自分の子どもに信仰を強制しないでーー。キリスト教系宗教団体「エホバの証人」にかつて所属していた70代女性が、現役信者に語りかけた。

6月3日、都内で開かれた「宗教2世問題に関するシンポジウム」にオンラインで参加し、息子3人に対するムチ打ちへの後悔を口にした。

シンポはエホバ世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の2世らでつくる支援団体スノードロップが主催。2世問題に携わる支援者や学者、弁護士らが今後の課題について話し合った。

●「自分は信じても、子どもに信仰を強制しないで」

エホバの女性は夫との家庭生活に悩み、訪問勧誘で入信。しかし、息子から宗教活動に対して「幸せになるためにやっているんじゃないの? 幸せじゃなくなっているのはなんで?」といわれて目が覚めた。6〜7年前に脱会した。

親に従順であること、エホバの証人が提示する聖書の教えに従うことが子どもにとって一番の幸せだと思っていた。ムチもその一環だった。

「周りがたたいていて、なぜたたかないのと言われたら…弱さがありました。でも、子どもの人間形成にとって、やっちゃいけないことでした。子どもが自分の考えや思いを発言する機会を全部閉ざしてしまった」

宗教の家に生まれた子どもたちへのメッセージとして「ちょっとおかしいなと思ったら、よく考えて自分の思うほうに歩んでほしい。誰の影響も受けずに好きなことをしてほしい。切に願っております」と結んだ。

●宗教虐待とは何かをビジュアルで表現

スノードロップは、エホバ3世の夏野ななさん(仮名)が代表を務め、4月18日に設立した。宗教の信仰に関係する虐待を防ぐために、行政への働きかけや教育現場への周知などの活動をしていくという。

5月にはこども家庭庁と面会し、厚生労働省が2022年に新たに児童虐待の類型を示したQ&Aについて、より分かりやすい漫画化などについて話し合った。英国で活動する2世のイラストレーターloveberryさん(@loveberry2022)の協力を得て、ポスターなどを制作。スノードロップのHPで一部公開している。

統一2世の田中悟さん(仮名)は「この活動は失敗してはいけない。僕たちは周りの人に恵まれたけれど、行政がきちんと手を差し伸べられる仕組みをつくっていきたい」と訴えた。

●弁護士「2世支援の法整備は手付かず」

全国霊感商法対策弁護士連絡会の弁護士も登壇。2022年末に成立した「寄付の不当な勧誘防止法」について阿部克臣弁護士は「2世の救済という意味では、ほとんど手付かず」と説明し、成年後見制度に近い枠組みの必要性を提示した。

また、児童虐待防止法は保護者以外の行為について規制できないことが課題とされている。

久保内浩嗣弁護士は、法改正の必要性について言及しつつ、児童相談所も疲弊しており、現行法下で、できる対策を模索すべきだと指摘。今秋に策定する「こども大綱」に、2世問題を盛り込めるよう働きかけると強調した。

息子3人にムチ打った元エホバの女性が語る後悔 宗教2世シンポジウム