毎年、手元に届く「ねんきん定期便」。将来の年金額の目安を知ることができ、老後のマネープランを組み立てるのに役に立ちます。一方で「こんなに働いているのに、年金、これっぽっち……」と言葉を失ってしまうことも。みていきましょう。

40年間働いても「年金、たったこれだけ……」

誕生日を迎える45歳のサラリーマン。いつもとはちょっと違う、特別な誕生日です。というのも、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」。いつもはハガキですが、45歳になるこの年は、A4版の封書で届きます。

自身の年金記録を記載した「ねんきん定期便」は、50歳未満であれば、「保険料納付額」「直近13ヵ月の月別状況」「年金加入期間」「これまでの加入実績に応じた年金額」が記されたハガキが手元に届きます。ただ、35歳と45歳は特別版。いつもの記載事項に加えて、全期間の月別状況が記されています。

もし20歳で社会人となり、サラリーマンの平均給与を手にしてきたとしたら、45歳で手にする「ねんきん定期便」には、厚生老齢年金として月々5.6万円を手にできると記されているでしょう。

45歳であれば、月収は平均38.8万円で年収は636万円ほど*1。年齢を重ねるごとに昇給して、会社員としてのピークに向けてまい進している頃でしょうか。そこで「将来の厚生年金額、月5.6万円」に衝撃を受け、「たったこれだけ……」と唖然とする人が多いといいます。

*1:厚生労働省令和4年賃金構造基本統計調査』より、学歴計、男性、従業員10人以上企業の場合

ただ、それは早合点であることは、外野のほうが気づくかもしれません。前述のとおり、50歳未満の「ねんきん定期便」で記されているのは、「これまでの加入実績に応じた年金額」。もし会社員を辞め、これ以上厚生年金保険料を納めなければ、手にする厚生年金額は月5.6万円のまま。このまま会社員を続けるのなら、その分、厚生年金額は増えていきます。

ではこれから先もサラリーマンの平均給与で働き続け、60歳の定年を迎えるとしましょう。そうなると、どこまで年金額を増やすことができるのか、気になるところです。

単純計算、厚生年金部分は月9.6万円。国民年金は満額支給だとすると月々16万円ほど。実際の手取りは、85~90%程度なので、13.6万~14.4万円となります。

一方、高齢者1人の1ヵ月の生活費は14万8,918円*2。年金だけで暮らすには、ちょっとだけ足りないくらいです。

*2:総務省『家計調査(2022年)』65歳以上単身男性の1ヵ月の消費支出

老後破産が起きやすい二大パターン

20歳から40年間、真面目に働いたとしても、年金だけで暮らすのは難しい……。

あくまでも平均的な値を用いた単純計算ではありますが、「どうも、年金だけで老後を暮らすのは無理らしい」という話は広く知られ、「働くのも、虚しい」とか「一生懸命働いても無意味」といった言葉が多く呟かれています。

金融広報中央委員会によると、単身60代で「将来に備えた貯蓄がある人」は7割、残り3割は「貯蓄なし」。また貯蓄ありの人の平均貯蓄額は1,960万円、中央値は950万円です。貯蓄があってもその1割は100万円未満ですし、3割以上が貯蓄額は500万円に届きません。悠々自適な老後を叶えられるほど余裕のある人は、限られた人だけだといえるでしょう。

どうも、想像以上に日本の老後は厳しいらしい……漠然とですが、そんな未来を誰もが予感しています。なかには、十分な貯蓄があったのにも関わらず、「老後破産」を迎えるケースも。そもそも年金収入が大半を占める高齢者の家計は、赤字になりやすい構造です。そこで老後破産が起きやすいパターンを確認しておきましょう。

①現役時代の金銭感覚が抜けない

現役を引退すれば、給与収入はゼロに。定期的な収入は「年金」だけという高齢者が過半数。さらに足りない分は、貯蓄を取り崩すというのがお決まりのパターンです。

それにも関わらず、現役時代の金銭感覚のまま、ライフスタイルを見直すことをしない人は意外と多いもの。確実に貯蓄は減り、しまいには恒常的な赤字状態に陥り老後破産に……。「そんな愚かな人、いる!?」と思う人も多いでしょうが、ライフスタイルを見直したり、生活水準を下げたりすることは、急には難しいもの。段階的にダウンサイジングしていくのが正攻法です。

②社会的に孤立している

特に仕事人間が多い男性の場合、定年後、プライベートで人と会うことはなくなり、社会的に孤立を深めがち。年金だけの生活になり経済的に心許なくなると、さらに孤立を深め最終的には老後破産に陥る(ッ老後破産に陥るまで、誰もSOSに気づかない)ことも。また社会的に孤立していると、詐欺などの犯罪に巻き込まれるリスクも高まります。社会的な孤立を深めることで、経済的に追い詰められたり、精神的に追い込まれたり……最悪の結果を引き起こす可能性があるのです。

高齢者のひとり暮らし=老後破産というわけではありません。しかし相談者がいないことが間接的に老後破産に影響を与えていることがあるのです。

(※写真はイメージです/PIXTA)