静岡県沼津市の千本浜海岸で生後間もない女児の遺体が見つかった事件で、沼津署は2日までに、いずれも住所不定で無職の浅沼かんな容疑者(24)と高見直輝容疑者(20)を死体遺棄死体損壊の疑いで逮捕した。

 両容疑者は海岸周辺に流れ着いた木や枝などを使い、数時間にわたって女児の遺体を焼いたとみられている。女児の直接の死因は不明ながら、死産でなかったことだけは分かっているという。

 海水浴場として知られる浜辺で、赤ちゃんの遺体を焼き、放置するという異常な事件。容疑者と目された男女は一体何者なのか。文春オンラインが取材を進めると、女児の生みの親の可能性がある浅沼容疑者の事件直前までの足取りが浮かんできた――。

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遺棄された女児の近くで焚き火をしていた男女

 社会部記者が解説する。

「事件は5月27日午前6時45分ごろ、海岸で釣りをしていた男性からの『赤ちゃんの遺体があった。たき火をしている男女がいた』という通報で発覚しました。警察は目撃情報を基に防犯カメラの解析などを進めた結果、浅沼容疑者らが浮上。1日に沼津市内の宿泊施設にいた2人を発見し、現場となった海岸で女を逮捕、翌日に男を逮捕しています。

 赤ちゃんの身長は約50センチで、体の一部が炭化しており死因は特定されていません。警察は2人が女児の親である可能性があるとみてDNA鑑定など含めて捜査しています」

界隈で“ヤバすぎる女”として知られていた浅沼容疑者

 逮捕された浅沼容疑者のことを「“ヤバすぎる女”として、界隈で知らない人はいませんでした」と評するのは、大阪のホストクラブで働く男性Aさんだ。

「昨年の5月ごろに、大阪市内の相席屋で浅沼さんと初めて会いました。そこで仲良くなったのをきっかけに、翌月からホストとして働き始めた僕のお店に来てくれるようになったんです。その時はまだ彼女のヤバさに気付けていませんでした……」

歩いていると『おい!』と声をかけられる“ホス狂”

 Aさん目当てにホストクラブに足しげく通うようになった浅沼容疑者は、「出身は沼津」「2021年に大阪に引っ越して来た」と、身の上話も漏らすようになっていく。やがて浅沼容疑者はAさんの自宅にも度々転がり込むようになると、“同伴”生活が続くようになった。

「同伴中の女性に別のホストが“声かけ”することは業界ではタブーとされているのですが、浅沼さんと歩いていると『おい!』と声をかけられる事が多かったんです。浅沼さんも『ヤバい』と言ってその場から走って逃げていました。どれも売掛金の未払いが原因みたいで、ある時には『ホストに詰められてる、助けて』と電話がかかって来て、駆けつけるとそれも未払金によるトラブルでした。その頃から彼女の行き過ぎた“ホス狂”具合にやっと気づいたんです」(Aさん

300万円以上の売掛金を残して蒸発

 売掛とは、つまりツケ払いのことだ。Aさんのホストクラブでも、浅沼容疑者は2カ月で300万円以上の売掛をつくっている。Aさんは同業者から「あの女は盗み癖や飛び癖があるから気をつけろ」と注意を受けたため、職場や自宅の住所を“未収用紙”に記載させたという。Aさんが続ける。

「その他にも、居場所がわかるようにと僕の名義でGPS付きの携帯を1台借りて渡しました。その途端、一切の返済なく失踪したんです。大阪に引っ越して来たと言っていたのに、未収用紙には沼津の住所が書かれていて、2年間ずっと僕を含めたホストの家を転々としていたんです。浅沼さんの未払金が残っているホストクラブは僕が知る限りでも20店以上あります」

 Aさんが浅沼容疑者と最後に会ったのは昨年8月。蒸発した容疑者が残した300万円以上の売掛金は、Aさんが肩代わりするはめになった。

「お金を返済してもらうために、未収用紙に書かれた自宅住所へ向かいました。すると全然関係のない男性が出て来て、入居者が変わっていたんです。職場に電話をかけると『もうとっくに辞めてますけど』と対応され、『毎日のように何人ものホストから同じ用件で電話がかかって来て迷惑してるんです』とかなり怒ってました。実家の母親も同じで『もう娘とは関わりたくないんです』と浅沼さんの未払金についての電話でうんざりしているようでした」(同前)

足取りがつかめないよう工作 もう一人、娘もいて…

 徐々に浮かび上がる“ホス狂のヤバさ”はこれだけでは終わらない。浅沼容疑者の蒸発の手口は実に計画的だった。足取りがつかめないよう“2カ月しか勤めていない職場”や“わずかな期間住んだ住所”を未収用紙に堂々記載。SNSも頻繁に消しては作り直すの繰り返しだったという。

「浅沼さんは今回亡くなった子とは別に、5、6歳になる娘さんがいますよ。職場の方も知ってましたし、実家に預けて自分は好き放題していたみたいです。既に離婚しているみたいですが、浅沼というのは元旦那の姓でしょうね。未収用紙に書かれた両親の名字は違いましたし」(同前)

Aさん名義でネットカフェの決済をしていた浅沼容疑者

 今年の3月には、Aさんの元に沼津駅近くのネットカフェから12万円の請求書が届く。大阪で働くAさんにはまるで覚えのないその請求は、彼の名義で借りた携帯で浅沼容疑者が決済したものだった。沼津に残った売掛金未払い客の最後の足跡。返金を求め沼津に行こうとした矢先、今回の報道を目にしたという。

「亡くなった赤ちゃんが浅沼さんの子なら、時期的には大阪にいた頃にできた子だと思います。関係を持っていたホストも多いと聞くので、もしかすると自分が父親なのか……と言っている人もいます。未払いで飛んでしまったから、浅沼さんとしても出来たとは言いだせなかったんですかね」(同前)

 赤ん坊の死体を燃やしながら浅沼容疑者は何を考えていたのだろうか。それを隣で眺めていた男は一体何者だったのか。そもそも、亡くなった女児は誰の子供なのか。

 謎と悲惨が混じり合う海水浴場の女児死体遺棄事件。はっきりしているのは、生まれたばかりの命がひとつ、失われたことだけだ。

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《沼津“乳児”死体遺棄》「結婚中に3股、元夫や浮気相手に金をせびり…」海辺で赤ちゃんを焼いた“ホスト狂い”浅沼かんな容疑者(24)の“奔放過ぎる逃亡人生”「逮捕の男とネットカフェに8カ月“潜伏”」 へ続く

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

焚き火で遺体を焼くという幼稚な発想(日テレNEWSより)