佳境に入った今期ドラマ。依然、『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系)が高い注目度を保っている。軸はふた組の夫婦、建設会社の営業課で働くOL・吉野みち(奈緒)とカフェ店長の陽一(永山瑛太)、みちの上司でもある優秀な会社員の新名誠(岩田剛典)とファッション誌副編集長として働くバリキャリの楓(田中みな実)の物語。なのだが、その傍らで、武田玲奈演じるみちの後輩・北原華がグイグイと存在感を増している。そこで、改めて華の金言3選を振り返りたい。

【写真】あざとかわいいファッションも 武田玲奈演じる華

◆恋の種が芽生えたら、コンクリートでさえ突き破る

 みちと誠と同じ会社で働く、あざとかわいい後輩として登場していた華。仕事はさほどできるわけでもないのに(というよりおそらくそこまで仕事には力を注いでいないだけだろう)、こと恋愛ごととなると鋭い観察眼と、ズバズバと、しかし的確な物言いで、「人生何周目ですか、華パイセン!」と、ついていきたくなるオーラが回数を重ねるごとに強くなっている。

 思えば序盤から、華は予言めいた忠告を放っていた。第3話でのみちとのランチ。陽一が突然花を買って帰ってきたことを不思議がったみちが、そのことを華に話した際、男の気持ちは男に聞かなければ分からないとの流れから、永遠のテーマともいえる<男女の友情は成立するのか>話へ。

 このときのみちは、まだ誠とレス解消同盟の“仲間”という意識でいる。一応は。そこで、男女の友情など成立しないと言う華に対し、みちは誠を念頭に置きつつ、「華ちゃんはまだ若いね。人として好きっていうのないかな」と自信ありげに返す。しかし華は言うのだ。

 「いや、それ恋になるでしょ。“恋の種”ですよ」と。そう、人として好きというのは、もうすでに十分恋愛の種なのだと。そして「種から芽生えたら、コンクリートでさえ突き破りますからね。先輩は大丈夫かな。余計な芽を間引く強さがあるかな」と警告したが、この時点で、当のみちには刺さってはいなかった。個人的には男女の友情はあるだろうと思うが、みちと誠に関していえば、華の“恋の種”説はズバリ的中していた。

 このあとみちと誠は水族館デートへと進むことになる。第7話で楓がみちの存在を突き止めた、みちの笑顔が映りこむ写真をおさめた、あのデートへ。そして、すべてが始まった優しいキスへ。種はまんまと発芽してしまったのである。

◆日の当たらない恋をするには、それなりの覚悟が必要

 第5話では、ランチ時間にみち、華、誠が一緒にいたところに、楓が出くわす(みちにとっての)ハプニングが発生。できる女オーラ全開の楓の空気をふいに浴びて、あからさまに動揺してしまったみちを見た華は、その場からみちを移動させる。この時点で、みちは華に誠と好き合う仲になっていることを告白していない。しかし、当然、目ざとい華は感づいていた。

 「真面目なふたりがそっち(不倫関係に)いっちゃうんだもんな」と、前置きしつつ「あれ、いつか私じゃなくてもバレますよ。気を付けてください」と忠告し、さらに、「前にも言いましたけど(第4話)、日の当たらない恋は覚悟が必要なんです。これから進む道は、旦那さんも新名さんの奥さんも、周りを深く傷つけることを自覚してください。(中略)先輩がこれから進む道はいばらの道です」とはっきりとくぎを刺した。そのうえで、華の口からは、「それでも進むっていうなら私は応援しますけど」との言葉が続くのだ。むしろ、あなたに惚れてしまいます。

 さらに、もともとは「ニーニャ様」と華も誠を狙っていたはずで、それをみちが指摘すると、「新名さんのことなら私は先輩に負けた。それだけです」と返す漢っぷり。いや、惚れるでしょ(2回目)。


