とても早口な同僚が入社してきた。早口なだけでなく、おしゃべり好きで情報量が多く、なんだか理解が追いつかない。悪い人ではないため話に合わせて相槌を打ってはいたものの、すぐに頭がパンクしてしまった花田さん。そんな同僚との距離感に悩む、井上まい(@omo_mai)さんの「大丈夫倶楽部」より「エイリアンコミュニケーション」を紹介しよう。

【漫画】本編を読む

■受け止めきれない同僚との会話。いっそのこと異星人だと思ってしまえばいい!?

主人公の花田もねは、困っていた。最近入社した同僚の海野さんが、恐るべきスピードで喋るのだ。花田さんは、雰囲気を壊さないように「ええ」「はい」「なるほど」と、相槌を打っていたけれど許容量を超えた。

そこで、自分の中で「この人は違う星の生命体だから、話がわからなくても大丈夫!」と思うように切り替えてみた。すると、まるでエイリアンが違う星の言葉で何かを喋っているように見える。

花田さんはそうやって自分の中でいい塩梅に折り合いをつけて、自分にとって大丈夫なスペースを見つけた。でも、同僚のことを異星人扱いしていいわけじゃないこともわかっていて、どうすればいいのか困っていた。

そんなある日、ランチを食べていると花田さんの上司が「おとなしいし、絶対やらないよね」と、決めつけるような発言をしてきた。間に入って「花田さんのことは、花田さんが決めます」と、ナチュラルにフォローしてくれたのは、海野さんだった。彼女を異星人だと思っている花田さんと、花田さんを1人の人として見てくれている差異に気づく。

――「性格が真逆の同僚を異星人と思う」。方法は違っても、やったことがある人も多いと思います。描いたきっかけを教えてください。

芦川の特殊な存在性を説明するためのエピソードとして、「隣人(異星人かも)」を想像しながら考えた話です。私はどちらかというと、自分が海野側の立場かもしれないと思う時があります。

――第5話の裏話があれば、教えてください。

エイリアン」という単語を使うにあたって、私自身は一般的な言葉と思っていましたが、もしかすると映画の固有名詞かも?と改めて調べ直した覚えがあります。

「大丈夫倶楽部」は、大丈夫をテーマに描く、読み切りタイプの日常漫画。「大丈夫になりたい、ほっとしたい願望を実際に長く持て余す時期が自分にもあり、ふとそれを作品に翻案して形にできそうと思えた」と、作者の井上さんは描き始めたきっかけを語る。「個人的には、言い聞かせるというより願って目指すようなイメージです」井上さんが言うように、「大丈夫」はそれぞれ落とし所が違うもの。だからこそ、自分の中でいいように落とし込むことができると、ホッとする。

うまくいかないこともあるけれど「大丈夫倶楽部」を読むと、大丈夫な気持ちになれるという読者の声が多いのは、余白のある結末がそうさせてくれるのかもしれない。「作品はあくまで可能性の提示で、大丈夫になったならそれはその方の自力によるものですし、読んで落ち込んでも期待通りにならなくても、一つの読書体験になれたらと思います」(井上さん)

「大丈夫倶楽部」は、現在マンガファイブで連載中。「このインタビューで答えたような心持ちで、最後まで描き続けたいと思っています。漫画は娯楽ですので、この作品に興味を持っていただいた方に好きに楽しんでもらえれば本望です」と、井上さんは結末までの思いを語ってくれた。

取材協力:井上まい(@omo_mai)

情報量が多すぎて、何喋ってるのかわかない!?/画像提供:「大丈夫倶楽部」(C)井上まい/レベルファイブ