
バイデン氏の転倒の身体的要因は何か
ジョー・バイデン米大統領(80)がコロラド州の米空軍士官学校の卒業式で演説後、壇上で砂袋につまずき転倒した。
演説を終えて卒業生と握手をしている際につまずいたのだ。醜態だ。
今年2月には、ウクライナに電撃訪問した際にも大統領専用機に乗り込む際にタラップで転んだ。
高齢者に転倒はつきもの。それで命を失う者もいる。
専門医によれば、転倒は加齢変化による筋力、運動神経、平衡感覚、視覚、聴覚などの低下が要因だという。
身体要因としては起立性低血圧、不整脈、パーキンソン症候群、骨粗しょう症などがあり、また鎮静睡眠薬、降圧薬など薬物服用などが考えられるという。
ホワイトハウスのケビン・オコナー医師は、今年2月に行われた健康診断では、バイデン氏は健康で「引き続きいかなる例外や取り計らいもなく、完全に職務を遂行するのに適している」との見解を示している。
だが、政治家の主治医の言うことは政治的思惑絡みで100%は信用できない。
バイデン氏は4月、2024年大統領選への再出馬を宣言している。今のところカマラ・ハリス副大統領(58)の続投を匂わせている。
世論調査では、米国民の69%が高齢を理由にバイデン氏の再出馬に反対している。
(How Much Do Voters Really Care About Biden’s Age? - The New York Times)
それに就任以後、バイデン氏に対する支持率は40%台に低迷している。その主な理由は高齢だからという。
一方共和党では「脛に傷のある」ドナルド・トランプ前大統領(76)が支持率53%で依然としてトップを走っている。
共和党支持者を対象とした世論調査では、フロリダ州のロン・デサンティス知事が25%で2位につけ、それをマイク・ペンス前副大統領やニッキー・ヘイリー元国連大使、ティム・スコット上院議員(サウスカロライナ州選出)らが5%前後で追いかけている。
「共和党支持者の大半は、トランプ氏の主張する2020年大統領選無効論を支持する『証し』で、一連の起訴は民主党司法当局による『魔女狩り』だという意思表示」
「トランプ氏が再度大統領に返り咲くことを願望しているわけではない」
(主要メディアの政治担当記者)
それでも現時点でバイデン氏とトランプ氏の一騎打ちとなれば、トランプ氏が44%対42%で勝つといった世論調査結果も出ている。
(President: general election : 2024 Polls | FiveThirtyEight)
どうしてもバイデンを助けられないハリス
高齢問題に加えてバイデン氏を補佐し、援護すべきハリス氏の支持率がぱっとしないこともバイデン劣勢の一因になっている。
新聞辞令では、万一バイデン氏が大統領選を降りた場合、大統領候補になりうるのは以下の7人となっている。
バーニー・サンダース上院議員(81=バーモント州選出)
エイミー・クロブシャー上院議員(63=ミネソタ州選出)
ヒラリー・クリントン元民主党大統領候補(75)
さらにすでに立候補している弁護士のロバート・ケネディ氏(69=故ロバート・ケネディ司法長官の3男)や作家のマリアンヌ・ウィリアムソン氏(70)がいる。
が、それぞれ「帯に短し、襷に長し」で、目下のところバイデン氏の強力なランニングメイト候補は浮上してこない。
ウルトラC作戦提案者は「よろず仲裁請負人」
そうした状況の中、バラク・オバマ元大統領(61)を副大統領に擁立すべきだ、とする「ウルトラC作戦」が急浮上した。
提案したのは、ウォーターゲート担当特別検察官付き顧問や副司法次官を務め、現在国際法律弁護士事務所のシニアパートナーのフィリップ・A・ラコバラ氏。
いわば「よろず仲裁請負人」である。
畑違いの法律家のようだが、これまでにも杓子定規な法律解釈を超越した答えをズバリ提示し、一定の評価を得ているコラムニストでもある。
「オバマ降臨」作戦は、同氏がデジタル・ニュースサイト「ザ・メッセンジャー」(The Messenger)に掲載された寄稿文で提案されたものだ。
「バイデン氏は空軍士官学校の卒業式で転倒した。共和党が選挙キャンペーンの政治広告動画に使う格好の材料を提供してしまった」
「バイデン氏は高齢すぎて、再出馬して2期目を務めるのは無理だといった声が熱烈な支持者の間からも出ている」
「同氏をバックアップすべきハリス副大統領の不人気さは問題を一層難しくしている」
「バイデン氏が再選できるチャンスを広げるためには、常識にとらわれない発想の転換が必要である」
「不可能なことを可能にするには、今なお人気の衰えぬオバマ氏を副大統領候補に選ぶことだ」
「不人気なハリス氏を副大統領候補にせず、オバマ氏をランニングメイトにするのだ」
「ハリス氏は、バイデン氏のランニングメイトに固執し、敗北の一端を担って政治生命を失うことを考えれば、ここは潔く、オバマ氏に副大統領候補を譲り、勝利の暁には優遇される方がより良いに決まっている」
(Biden’s 2024 Hail Mary: Name Barack Obama as His Running Mate?)
