まず、この動画を見てほしい。

 大半の人は、「なんなんだこの風邪の時に見そうな映像は」と思っていることだろう。これが今回紹介するVRパズルゲーム、『Squingle』だ。最初に話を聞いた時、私も「なんなんだこの映像は」と思っていた。

 そして最初に書いておきたい。私はVRが苦手だ。なぜなら疲れるから。私はパズルが苦手だ。なぜならゲームで頭を使いたくないから。私はサイケデリックな映像も苦手だ。なぜなら怖いから。そしてこのゲームは「VR+パズル+サイケデリックだ。

 なぜ、私はこの仕事を受けたのだろう?

文/ジスマロック
編集/クリモトコウダイ

『Squingle』Meta公式サイトはこちら『Squingle』Steamストアページはこちら

ゲーミングポンデライオン

VRもパズルも苦手だったのに、いきなり電子ドラッグみたいなVRパズルやらされて気が狂う_001
Meta Quest公式サイトより

 今から恐ろしいことを言おう。

 そもそも私は「パソコンにVRの機械を繋げる方法」すら知らなかった。初歩すら知らん。そしてなんと、あまりVRに興味のなかった私の元にわざわざMeta Quest 2とかいう最新鋭のVRマシンが送られてきた。このゲームのために、わざわざMeta Quest 2を送ってくれるのか……?

 二度言うが、私はVRが苦手だ。なぜなら付けていると疲れるからだ。ちょっとえっちなVRのビデオとかも、VR機能を使わずにスマホで見ているくらいだ。……しかし、これは仕事だ。プロとして、装着してみる。

 ……すげえ!
 Meta Quest 2ってこんな感じなんだ!
 まるでバーチャルの世界に来たみたいじゃないか!!

 ちょろいちょろいぞジスロマック
 お前はいつか、詐欺にでも引っかかるんじゃないか……?

 そこからいろいろセッティングを頑張った。まずMeta Quest 2セッティングを始める。コイツ、よく見ると丸くてかわいいフォルムをしている。色も白い。未来のアザラシのような形だ。これからは「メタちゃん」と呼ぼう。私は結構機械オンチなので、メタちゃんのセッティングに1時間くらいかかった。

 そしてMetaアカウントを取得したり、PCのグラフィックボードをアップデートしたり、Steamに「SteamVR」という専用アプリケーションを入れたり……いっぱいセッティングした。正直、私は自分自身が偉いと思う。なんて、なんて真面目な奴なんだジスロマックそしてこんなにセッティングを頑張って待ち受けているのがあのパズルなのか。もっと美少女に囲まれるゲームとかが良い。

 まぁいい! セットアップ完了! 『Squingle』、起動! 

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 タイトル画面のクセ。

 奥に入るヤツ、誰。太陽の中心にゲーミング人間が埋め込まれている。

 ……クソッ、すやすや寝てるんじゃない! この僕がゲームを起動してやったんだ! しかも本来は休みの土曜の午前にな! ちょっとは目を開いておかえりなさいませ、ご主人様!」の一言くらい発したらどうだ!?

 とりあえず「grab me」って書いてあるボタンがあるな。
 これを押せばメニュー選択画面に行くのか?

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 ああああああああああああああああああああああああああああああ

 ごめん。ごめんて。なんか「美少女が良かった」とか言ってごめんて。アイツ起きたらこうなるのかよ。起こしちゃいけない系エネミーじゃんかよ。いきなりラストバトルみたいな画面になってんじゃんかよ。

 いやすごいな、何これ? なんてたとえたらいいのこのクリーチャー? ゲーミングポンデライオン

 あ、ちなみに『Squingle』はこれが本当のタイトル画面です。ここからイージーモードのパズルか、ノーマルモードのパズルを選べますよ。後ろのクリーチャーもずっと待機してます。何を考えてこのタイトル画面にしたのか。タイトル画面制作者の精神状態が心配になる。どしたん? 俺でよければ話聞こか?

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スタート地点のぐにゃぐにゃをゴール地点のぐにゃぐにゃへ

 まぁ、もうタイトル画面イジリは良い。これ、パズルゲームだからな。
 パズルに入らなければ何も始まらない。

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 いやゲーム開始しても出てくんのかい。

 しかもしゃべってる。英語だから何言ってるのかわからん。日本語でおk。(筆者が英語版で遊んだだけで、日本語版もちゃんとあります)

 尖りすぎだろこのゲーム。パズルに到達するまでにだいぶ疲れてるんだけど。もうパズルよりこのクリーチャーとのアドベンチャーパートが気になり出してきてるよ。お前なんなんだ。ゼノギアスの終盤とかにこういう奴いなかったっけ?

