16年前に心臓の移植手術を受けた女性は、臓器提供について人々が考えるきっかけとなることを願い、摘出された自分の心臓を英ロンドンにある博物館へ展示することに決めた。そして今年5月、博物館で自身の心臓と対面した女性は「臓器移植は実現可能な最高の贈り物なのです」と語った。イギリス公共放送BBC』などが伝えている。

英ハンプシャー州リングウッド在住のジェニファー・サットンさん(Jennifer Sutton、38)は今から16年前、体に異変を感じた。当時大学生だったジェニファーさんは、緩やかな坂道ですら息切れしてしまい、病院での検査の結果、拘束型心筋症と診断された。

日本では指定難病に分類されている拘束型心筋症は、心臓が硬くて拡張しづらく、心不全を引き起こす病気だ。全身に血液を送ることが困難なため、ジェニファーさんは医師から「移植手術を受けなければ命の保証はない」と宣告された。

移植待機リストに載ったジェニファーさんは、一時は体調が著しく悪化してしまったが、幸いにも2007年6月に適合者が見つかった。ジェニファーさんは13歳の時に心臓の移植手術を受けた母親が亡くなってしまうという悲劇に見舞われており、移植手術に対して強い不安を抱いていたが、手術は無事に成功した。

「移植手術を受けた後に目を覚ました時、『ああ、私は新しい人になったんだ』と思ったのを覚えています。両手でサムズアップのポーズをして、家族に向かって『やったよ! 私やったよ!』と喜んでダンスをしたのも覚えていますね。」

そのように話すジェニファーさんは当時、イギリス王立外科医師会(Royal College of Surgeons)から「摘出した心臓を博物館に展示してもいいか」と尋ねられて、承諾したという。

そして移植手術を終えてから16年後の今年5月、ジェニファーさんはロンドンにある「ハンテリアン博物館(Hunterian Museum)」を訪ねて、初めて自分の心臓と対面した。

「心臓が展示されている部屋に足を踏み入れた時、『あの心臓はかつて私の中にあったものなんだ』と思いました。現実離れした出来事だと感じましたね。でもこれって素晴らしいことですよ。22年間も私を生かしてくれた心臓は、私の友人のようで誇りに思います。これまでの人生で瓶の中に入ったものはたくさん見てきましたが、私の一部だったものが中に入っていると思うと、不思議な気持ちですね。」

ジェニファーさんは、臓器提供の普及と啓発のために博物館への展示を承諾したと言い、「もしドナーがいなければ、移植を受けてからの素晴らしい16年間を過ごすことはできなかったでしょう。信じられないほど忙しく活動的に過ごしてきて、移植を受けたこの心臓や自分自身をできるだけ健康に保っています」と話す。

また死の危機に直面した過去を振り返り、ジェニファーさんは「人生を精一杯生き、先延ばしにしていることがあれば今日からやりましょう!」とメッセージを残した。

ちなみに昨年には、移植手術で摘出した心臓を真空パックで保存している女性が、SNSで注目を集めていた

画像は『BBC 2023年5月18日付「Transplant patient sees own heart go on display at museum」(TOM EVANS)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 iruy)

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