MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、ロッキーと死闘を繰り広げたアポロの息子が主人公の「クリード」シリーズ第3弾、「ジョジョ」の人気キャラクター、岸辺露伴ルーヴルを舞台に謎解きに挑む極上サスペンス、ビデオテープに収められた父との思い出を振り返るヒューマンドラマの、過去と向き合う主人公を描く3本。

【写真を見る】クリードを演じるマイケル・B・ジョーダンが初監督に挑んだ(『クリード 過去の逆襲』)

■第1作のロッキーにも重なって見える…『クリード 過去の逆襲』(公開中)

ボクシング映画の金字塔「ロッキー」シリーズを受け継いだ「クリード」最新作。引退し家族と平穏な日々を送っていたアドニス・クリードは、幼なじみデイムとの再会を機に封印した過去の記憶に悩まされる。ロッキー二人三脚で強敵に挑む姿を描いてきた本シリーズだが、今作で描かれるのは絶対王者を経たアドニスがトラウマに対峙する物語。父アポロと師ロッキーのDNAを受け継いだ稀代の天才から一転、過去の過ちに怯えながらもがき苦しむその姿は、二流の負け犬ボクサーがチャンピオンに臨む第1作のロッキーにも重なって見える。

本作で主演のマイケル・B・ジョーダンは監督を兼任。日本のアニメの大ファンである彼が「NARUTO -ナルト-」や「はじめの一歩」にインスパイアされたというボクシングシーンも圧巻で、「ロッキーサーガでも群を抜くドラマチックな作品になった。(映画ライター・神武団四郎)

ほのかに甘くせつない記憶に浸るセンチメンタルな露伴の姿…『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』(公開中)

人を「本」に変えて、その人物の人生すべてを文字で読むことができる特殊能力を備えた天才マンガ家、岸辺露伴。第3期までドラマが放送され、中毒性のある独特な世界観にハマる人が続出した「岸辺露伴は動かない」制作陣による劇場版がついに公開。本作はドラマの制作陣が再結集し、キャストには露伴を演じる高橋一生、露伴の担当編集を務める泉京香役の飯豊まりえに加え、謎めいた女性、奈々瀬役に木村文乃、若き日の露伴役でなにわ男子の長尾謙杜が出演する。

原作は2009年にルーヴル美術館から依頼を受け、荒木飛呂彦が描き下ろした同名読切作品。露伴と泉が取材のためにルーヴル美術館を訪れて、“この世で最も黒く、最も邪悪な絵“の謎を追う。シャンゼリゼ通り、エトワール凱旋門などパリのさまざまな名所の中に身を置いても、違和感なくすんなり溶け込んでいる露伴の存在感はさすが。作品全体としても、むしろいままで以上にクラシカルで“日本的“な怪異世界のムードが濃厚に漂っているのがおもしろい。漫画家デビュー間もない17歳の露伴と、本作の新たなヒロインである奈々瀬とのなれそめも見どころだ。いつも人を食ったような態度の露伴に、こんな初々しく、ナイーヴな時代があったとは…!ほのかに甘くせつない記憶に浸るセンチメンタルな露伴の姿と、時空を超える運命を描いたスケール感は映画版ならではだ。(映画ライター・石塚圭子)

■見たことのないほど、眩しくて、危うく、儚げな映像…『aftersun/アフターサン』(公開中)

離れて暮らす父と娘が久しぶりに再会したリゾート地でのバケーション。なんてことのない過去の思い出映像がどうしてここまでせつなく、思いがけずドキドキが止まらないのか。20年前、11歳のソフィー(フランキー・コリオ)は恋に恋するお年頃だった。見るもの全てが輝いて見え、これからの人生に興味津々。そんな成長盛りの娘を前に現在のソフィーと同じ年頃の父はどんな思いでいたのだろう。

大人になったソフィーがいまの目線で見るからこそ、なんとなくわかる父の戸惑い、不安…。「子を持って知る親の恩」ではないが、胸中をほとんど語ることなくビデオに残した表情だけで、複雑な内なる感情を訴えかけてくる父親役のポール・メスカルの繊細な演技がなかなか引くことのない余韻をもたらす。ソフィーがこれまでに何度もビデオを見返し、その度に発見があったように、何度でも繰り返して見たくなる。見たことのないほど、眩しくて、危うく、儚げな映像。(映画ライター・高山亜紀)

映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。

構成/サンクレイオ翼

栄光を掴んだクリードの前に封印したはずの己の過去が立ちはだかる『クリード 過去の逆襲』/[c] 2023 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All rights reserved.CREED is a trademark of Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All rights reserved.