 ……あまりにも気になったので、ちょっとストアページを調べてみた。どうやらこのクリーチャー自身が「女神スクイングル」らしい。おい俺めっちゃ不敬働いてるじゃねえか。しかも「美少女が良かった」が奇跡的に伏線みたいになってるじゃねえか! いやこれ女神のビジュアルじゃねえよ!

 もういい! 知らん! ゲームだゲーム!

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 端的に言えば、これは「スタート地点にあるぐにゃぐにゃを掴み、ゴール地点にあるぐにゃぐにゃまでボールを運搬していく」というパズルゲームだ。さらに端的に言えば、「異様にぐにゃぐにゃしたイライラ棒みたいな感じ。

 なんだかぐにゃぐにゃしたステージのぐにゃぐにゃした壁にぶつからないように、スタート地点のぐにゃぐにゃからゴール地点のぐにゃぐにゃまでボールを運んでいく。ステージの数もかなり多い。

 これを、VRで楽しむ。以上、大まかなゲーム紹介おしまい。

 最初はゲーム画面に面食らったけど、いざ触り始めて見るとこれが意外に悪くないゲームデザイン。なんつーんですかね、この「ぐにゃぐにゃ」感が想像以上にVRを駆使してていい感じっつーんですかね。

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 この画面を見てもらえるとわかりやすいかもだが、ちょこちょこと「立体的な操作を求められる」パズルがあったりする。つまり、ただ平面のコースの中でボールを動かすだけのパズルではない。

 前に出っ張っている道がある時は、ちゃんとコントローラーを前に押したり引いたりして、しっかり「立体的に攻略」しなくてはならない。ここが結構面白いというか、まさにVRのパズルでしか体感できないところなのだ。コースが立体的に設計されているのであれば、こちらもリアルで立体的な操作をしなくてはならない。

 そして当然ながら、プレイヤーの視界もVRである。つまりどういうことか。要は、「コースの構造を全角度から確認できる」ということだ。たとえば上記のコースのように、そもそもが立体的で「前に押したり、後ろに引いたり」の操作を要求されるコースの場合、ただ愚直に真正面から見ているだけでは「このコースがどんな構造なのか」がわかりにくい。

 そこで、こちらが視界を動かしてコースの構造を把握することで、より攻略がしやすくなる。ここもなんだか面白い。

 妙に言語化しづらい面白さなのだけれど、この「自分から首を動かしたり頭を動かしたりして、コースを把握しておく」という動き自体に面白さがある。本当に、リアルのパズルを触っているかのような楽しさだ。まさにバーチャルリアリティーパズル。

 以上、レビュー終わり。

 ……いやぁ、実に困った! これ以上紹介することがない!!

手首がおかしくなる

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 私は、ゲームのレビューが出る以上は最終的に何かしらの「プラス」が生まれるべきだと思っている。売り上げに繋がったり、何かしらの気づきがあったり、ちょっと笑えたり。だから、ただ文句を書いてあるだけのものはあまりよろしくないと思う。

 ただね、このゲーム、手首が痛いんすよ。

 さっき言った通り、立体イライラ棒の最中で「押したり、引いたり」する操作が求められる。しかも壁にぶつからないように。こっちが頑張って押したり引いたりしてる中で、ちょっと壁にぶつかるとゲームオーバーになる。

 この「押したり引いたりしながら、壁にぶつからないように動かす」という特殊すぎる操作、人生で一度も使ってこなかった手首の筋肉が摩耗している気がする。

 痛い。地味に痛い。激烈な痛みというより、ボディブローがじわじわと手首に刺さってくるようなこの痛み。まさか頭脳よりも先に俺の手首が根を上げると思わなかった。こういう時のために手首を鍛えておくべきだったのか。確かにデスク作業もゲームも手首は使うものだけれど、今まで痛みが発生しなかった手首の箇所に痛みが発生している。これはパズルじゃない! 手首との戦いだ!!

