阪神タイガース

阪神タイガース埼玉西武ライオンズとの交流戦初戦(5月30日)に勝利し、2007年以来となる9連勝と球団記録に並ぶ月間19勝目をマークした。


■村上頌樹の特別な思い

この試合に先発し、今季5勝目を挙げた村上頌樹は特別な思いでマウンドに上がっていた。2年前のこの日、新人だった村上は同じ西武戦でプロ初登板を果たした。

結果は先発して三回途中5失点で降板。プロの厳しさを肌で感じた球場で、今度は成長した姿をファンに届けた。


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■持ち味は健在

8連勝と波に乗る阪神は一回、打線を牽引する1、2番コンビの活躍で先制する。試合開始直後だった。先頭の近本光司が西武・與座海人の初球を完璧に捉える。

打球は右中間フェンスを直撃し、虎のリードオフマンは快足を飛ばして一気に三塁を陥れる。中野拓夢も鋭いスイングで右翼線を破る三塁打で続いた。

わずか4球での先制劇に、村上もピッチングで応える。「少し緊張した」という苦い記憶が残る球場だが、この日も持ち味の制球力は健在だった。

一回、先頭の愛斗を二飛に打ち取ると、マキノン、外崎修汰は連続三振に仕留め、二回も3人で片付けた。三回は1点を失ったものの、四回には二死ながら三塁に走者を置いた場面で、昨年まで阪神に在籍した先輩の陽川尚将を迎えた。


■「もっともっとすごい応援を…」

「すごいバッターなので怖かったですけど、しっかり抑えられてよかったです」。最後は、この日も威力を発揮したフォークボールで空振り三振を奪った。

イニングを重ねる中でリズムを取り戻した村上は8回4安打1失点、9奪三振、無四球の好投でベンチの期待にこたえた。2年前、3ランを浴びた愛斗をこの日は4打数無安打に抑え、雪辱を果たした。

「チームを勢いづけられる投球をしたいと思っていたので、それができてよかったです。これからも、もっともっとすごい応援をお願いします」。ヒーローインタビューに応じる村上の言葉に、球場のボルテージは最高潮に達した。

■先発陣に欠かせない存在に

それにしても、昨年未勝利だった村上の活躍はめざましい。その名前を全国にとどろかせたのは、7回をパーフェクトに抑えた4月12日の巨人戦だった。

その後もホップ成分の高い140キロ台後半の直球を軸に好投を続け、今や阪神先発陣に欠かせない存在になった。

奈良・智弁学園高3年春の選抜大会では全5試合を1人で投げ抜き、決勝でサヨナラ打を放ってチームを優勝に導いた。東洋大へ進み、ドラフト5位で入団。身長1メートル75、体重80キロは投手としては決して恵まれた体格とは言いがたい。


■ファン投票昼間発表トップに

それでも球速以上にスピードを感じさせる直球や切れ味鋭い変化球が生きるのは、「それが自分の生命線」と自負する抜群の制球力があればこそだ。

5月30日に発表された「マイナビオールスターゲーム2023」のファン投票中間発表では、ノミネート外ながら9万3,822票を集めて先発投手セ・リーグトップに立った。ファンの期待は、日を追うごとに高まっている。


■執筆者プロフィール

前嶋光太郎1970年島根県出身。幼い頃からスポーツや芸能の世界に興味を持ち、高校ではミスタータイガース掛布雅之氏にあこがれて甲子園を目指した。

大学卒業後は新聞社に就職。警察や行政などを担当した後、スポーツ記者として野球やゴルフ、テニスなどを中心に取材。

ワールド・ベースボール・クラシックWBC)の取材が転機となり、プロ野球の魅力を伝えたいと2010年にフリーへ転身した。現在は大阪を拠点に、しばらく中断していた執筆活動を2022年末から再開している。

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(取材・文/Sirabee 編集部・前嶋光太郎

阪神タイガース、9連勝で球団記録をマーク マウンドに立った村上頌樹の特別な思い