「1人3850円だったので、4000円にしてます」。合コンの男性幹事から、コース料理の金額を伏せたうえで「幹事手当込みの額」を請求されたという女性のツイートが話題となりました。

合コンで「上乗せ」された金額を請求される人は珍しくないようです。弁護士ドットコムにも「合コンの幹事に騙されて多めに支払っていた」という相談が寄せられています。

相談者は幹事から「3500円コースで予約した」と言われたため、当日3500円を支払いました。しかし、あとから、実は1人当たり2000円のコースだったことが発覚。

幹事は当初「ぼったくり」を否定していましたが、証拠が明らかになると、事実を認めて返金すると言ってきました。

「返金どうこうよりも、正直、この行動を許すことができません。警察に言えば捜査してもらえるでしょうか」と憤る相談者。差額1500円×7人分の利益を受けようとしていた幹事は、詐欺罪に問われるのでしょうか。本間久雄弁護士に聞きました。

●立件には大きなハードル

——どのような場合に詐欺罪が成立するのでしょうか。

詐欺罪は「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する」(刑法246条1項)と規定されています。

詐欺罪が成立するためには、以下の4点が必要になります。

(1)欺く行為(欺罔行為)があり、その結果、
(2)被害者において「錯誤」(勘違い)が惹起されて、
(3)被害者が財産的処分行為をおこなって、
(4)行為者または第三者が財物の占有を取得する

——今回のケースの場合は?

本当は2000円コースであるにも関わらず、3500円コースであるかのように装ったことから、(1)欺罔行為があると言えます。

その結果、(2)合コン参加者が料理は3500円コースであるという錯誤が惹起され、(3)合コン参加者は、幹事に3500円を支払い(財産的処分行為)、(4)幹事はコースの差額分1500円を取得したことから、詐欺罪が成立すると言えます。

——では、幹事は処罰されるのでしょうか?

ただし理論上、詐欺罪が成立するとしても、実際に立件されて、幹事が罪に問われることとの間には大きなハードルがあります。

詐欺罪は、科料や罰金刑がなく、懲役刑のみが規定されています。1人あたり1500円程度の被害額で、被害者も仲間内に限られる今回のケースのような場合、前科前歴のない者(合コンに参加するような人ですから、まだ若く、前科前歴もないものと思われます)をいきなり起訴してしまうと、執行猶予付きとはいえ、懲役刑が科せられることになります。社会生活上大きな不利益を受けてしまうことになります。

刑事訴訟法248条は「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる」と規定しています。

つまり、証拠が十分にあって、起訴しようと思えば起訴できたとしても、検察官の判断で起訴しない(起訴猶予)ということが認められています。このことを起訴便宜主義といいます。

幹事の前科前歴にもよりますが、おそらく合コン参加者が幹事を刑事告訴しても、被害額などから考えて、起訴猶予となり、詐欺罪で処罰を受けることはないのではないかと思います。

【取材協力弁護士】
本間 久雄(ほんま・ひさお)弁護士
平成20年弁護士登録。東京大学法学部卒業・慶應義塾大学法科大学院卒業。宗教法人及び僧侶・寺族関係者に関する事件を多数取り扱う。著書に「弁護士実務に効く 判例にみる宗教法人の法律問題」(第一法規)などがある。
事務所名:横浜関内法律事務所
事務所URL:http://jiinhoumu.com/

合コン幹事「1人3500円です」→実際のコース代は2000円!無断で差額もらう行為は犯罪?