ジャガーそっくりな「ディムラー」って? 「消滅」かと思ったら「休眠」だったイギリスの超高級車ブランドの正体

この記事をまとめると

■かつてはイギリスにも「Daimler」=ディムラーと呼ばれるメーカーが存在していた

■ディムラーは高級車ブランドであり、そのクルマイギリス王室にも納入された

1960年ジャガー傘下となり最高級グレードとしてその名が残っていたが現在は休眠状態

「Daimler」はドイツだけでなくイギリスにも存在していた

 ダイムラーといえば、2022年1月からはメルセデス・ベンツと社名を変更した、かつてのダイムラー社や、ダイムラークライスラー社、あるいはダイムラーベンツ社を思い出す人がほとんどだろう。そもそも同社の始まりは、1890年にエンジニアのゴットリーブダイムラーと、ヴィルヘルム・マイバッハなどによるチームが、ダイムラー・モトーレン・ゲゼルシャフト社を設立。同社が1926年に、カールベンツ1883年に設立していたベンツ社と合併し、ダイムラーベンツ社が誕生したことに始まる。

 だが、今回はダイムラー社というのは、じつはこれだけではなかったというお話。現在ではメーカーブランドも休眠状態だが、かつてはイギリスにもダイムラー、実際にはドイツダイムラーとの混同を避けるために、「ディムラー」と呼ばれたメーカーがつい最近まであったという話をしよう。

イギリス王室にも納入されていた「じゃないほう」の超高級車「ディムラー」

 イギリスでディムラー、正確にはディムラー・モーターシンジケートという会社が設立されたのは1890年のことだった。モーターシンジケートという名前からも想像できるように、同社はダイムラーベンツが生産したエンジンを、最初はモーターボートに搭載することをメインビジネスとしていた会社だった。

 1896年になると、ディムラーは社名をディムラー・モーターカンパニーと改め、コヴェントリーに本社を移転。ここから自動車の生産を本格的に開始する。

 高級感を極めたそのモデルイギリス王室にも納入され、ディムラーの名はイギリスからヨーロッパへ、そして世界へと轟くことになった。ボンネットに波状のデザインを採用し、さらにグリルの上部には冷却効果を高めるために縦筋を入れたフルーテッドグリルも、ディムラー車の新たなアイコンとなった。

イギリス王室にも納入されていた「じゃないほう」の超高級車「ディムラー」

 第二次世界大戦中には、軍用車の生産も行ったディムラーだったが、戦後の市場が求めていたのは高級車ではなく、よりコンパクトで安価な大衆車だった。経営状態が悪化したディムラーは、1960年にはジャガーの傘下に収まることになってしまう。

最高級グレードの名称としてなんとか存続していたが……

 ディムラーを手中に収めたジャガーは、それからしばらくディムラーの生産を継続し、1962年にはニューモデルV型8気筒2.5リッターエンジンを搭載したV8サルーンを発表。

 これによってディムラーも一時は安住の地を得たかのようにも見えたのだが、1966年にはBMCジャガーそのものを買収するという事態が起きてしまう。

 それでもディムラーブランドは、長らくジャガーの最高級グレードとしてその名がラインアップに残り、ジャガーXJ12のバッジエンジニアリング版である、ディムラー・ダブルシックスなどをリリース

イギリス王室にも納入されていた「じゃないほう」の超高級車「ディムラー」

 XJ6がベースとなるソブリンなどは、現在でもマニアには高い人気を誇っている。

イギリス王室にも納入されていた「じゃないほう」の超高級車「ディムラー」

 ディムラー・ダブルシックスの最終モデルとなったのは、1993年から1997年まで生産されたXJ40型ジャガーXJをベースとしたものだった。

イギリス王室にも納入されていた「じゃないほう」の超高級車「ディムラー」

 世界の自動車開発におけるテクニカルトレンドが電動化に向かっているいま、ダブルシックスのようなモデルが誕生する可能性が低いのはじつに残念に思う。

イギリス王室にも納入されていた「じゃないほう」の超高級車「ディムラー」

イギリス王室にも納入されていた「じゃないほう」の超高級車「ディムラー」

ジャガーそっくりな「ディムラー」って? 「消滅」かと思ったら「休眠」だったイギリスの超高級車ブランドの正体