コロナ禍からの回復が各所で鮮明になってきました。今回の未曽有の危機で職を失った人も多く、「よし、そろそろリベンジだ」と意気込んでいるのではないでしょうか。しかし、そういう人ばかりではないようで……みていきましょう。

コロナ禍で失業した息子が実家に帰ってきたが…

――ひとり息子が実家に寄生している

そのような投稿をしている60代女性。すでに夫は亡くし1人暮らしだったところ、コロナ禍で仕事を失ったひとり息子が実家に戻ってきたのだとか。息子は未婚の40代。就職活動をしている気配はなく、60代女性の年金でパチンコ三昧だといいます。「年金がパチンコ代で消えて…もう、生きていけない」。窮状を綴っています。

2020年に行った国勢調査によると、親と同居する25歳以上の、“未婚の子”は920万人。そのうち40代は246万人です。

【親と同居する40代の“未婚の子”の人数】

◆両親と同居

40~44歳:783,617人

45~49歳:686,178

◆男親と同居

40~44歳:86,442人

45~49歳:10,2160人

◆女親と同居

40~44歳:346,238人

45~49歳:461,276

出所:総務省統計局『令和2年国勢調査』より

このうち、冒頭の親子のような「親と働いていない子」というペアがどれほどいるかは分かりませんが、「親と同居する未婚の子」は、未婚率の上昇とともに増加傾向にあります。

90年代後半、「パラサイトシングル」という言葉が話題になりました。1997年、山田昌弘氏(現・中央大学教授)によって提唱された造語で、社会人になってからも親元で生活し、経済的・精神的自立ができていない未婚者のことを指します。最近であれば、「子供部屋おじさん」などというインターネットスラングのほうがピンとくるかもしれません。

90年代後半といえば、俗にいう就職氷河期真っ只中。学校を卒業しても社会に出ることができず、実家に留まる人が増加。社会問題となりました。その後も未婚率や非正規雇用者率の上昇などにより、「親に依存する未婚の子」は増え続け、その数はコロナ禍で右肩上がりだといいます。

住まいは持ち家、さらに現役を引退した親には「年金」という安定した収入があります。職を失ったり、そもそも働いていなかったりする子どもにとって、実家は最後の砦的な存在なのでしょう。

厚生労働省令和3年厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、国民年金受給者の平均年金額は53,185円。遺族基礎年金は7万7,994円。また厚生年金受給者の平均年金額は14万5,665円。遺族厚生年金は8万2,371円。

平均値で考えるのであれば、女性の場合、遺族基礎年金と遺族厚生年金を合わせた15万円程度を手にしているかもしれません。持ち家であれば、1人で暮らしていくなら十分。2人暮らしでも、決して贅沢はできませんが、なんとか暮らしていける水準でしょうか。

そんな年金を当てにして、実家に住みついてしまうひとり息子。人のお金で趣味のギャンブルもし放題……働く気も失せてしまうのも、どこか分かる気もします。

息子さん、ギャンブル依存症なんじゃ…

実家に住み着き、パチンコ三昧。そんな様子に「ギャンブル依存症なんじゃない」と外野の声も。

消費者庁が全国20~79歳の男女5,000人に行った『ギャンブル等に関する消費行動等についての意識調査』で「どのようなギャンブルをしていますか?」と質問したところ、32.9%が「パチンコ」と回答。「宝くじ」53.9%、「競馬」39.4%に次ぐ人気でした。

「パチンコ」と回答した人に頻度と1度に使用する金額を聞いたところ、週1以上が33.6%。金額は「1,000円以下」が4.6%、「1万円以下」が55.6%、「10万円以下」が37.0%、「10万円以上」が2.8%。もちろんギャンブルですから、儲かるときもあれば損することも。生業にするほどのプロ級であればいいのですが、冒頭の親子の例では「生活ができない」という悲痛の声から、相当のマイナスになっていることが想像されます。

このままでは親子ともども共倒れになることも考えられますし、何よりも、パラサイトシングルの場合、自身の年金保険料は滞納しているケースが多く、親の死により収入がなくなり、生活が困窮する可能性があります。その前には親の介護問題も。親が家事などができなくなると、金銭的な余裕があっても生活破綻に陥ってしまう……そんなことも考えられるでしょう。

本当に依存症であれば“治療”が必要になりますが、その先に子どもの経済的自立が見えないことには解決も見えてきません。親に甘え切った40代の再就職……ハードルはかなり高そうです。

(※写真はイメージです/PIXTA)