
私たち人間も含む、どんな動物も大昔に存在していたある多細胞生物の子孫だと言われている。
その共通祖先からは2つの系統が誕生した。今に生きるあらゆる動物につながる系統と、その姉妹群につながる系統だ。
その姉妹群に最も近い現生動物は、クシクラゲなのか海綿動物なのか? これは数十年にわたり議論されてきた分類学上の謎だった。
『Nature』(2023年5月17日付)に掲載された研究では、この議論に決着をつけるべく、生物の遺伝子を染色体レベルで分析。その結果、強力な証拠を得ることができたという。
それによると、「クシクラゲ類(有櫛動物)」が姉妹群の子孫であることがわかったという。
あらゆる動物の共通先祖とされている多細胞生物からは2つの系統が誕生した。今に生きるあらゆる動物につながる系統と、その姉妹群につながる系統だ。
これまでその姉妹群の候補として挙げられていたのが、「クシクラゲ類(有櫛動物)」と「海綿動物」だった。だが、決定打にかけており、どちらがそうなのかはっきり断言するこはできなかった。
サンディエゴ沖で見つかったクシクラゲの仲間、アカカブトクラゲ
今回ウィーン大学のダリン・T・シュルツ氏らは、その謎を解明するべく、染色体レベルで遺伝子を調べている。
生物の遺伝子は進化が進むにつれてだんだんと変化していくが、それでもそれが位置する染色体自体は基本的に変わらない。
ところが時々、まるでトランプの2つの山札がシャッフルされるように、染色体から別の染色体へと遺伝子が移動することがある。
このようにある遺伝子が別の染色体に入り込んでしまうと、元通り戻ることはまずあり得ない。
だから、どの遺伝子がどの染色体にあるのか、いわば「染色体の地図」を生物同士で比較することで、それらの系統について重要なヒントを得ることができる。
あらゆる姉妹群の子孫はクシクラゲであることが判明
今回の研究ではこうした比較によって、あらゆる姉妹群の子孫はクシクラゲ類であろうことが明らかにされた。
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私たち動物(後生動物)とその親戚の染色体の地図には、いくつか共通する特徴がある。それがクシクラゲにも見られたのだ。
その一方、海綿動物などの染色体の地図は、編集されて少々違うものになっていた。
このことから、クシクラゲは動物の系統から枝分かれした姉妹群の子孫であることがうかがえるのだ。
こうした発見は、動物の系統樹全体をめぐる論争を解決する重要なものであるとのこと。
ただ今のところ、私たちとクシクラゲの共通祖先や、海綿動物との共通祖先がどのような姿をしていたかまではわからない。
それでも、こうした現生動物の系統を解きほぐす新たなヒントは大切なものだ。
「すべての動物が互いにどのように関連しているかを理解すれば、動物がどのように進化して動物になったかを理解するのに役立ちます」と、シュルツ氏は述べている。
References:Decades-old question surrounding the start of the tree of life could finally be solved | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo
追記(2023/05/29)誤字を訂正して再送します。

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