカバーしなければいけない範囲が大きくなるので、抜けたときの痛手が大きくなり、ますます離職を防止する需要性が高まっています。

“1日5分”新入社員と話す習慣を

Z世代の新入社員は、働きやすい会社かどうかを重視し、職場に人間関係のよさを求める傾向にあります。つまり、指導者が新入社員とよい関係を構築することは、早期離職を阻止するうえで非常に重要です。

よい関係を構築するために、まずは1日5分でも時間を取ってお互いを知ることから始めるとよいでしょう。その際に、新入社員と以下について話し合いましょう。

・なににモチベーションを感じるのか

・将来どんな仕事をしたいのか

・困っていることはないか

これらを話し合うことで新入社員に安心感を与えることができます。

ただし、いろいろと聞きたいからと尋問するのではなく、教える側も自己開示をしていくことが関係性を作るうえで大切です。新入社員に知識やスキルを教えていくのと同時並行で、関係性の構築を指導者が意識して進めていくことが、チームとして成果を生むうえでも成功の近道です。

これは、マサチューセッツ工科大学ダニエル・キム教授が提唱した「成功循環モデル」でも有名な理論で、よい成果を生むためにはメンバーの「関係の質」を高めることから始める必要があります。

部下が離職しにくい上司=「褒め上手」な上司

また、現場に配属され、思っていたことと違うと感じたり、無力感を感じたりすることも、離職する大きな理由です。日々目標を持ち、自己成長を感じていれば離職しにくくなります。育成カリキュラムのようなものがあれば、できた部分に印を付けて徐々に進歩していることを可視化してあげるのもよいでしょう。

部下が離職しにくい上司は、部下のモチベーションを上げることが上手な傾向にあります。たとえば、1日数分でも部下の様子を観察して、よい行動をメモしてフィードバックしてあげることも有効です。

仮にできていない部分があったとしても、「合格じゃないけど、昨日よりはよくなっている」といった形でポジティブに変換することが大切です。ネガティブな言葉で否定されたと感じるとモチベーションが低下し離職に繋がりやすくなります。

日々できることの幅が広がり、それが周りに認めてもらっていると感じさせることで、「このチームが自分の居場所だ」と感じてもらえるのです。

長年企業の人財育成に携わってきた筆者の経験からしても、Z世代の新入社員が離職する1番多い理由は、職場の人間関係です。コレだけを行えば離職がゼロになるという必殺技はありませんが、ちょっとしたコミュニケーションの工夫で、新入社員に成長意欲や自己重要感を感じさせ、早期離職を減らすことができるはずです。

有本 均

株式会社ホスピタリティ&グローイングジャパン 代表取締役会長

兼グローイングアカデミー学長

(※写真はイメージです/PIXTA)