◆先輩ひとりだけが被害者なんですかね

 物語は後半へと突入。陽一とやり直そうと決めたみちだったが、第6話で陽一から以前おかした裏切りを告白されてしまう。第7話、どん底に落ちたみちは、カラオケボックスに華を呼び出した。「とことん話を聞いてあげます」と頼もしく宣言した華に、「私とはしないのに他の人とはするなんて」と不満をぶちまけるみち。無責任な後輩ならば、「旦那さんひどい!」と終始赤べこ状態だっただろう。しかし華は違う。

 これまでのみちの言動や、陽一が感じてきただろうプレッシャーなど、ここに至るまでにはいろんな側面があるに違いないことを察した華は、「そりゃ浮気がバレた旦那さんも罪だけど、でも先輩ひとりだけが被害者なんですかね」と投げかけるのだ。さらに翌日にも、「旦那さんって、そんなに悪いことしました? 先輩、気持ち分かるでしょ。浮気なんて現実逃避以外なくないですか?」と突きつける。

 それまで「自分ひとりが被害者」だったみち。しかし陽一も陽一で悩み、そこに自分がプレッシャーをかけていたこと、さらには「陽ちゃんも被害者だったこと」に気づく。狭~い1点しか見えなくなっていた相手に、ポンっと外から言葉を投げかけることで、その人が内省する機会を与えるってものすごいことでは? 余談だが、陽一との箱根旅行に行けなかったことを誠に悟られないために、華はみちが会社に持参するための箱根のお土産まで用意。言われたことへのアドバイスだけならいざしらず、この周到さは、やはり「人生何周目なんだ!」と思わざるを得ない。


◆第7話ではもうひとりの注目キャラからも気になるセリフが

 ところで、本作には華のほかにも非常に気になる人物がいる。当初、サバサバ系に映った三島結衣花(さとうほなみ)だ。彼女のことが分かるにつれ、サバサバ系どころか、むしろ繊細で実は相手に寄りかかりたい女性であることが見えてきた。彼女は、自分自身、恋に落ちるととことんまで落ちてしまうタイプだと、無意識にでもどこかで自覚しているからこそ、普段はさっぱりした女感を自分自身にも装っているように思える。そんな結衣花が、みちに裏切りを告白してしまった陽一に放った第7話のセリフも非常に印象的なものだった。

 「言えなくて苦しかったですか。言えてすっきりしました? 自分の心に刺さってた杭抜いて、代わりに奥さんにそれ刺しただけでしょ。それで奥さんいま血流してるんですね」。この言葉は、一見、妻側に立った言葉に見える。実際、みちは血を流しており、陽一は苦しみを抱え続けるべきだったように思う。だが、結衣花の場合、この言葉は、自分かわいさが根っこにあって生まれたともいえる。

 それが「奥さんに刺さったその杭、どうなるか分かります? 女は痛みが消えるまで黙って耐えるほど馬鹿じゃないから。今度はそれ、不倫相手の女に突き刺すんですよ。不倫は妻を変える」との言葉に透ける。現在、元不倫相手の妻から訴えられている結衣花。結衣花が吐いたのは、裁判のこともあり、自分が不倫してきた相手の妻に向けたものだったが、“不倫は妻を変える”は、今のところみちではなく、誠の妻・楓を表した言葉になった。

 それにしても、「結衣花の近くに華パイセンのような人がいればなぁ」としみじみ思う。ふたりが並んだ姿はあまり想像できないが、それでも結衣花が抱えている裁判の問題にしろ、相談できる相手が誰かしらいればと。さらに7回ラスト&次回予告編を見る限り、被害者意識に全フリ状態に陥っている楓にも、華の金言を送りたい。「あなたひとりが被害者なんですかね」と。ふた組の夫婦が、どういった結末を迎えるのかはまだ分からないが、なんにせよ、華の金言はまだいくつも飛び出しそう。最後まで、ありがたく胸に刻みたい。(文・望月ふみ)

 木曜劇場『あなたがしてくれなくても』は、フジテレビ系にて毎週木曜22時放送。

ドラマ『あなたがしてくれなくても』武田玲奈演じる華 (C)フジテレビ