ネコをなでていて喉をゴロゴロ鳴らされた経験はありますか?

喉をゴロゴロ言わせるのはネコならではの発声です。

一般的にネコは気持ちいいと喉を鳴らすと思われがちですが実はそれだけではありません。

ネコがゴロゴロ鳴くことには立派な理由と驚くべき効果があるのです。

この記事ではネコがゴロゴロ言う理由を説明するとともに、ネコのゴロゴロで注意すべきパターンについて解説していきます。

目次

  • なぜネコは喉を鳴らす鳴き方を始めたのか?
  • ネコがゴロゴロと喉を鳴らすタイミング

なぜネコは喉を鳴らす鳴き方を始めたのか?

なでられてゴロゴロいうネコ
credit:いわさきはるか,ナゾロジー編集部

ネコの「ゴロゴロ」は、咽頭の筋肉を細かく振動させて音を出したもので、厳密には「鳴き声」ではありません。

エネコはもちろんのこと、ピューマチーターなど大型のネコ科動物についても喉をゴロゴロ鳴らす鳴き方をすることがわかっています。

ネコ科の生き物たちはなぜ「ゴロゴロ」喉を鳴らすようになったのでしょうか?

子ネコが外敵に狙われない鳴き方

母子のコミュニケーションツールだったゴロゴロ音
credit:フォトAC

あまり知られていませんが、ネコの「ゴロゴロ」は子ネコが最初に覚える鳴き方です。

外敵に狙われやすい子ネコは鳴き声を出してしまうと襲われてしまうリスクがあるため、鳴き声を出さず喉を振動させて母ネコを呼びます。

また、生まれてすぐの子ネコは目も見えませんし、耳もあまりよく聞こえません。

そこで、母ネコもまた喉をゴロゴロいわせることで、振動によって「ここにいるよ」ということを伝えているのです。

ネコのゴロゴロ音は母子の安全なコミュニケーションがルーツなのですね。

ゴロゴロ音がネコの治癒に役立つという説も

ネコがゴロゴロ音で自らを治療しているのかも
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また、ネコのゴロゴロ音の振動が体を治癒するという説もあります。

ネコのゴロゴロ音はどのネコも25Hz周辺の低周波であり、この周波数帯の振動は副交感神経を優位する効果があると言われているのです。

自律神経の1つである副交感神経は体を回復モードへ切り替える役割があります。

血圧を下げ、筋肉を弛緩させリラックスした状態にすることで、体を休め、回復させるのに役立つということですね。

他にも25Hzの低周波には骨形成を担う骨芽細胞を増殖させる効果や、精神を落ち着かせるセロトニンの分泌を促す効果があるのだそうです。

ネコは動物の中でも自然治癒能力が高い動物だと言われていますが、その理由はゴロゴロ音をフル活用した休息にあるのかもしれません。

しかし、治癒効果があるということは、ネコがゴロゴロいっているときに体を休める必要がある、つまりネコが何かしらのダメージを負っている可能性があるということです。

ここからはネコがゴロゴロ喉を鳴らすタイミングについて解説するとともに、そんな注意すべきタイミングについても解説していきます。

ネコがゴロゴロと喉を鳴らすタイミング

気持ちいいときだけゴロゴロいう?
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ネコがゴロゴロと喉を鳴らすタイミングとして一番有名なのは「飼い主がネコをなでた」ときでしょう。

喉のあたりをなでると指先にゴロゴロ音の振動が伝わってくるので特に気づきやすいタイミングと言えます。

しかし、実際にネコを飼ってみるとネコは実に様々な場面でゴロゴロ喉を鳴らします。

飼い主が近づいてきただけでゴロゴロいうこともあれば、動物病院など絶対にネコにとってハッピーではないはずの場所でもゴロゴロいうこともあるのです。

ネコは一体どういう気持ちでゴロゴロ喉を鳴らしているのでしょうか?

大きく分けると3つのパターンがあるようです。

幸せを感じている

なでられなくても快適ならゴロゴロいう
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まずはなでられて気持ちよかったり、飼い主に膝にのったりして、ネコが幸せを感じているときです。

多くのネコが機嫌が良いときにゴロゴロと喉を鳴らします。

これは、「なでられたとき」などスキンシップがあるときに限りません。

例えばお日様が暖かい窓辺でひとり寝転んでいるときなども、ゴロゴロいっているときがあります。

何かを求めている

何かを激しく要求するネコ
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ネコは餌や抱っこなど自分の要望を通すためにも「ゴロゴロ」を使うことがあります。

通常のゴロゴロ音は25Hzの低周波ですが、その中に380Hzの高周波が混じったものが「要求のゴロゴロです。

これは、人間の赤ちゃんの鳴き声に似た周波数帯で、人間の耳に残りやすい音と言われています。

この音を聞くと人間は単純に「にゃーにゃー」と鳴かれるよりも、ネコの要望を聞き入れてしまう傾向にあるそうです。

ストレスを感じている

病院でのゴロゴロはもちろんうれしいわけじゃない
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前述の通り、低周波であるネコのゴロゴロ音は副交感神経を優位にし、ストレスを軽減させる効果があります。

このため、ネコはストレスを感じたときに自らゴロゴロ喉を鳴らすことで、そのストレスを解消させようとすることがあるのです。

動物病院などで不安そうにしているにも関わらず、ゴロゴロいっている場合はこのパターンにあたります。

ストレス源がなくなったときにゴロゴロが収まっていればいいのですが、特に理由もなくゴロゴロいうのが続く場合は病気や怪我の可能性もあるので要注意です。

ゴロゴロの振動は呼吸をラクにする効果もあることから「死に際のネコは喉を鳴らす」とも言われています。

こういった場合のゴロゴロ音はいつもより少し低い音になるとも言われていますが、人間の耳で聞き分けることは困難です。

例えば「体はこわばっているのにゴロゴロいっている」「特にストレス源がないのに険しい顔つきでゴロゴロいい続けている」などゴロゴロいうタイミングに不自然さを感じたら、迷わず動物病院に相談してみてください。

このようにネコの状態を知るサインにもなるゴロゴロ音、実はそれを聞く人間にもメリットがあるのです。

ネコのゴロゴロ音の効果は人にも!

筆者と飼い猫、ゴロゴロを聞くと気持ちが落ち着く
credit:いわさきはるか,ナゾロジー編集部

単純に気持ちいいときに出る音だと思われているネコのゴロゴロ音ですが、実は「副交感神経を優位にする」「気持ちを安定させる」「骨の形成を助ける」「呼吸をラクにする」など様々な力を持っています。

そして、これらはすべて人間に対しても有効なもの、ゴロゴロいうネコを抱いて振動を感じれば同じような効果が人間に対しても期待できるのです。

ネコを飼っている方がよく「ネコは健康に良い!」と言っていることがありますが、実は科学的にもあながち間違っていないのかもしれません。

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参考文献

Why do cats purr? https://www.livescience.com/animals/cats/why-do-cats-purr

元論文

How cats purr https://zslpublications.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1469-7998.1991.tb04749.x Emotion Recognition in Cats https://www.mdpi.com/2076-2615/10/7/1107
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