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 土星の衛星「エンケラドゥス」の表面から吹き出す、壮大な水蒸気の水柱が観察されたそうだ。その長さは約1万km、日本からアメリカまでの長大なものだ。

 エンケラドゥスはその地下に液体の海が存在し、生命の発見が期待されている衛星だ。

 サウスウエスト研究所のクリストファー・グライン博士によれば、「太陽系で最もダイナミックな天体の1つで、地球外生命捜索の最高のターゲット」であるという。

 今回のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による観察では、エンケラドゥスが水蒸気でまるでドーナツのような軌跡を描いていることが確認されている。

 この発見を受けて、来年もまたJWSTによるエンケラドゥスの観察が行われる予定であるそうだ。

【画像】 エンケラドゥスから噴きだす膨大な水蒸気が土星系の水の供給源

 ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)によって観察された土星衛星「エンケラドゥス」の水蒸気のプルームは、長さ約1万kmと巨大なものだ。

 エンケラドゥスの直径は約500kmなので、自身の20倍もの水蒸気を噴き上げているということになる。

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JWSTのNIRSpec(近赤外線分光器)の画像から、エンケラドスの南極から噴出する水蒸気プルームが、エンケラドス自体の大きさの20倍以上にも広がっていることがわかる / image credit:NASA、ESA、CSA、Geronimo Villanueva (NASA-GSFC), Alyssa Pagan (STScI)

 この衛星から噴出された氷の粒や水蒸気はこれまでにも観察されているが、JWSTによる最新の観察は驚くべき真実を伝えている。

 この衛星はわずか33時間で巨大な土星を1周する。その間に水蒸気プルームを噴出し、まるでドーナツのような軌跡を残すのだ。

 それは土星系の水の供給源でもあるようだ。JWSTの観測データによると、水の3割はエンケラドゥスの軌跡に残るが、残りの7割は土星系のその他の領域へと散らばっていくという。

 このような水蒸気プルームのドーナツ(ウォータートーラス)が視覚的に示されたのは初めてであるとのこと。それはJWSTの並外れた性能を証明するものでもあるそうだ。

エンケラドゥスの南極から噴き出す水蒸気によって形成される水のドーナツ「ウォータートーラス」を可視化したもの。水の3割はトーラス内にとどまるが、残り7割は土星系へと散らばっていく/NASA’s Goddard Space Flight Center), A. Pagan (STScI), L. Hustak (STScI)

来年はエンケラドゥスの生命と居住可能性を調査

 今回の発見を受け、今回の研究チームは来年もJWSTでエンケラドゥスを調べる予定になっている。

 そのときの主なターゲットは、有機物や過酸化水素だ。これはエンケラドゥスの居住可能性を知る手がかりとなる。

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 「過酸化水素がとりわけ興味深いのは、これまで発見されたものよりずっと強力な代謝エネルギー源となるからです」(グライン氏)

 来年の観測では、今回の10倍の信号対雑音比で観察が行われる。つまりはより詳しい観察が可能になるということだ。

 エンケラドゥスはその地下の海に生命の存在が期待されているが、今後の観測ではどのような発見があるのか楽しみに待っていよう。

 また、こうした水蒸気プルームの時間による変動を理解することは、今後の惑星科学ミッションを計画するうえでも大切であるとのこと。

 現在エンケラドゥスの生命の痕跡を探るべく「Enceladus Orbilander計画」が提案されているが、今回のような研究は、海のサンプルを回収するために探査機をどこに送り込むべきか正しく判断するヒントになるそうだ。

 この研究は『Nature Astronomy』に掲載される予定だ。現在はその未査読版を閲覧することができる。

References:Webb telescope finds towering plume of water escaping from one of Saturn's moons / written by parumo

 
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土星の衛星エンケラドゥスから噴きあがる巨大な水柱を発見