ユニットコンビ「たりないふたり」として数々の漫才を生み出した、オードリー若林正恭南海キャンディーズ山里亮太の半生を基にしたドラマ「だが、情熱はある」(毎週日曜夜10:30-11:25、日本テレビ系)。5月28日放送の第8話で、山里がしずちゃんの仕事をもみ消そうとした「フラガール事件」が描かれ、「1秒ごとに山里株が下がる」など、彼の嫉妬心にドン引きするに視聴者が居れば、「気持ちはわかる」と同情する視聴者も居て、Twitterのコメント数は加速。今週も「#だが情熱はある」がトレンド1位となった。(以下、ネタバレを含みます)

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■ついにブレイクして大忙しの南海キャンディーズ

このドラマは、若林と山里の半生を基にした、“ほぼ実話”の青春サバイバルストーリー。“極度に人見知りな超ひねくれ男”(若林)と、“妬み嫉みの固まり男”(山里)、そんなたりない2人の友情物語でもないし成功物語でもないが、もがきながらも“情熱はある”人生を描いていく。

南海キャンディーズは、「M-1グランプリ」準優勝をきっかけに、一気にブレイク。山里(森本慎太郎)としずちゃん(富田望生)は、休み無く埋まったスケジュールを大阪と東京を行き来しながらこなす日々。今まで冷たい態度だった人々が手のひら返しで接してきたり、街でも声をかけられたりして、山里が思い描いていた生活が、ついに現実となった。

今が一番大事な時期――山里は、しずちゃんをいかにヘンな子に見せるかがコンビで生き残っていく大事なポイントだと考えていた。飽きられたら終わり。山里は、彼女が書いたアンケートの内容をチェックし始めた。自分を棚に上げて他人を思い通りにしようとする悪いクセだ。

しずちゃんにオファー偏り、コンビ内格差が…

山里の心配をよそに、しずちゃんの需要は増え続け、コンビ内格差が生まれ始めた。「今のこの状況は、自分が死ぬほど努力して渾身のネタを作ったおかげだ」と自負がある山里は面白くない。次第にしずちゃんにツラく当たるようになっていった。

山里は、しずちゃんに「“得体の知れないヘンな人間”って自覚を持て。カメラが回ってない時も素を出すな」と強要し、「ワタシ、フツーの人間やし…」とささやかに反論した彼女をネチネチと責め立てた。そして、「でも…」と言った彼女に、「何? でも私の方が仕事あるし、とか言いたいワケ? ネタ考えてんのはオレなんだからさぁ、コンビとしてのスタンスは守ってよ!」と、山里は嫉妬丸出しでキレるのだった。

しずちゃんにやって来た映画の大役オファー

コンビ仲はどんどん悪くなり、漫才も全くウケなくなってしまった。客のアンケートは「全然面白くなかった」「期待外れ」などの酷評ばかりだった。何度も書き直してやっと完成した「M-1」のネタを超えるものは、簡単には作れないのは自覚している。でも、忙しくて時間が無い中で作った新ネタがウケないのは、しずちゃんが忙しくて稽古できないからで、彼女がもっと頑張って練習してくれれば…と、またまた自分を棚に上げて他人のせいにした。

そんな中、しずちゃんに映画「フラガール」のオファーが。4番手の大役だ。台本を見せながら「これが上手くいけば、南キャンはもっと上に行ける」と話し始めたマネージャー・高山(坂井真紀)の言葉を遮って、「断ってください! まだしずちゃんは知らないんですよね?」と山里は言った。

■「しずちゃんにボクを引き上げる力は、無い!」

高山は、ひがむ山里を、彼女の知名度が上がれば、山里も引き上げられる、と説得する。だが山里は、「ボクがしずちゃんを引き上げる事は出来ても、しずちゃんにボクを引き上げる力は無いです!」と、驕り高ぶった発言をした。しずちゃんのプラスになるとわかってて断れ、と言うのは「ボクとしずちゃんの差が広がるだけだからです。ネタはボクが書いてるんですよ。頑張ってるのは、僕です!」という激しい嫉妬心からだった。

「今はしずちゃんにチャンスが来てるだけ」と高山が言っても聞かず、「高山さんは、しずちゃんが売れたら、それでいいんですもんね」などとひねくれまくる山里。高山は、山里の小ささに落胆した。

山里の抵抗は無視され、しずちゃんは「フラガール」に出演するのだが、もしこのオファーがもみ消されていたら、彼女が蒼井優と繋がり仲良くなる可能性は低く、山里は蒼井と結ばれなかったかもしれない。そして、この結婚をきっかけに、南キャンのコンビ仲も劇的に改善されたので、山里としずちゃんは今でも冷え切った関係を続けていたかも。「フラガール」は、今となってはいろんな意味で運命を左右した作品だ。

■「いつか、みじめな感情が輝く時が来る」

ある日、山里は1人でプロデューサーの島(薬師丸ひろ子)と打ち合わせをしながら、時間が無くて新たなアイデアが浮かばない事、そして、頑張ってない者が頑張ってる人間をどうして批判できるのか、など、今の想いを訴えた。すると島は、「今感じてる不平不満、怒り、妬みが、絶対将来の糧になる。そんな表に出せないみじめな感情が、きっと輝く時が来る」と言った。「みじめさが輝く…そんなの無いですよ」と信じない山里に、島は「そうかなぁ?」と言い、「いつかそういう仕事がしたいね」と告げるのだった。

この数年後、島は山里と若林を会わせて「たりないふたり」を仕掛ける。そして、2人の負の感情をベースにしたいくつもの名作漫才が生まれることになるのだ。

◆文=鳥居美保/構成=ザテレビジョンドラマ部

※高橋海人の「高」は、正しくは「はしご高」

しずちゃん(富田望生)の需要が偏り、山里(森本慎太郎)は彼女に嫉妬しまくる…/(C)日テレ