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 そして当然ながら、ビジュアルがサイケデリックなので徐々に脳がやられてくる。

 全てがぐにゃぐにゃしているので、こっちの頭もぐにゃぐにゃしてくる。溶ける。目が、頭が、溶けてしまう。つまり、長時間遊んでいると身体のいろいろな部分が溶けてくる感覚に陥る。

 小さい頃、私は毎年のようにインフルエンザにかかっていた。私とインフルエンザは、まさしくその年に一度きり出会える織姫と彦星のような関係だった。そしてインフルエンザにかかると、身体が重くなる。さらに、変な夢を見る。私はこのゲームを遊んでいて、インフルエンザと毎年激闘を繰り広げていたあの日々を、ふと思い出した。

 なぜ……なぜこんなゲームを作ろうと思ったのか!?

ある意味、「VR」の特性を使いこなしている

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 落ち着こう。一旦落ち着こう。

 やはりレビューというものは最終的にゲームを売る必要がある。だから、あまり私が苦しんでいる姿ばかり書いていたらみんながこのゲームを怖がってしまうではないか。いや実際怖がられるゲームではあるだろ。純粋にいちライターとしてこのゲームの開発者が何を考えていたのか聞いてみたい。

 特に……特にあのぐにゃぐにゃした壁に激突した時の「ぐにゃっ」とした感覚。あれがおそろしい。しかも「ぐにゃ」と同時にゲームオーバーになるから、己が脳と手首へのダメージも倍々。自分の手首をいじめたいマゾ鍛えたい方にはオススメのゲームかもしれない。

 だけど、その分クリアした時の「よっしゃあ!やってやったぜ!ざまあ見やがれ!!」という嬉しさも他のパズルゲームに比べると倍くらいある。なぜなら自分の身体にダメージが入っているから。まさに己を賭してパズルゲームと戦っている。

 そうか、そういう意味で考えてみれば、これは結構「VRのパズルゲーム」としても合理的ではないか? ある意味、VRの「より体感的にゲームを遊ぶ」という特性をかなり活かせているのではないだろうか?

 パズルゲームで自分の肉体にダメージが入る……これは確かにあまりなかったゲーム性かもしれない。まぁ、万人受けするかは置いといてだな。

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 あぁ、もしかしたら「ということは、難易度が高いゲームなのか?」と懐疑的になっている方もいるかもしれない。私としては……そんなに激しく難しい訳ではないと思う。ただ、あまりに未知のゲーム体験すぎて身体が追い付いていないだけなのではないだろうか。

 だけどご安心を。しっかり「easy play」というカンタンモードも用意されている。イージーモードを起動するためにはタイトル画面に戻る必要がある。まりあの女神ともう一度ご対面することになる。なぜ! なぜだ!? なぜタイトル画面にコイツを配置したのか!?

 まぁど真ん中にヤツがスタンバっているのだから本当にどうしようもない。イージーモードを用意する心の暖かさを兼ね備えながら、なぜこんなタイトル画面にしてしまったのか。情緒不安定すぎる。

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中にはそもそもボールが勝手に動いているので、その動きに合わせながら運搬しなければならないものもあったりする。

 このイージーモードでは、何度か壁に激突してもゲームオーバーにならないようになっている。だから、ある意味手首にもイージーなモードと言える。そしてあの「ぐにゃぐにゃ」感は、多分そのまま存分に味わえる。本当にちょっとイージーになっている気がする。

 ぐにゃぐにゃしたパズルを解く。立体的な視点でパズルを把握する。実際に押したり引いたりしながらイライラ棒じみたことをする、VRでしかできないパズル体験がここにある。そして手首と脳にダメージを負い、謎のクリーチャーとイチャイチャする。これが、『Squingle』というゲームだ!

 VRサイケデリックパズル『Squingle』は、Meta Quest公式ストアやSteamなどで配信中!

 DL専用かつVR専用タイトルなので、そこはお気をつけください。記事内のゲーム画像は英語版でしたが、現在は日本語対応版も発売されています。

 あのクリーチャーが何をしゃべっているのか理解できますね。ちなみに冒頭で「セッティングに死ぬほど頑張った」と書きましたが、どうやらあそこまでセッティングしなくても良かったようです。くそ……なぜオレはあんなムダな時間を……

 とにかく「セッティングもそんなに大変ではない」ということです。私の屍を無駄にしないでください。私は「この記事でこのゲームを買おうとする人がいるのか……?」と不安で不安で仕方がないので、どうか買ってください。私と一緒に苦しみましょう。大体1000円ぐらいなので! 昼食抜いたら買えるので!!

『Squingle』Meta公式サイトはこちら『Squingle』Steamストアページはこちら