サラリーマンといっても給与事情は人それぞれ。たとえば「大卒で正社員」という立場は一緒でも、驚くほど高給だったり、逆に驚くほど薄給だったり。そんなサラリーマンの頂点と底辺を比較すると、どれほどの差があるのでしょうか。みていきましょう。

2割が貯蓄なし…「貯蓄額>借入額」となるのは50代になってから

あったら、あるだけ使ってしまう……貯蓄が想像以上に難しいことは、誰もが感じていること。そこで気になるのが、「他の人はどれくらい貯めこんでいるのか」ということ。自分が平均以上なのか、それとも平均以下なのか。

厚生労働省『2019年 国民生活基礎調査の概況』で貯蓄状況を尋ねたところ、「貯蓄あり」と回答したのは81.9%。約2割が「貯蓄なし」と回答しているのは驚きです。

1世帯当たりの平均貯蓄額は1,077万円。貯蓄額で最も割合が多いのが「500万~700万円」で9.3%。「1,000万~1,500万円」も僅差の9.2%。さらに「3,000万円以上」という回答は8.9%もいます。「みんな結構貯めこんでいるなあ……」と焦る気持ちが大きくなった人も多いのでは。

次に借入についてみていきましょう。「借入なし」は63.9%、「借入あり」が28.5%。1世帯当たりの借入額は425万円で、最も割合が多いのは2,000万~3,000万円」で5.0%でした。

また世帯主の年齢別に、1世帯当たりの平均貯蓄額と平均借入額をみていくと、40代までは貯蓄よりも借入が上回り、「貯蓄額>借入額」となるのは50代になってから。会社員であれば給与がピークに達する一方で、住宅ローンの返済や子どもの教育費の目途がつく人も徐々に増えていく頃。定年後の生活に向けて、資産形成のスピードをもう一段上げようとしている人も多い年齢なのではないでしょうか。

【世帯主の年齢別「1世帯当たりの平均貯蓄額/平均借入額】

20代:179.8万円/248.0万円

30代:530.0万円/1071.1万円

40代:650.9万円/1,002.7万円

50代:1075.4万円/546.8万円

60代:1461.7万円/213.6万円

70代:1,233.5万円/107.5万円

出所:厚生労働省『2019年 国民生活基礎調査の概況』より

※数値左:平均貯蓄額、右:平均借入額

正社員の平均給与は50代で月41万円…底辺と頂点の給与差は生涯で2億円にも

家計が黒字に転じる50代。前出のとおり、会社員(正社員)であれば給与もピークに達する年齢です。サラリーマンであれば、20代前半で月22.0万円、年収340万円だったのが、ピークとなる50代後半では月収で41.6万円、年収で674万円。

もちろん、これは平均値。給与の分布でみてみると、50代後半、上位10%であれば、月収66.4万円。一方で下位10%だと23.4万円。大卒の初任給とほとんど変わりません。

【年齢別:サラリーマン「下位10%」と「上位10%」の月収】

20~24歳:18.0万円/26.8万円

25~29歳:20.0万円/33.2万円

30~34歳:21.2万円/40.2万円

35~39歳:22.3万円/48.4万円

40~44歳:23.3万円/53.7万円

45~49歳:23.8万円/58.3万円

50~54歳:24.0万円/64.0万円

55~59歳:23.4万円/66.4万円

出所:厚生労働省令和4年賃金構造基本統計調査』より

※数値左:正社員の月収下位10%、右:正社員の月収上位10%

「ずっと底辺をいくサラリーマン」と「ずっと頂点を極め続けたサラリーマン」。生涯年収の差は2億円近くにもなります。給与格差は、そのまま年金格差に。仮に20歳から60歳まで正社員として働いた“負け組”と“勝ち組”がいたとしたら、厚生年金部分はそれぞれ7.3万円、17.1万円。現役時代の給与差ほどではないとはいえ、月に約10万円、1年で120万円、20年で2,400万円もの差になります。

――俺だって、正社員で頑張ってきたはずだよな……

プライドはズタズタ、思わず絶望してしまうほどの格差です。

正社員でも給与・下位10%だと、年金額は手取りたったの11万円程度に

正社員とはいえ底辺のサラリーマンの場合、年齢を重ねても大卒初任給と同じ給与水準。生活は常にカツカツで、貯蓄もままならず……前出の「貯蓄がない」と回答した2割のなかには、このようなサラリーマンも多いのではないでしょうか。

国民年金と合わせても、月13万〜14万円。手取りは85〜90%となるので、実際に手にするのは、11万~12.5万円ほどになるでしょう。これが老後の生活費となります。

ちなみに生活保護の基準となる最低生活費は、東京23区・65~69歳のひとり暮らしで13万0,580円。それをも下回る年金額というわけです。もし貯蓄もなく、生活が苦しい……というならば、「最低生活費-年金の手取り額」分の生活保護費が認められる可能性は十分にあります。

正社員であっても給与は天と地ほどの差があり、格差はそのまま年金差にもなります。現役時代、下位10%であり続けたら「老後は生活保護の水準以下」というのが現実です。

(※写真はイメージです/PIXTA)