今度はオバマが恩返しする番
ラコバラ氏は、この提案は全く奇抜なものではないと強調している。
「2008年の大統領選時には当選回数の少なかったオバマ上院議員が上院では司法、外交格院長を経験していた先輩上院議員のバイデン氏を副大統領に指名して勝利をつかんだ」
「今回はその恩返しをする番である」
「かつての正副大統領関係は、オバマ氏を副大統領にすることでお互いが理解し合い、責任を分かち合える素晴らしい関係を築き上げるだろう」
「憲法解釈上、問題があるとは思えない」
「憲法修正第22条では、なんびとも2回にわたって大統領職に選出されてはならない、と明記されているが、大統領だった者が副大統領職を含めた政府の公職になることを禁じてはいない」
(22nd Amendment | U.S. Constitution | US Law | LII / Legal Information Institute)
「さらに憲法修正第12条には、なんびとも憲法上、大統領職には不適格な者が副大統領になることも不適格であることはない、と明記している」
「つまり憲法上、オバマ氏が副大統領になる資格がない、とする条文はどこにもないのだ」
違憲ではないオバマ副大統領の大統領昇格
実は、バイデン氏がオバマ氏を副大統領候補に指名する論議は過去にもあったのだ。
2015年8月6日付のワシントン・ポストは、「バイデンはオバマをランニングメイトに指名できるか」という見出しの記事を掲載している。
憲法修正第12条、第22条を引用して「イエス」と結論付けている。それを裏付けるものとして、コーネル大学のマイケル・ドア教授の憲法解釈を挙げている。
問題は2期目に入ったバイデン氏が辞任しなければならなくなった場合、継承順位2位のオバマ氏は大統領になれるのか、という問題だ。
同教授はこう主張している。
「バイデン大統領が任期途中で辞めざるを得なくなった場合、オバマ氏は大統領に昇格できるかどうかだ」
「2期大統領を務めた者は大統領になれない、と憲法修正第22条は明記しているが、それは2回選挙で選ばれた者を指す」
「バイデン氏に副大統領に指名されたオバマ氏は選挙で選ばれたわけではない。したがって第22条の対象にはならない」
「国民は直接選挙でオバマ氏を副大統領に選んだわけではない。選挙投票日それ以前、副大統領には憲法問題は存在しない」
(Could Joe Biden pick Barack Obama as his running mate? Yes. But. - The Washington Post)
憲法解釈をめぐっては異論を唱える憲法学者もいるに違いない。
バイデン氏の高齢問題が今後差し迫った状況になれば、「オバマ降臨」説を軸にした憲法論議が活発化するに違いない。
オバマ氏がどう考えるかも重要なファクターだ。あくまでも副大統領候補になることを固辞すればどうなるのか。
次善の案は「ミシェル副大統領」起用
「その代役としてミシェル・オバマ夫人が副大統領候補に急浮上する可能性も否定できない」
「夫が何を考えているかを一番知っているのはミシェルさん。2人の娘さんも一人は大学を卒業し、もう一人は在学中で、現在は講演で全米各地を飛び回っている」
「著書は今もベストセラー。講演には数千人が集まる。人気は今も衰えず、バラク・オバマ氏を凌いでいる。バイデン夫妻とはいまも親密な関係にある」
「清廉潔白な人柄は、黒人層だけでなく、人種を超えた女性票、無党派層の票を鷲掴みするのは間違いない」
「すげえアイディアだな(Amazing idea)。だが実現するかな。オバマが出ればバイデンがかすむことは間違いない」
「ミシェル副大統領でもセカンド・ハズバンドのバラクが裏で糸を引く。事実上の第3期オバマ政権だな」
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