法廷で録音したために大阪地裁から制裁裁判で過料3万円の決定をされたことを不服として、中道一政弁護士が6月2日、大阪高裁に抗告申し立てをした。岩﨑邦生裁判官の対応は判例違反だなどと訴えている。

●「制裁裁判」の適用は判例違反

中道氏は、ストーカー規制法違反の罪に問われた女性被告人の第2回公判で法廷録音を試みたところ、手錠で拘束された。不許可の理由を繰り返し問うたところ、岩﨑裁判官は「法廷の治安を乱した」として退廷を命じ、制裁裁判に付した。

女性の私選弁護人を受任し、4月の初公判時から法廷内での録音を許可するよう申請を出していた。録音は、取り調べ等の調書に疑問を持っている女性からの要望でもある。

録音は、刑事訴訟規則215条で裁判所の許可がないと「できない」とされており、岩﨑裁判官は、初公判時から録音を不許可とし、その理由について「必要性も相当性もない」と述べていた。

これに対し、中道氏は刑事訴訟規則47条2項「検察官、被告人又は弁護人は、裁判長の許可を受けて、前項の規定による処置(編注:速記・録音のこと)をとることができる」を引いて、原則禁止とは言えないとの立場だ。

抗告申立書では、不許可の理由について説明を求めた行為に「法廷等の秩序維持に関する法律」を適用することは判例に違反すると以下のように主張する。

最大判昭和33年10月15日(刑集第12巻14号3291頁)は「日本国憲法の理念とする民主主義は、恣意と暴力を排斥して社会における法の支配を確立することによって、はじめてその実現を期待することができる。」と言及している。

中道氏はこれを踏まえて、「法廷録音を許可しない理由の説明を求める行為は、その理由を聞いた訴訟当事者、傍聴人、さらにはこれを伝え聞いた一般市民らが、法廷録音の可否を論じる重要な前提を得るための行為であるから、法廷録音を許可しない理由の説明を求めることは、むしろ、法廷等の秩序維持に関する法律が目指している民主主義の実現に資する」などと訴えている。

●不服申し立ては20年で18人

法曹時報によると、制裁裁判は2000〜2021年は年1〜8件。弁護人が対象になったのはゼロと極めて異例の事態といえる。

制裁は監置場に留置される「監置(20日以下)」と「過料(3万円以下)」がある。弁護士ドットコムニュース編集部が約40年分の統計を調べたところ、弁護人が制裁裁判を受けたのは1979年1982年(過料)、1985年(監置)の3人だった。

2000〜2021年に制裁裁判を受けた79人のうち、監置の15人、過料の3人が不服申し立てしている。件数は以下の表の通り。

法廷録音して過料3万円受けた弁護士 大阪高裁に抗告申し立て