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 一般的に、思考のスピードは知性の指標とされている。知能指数(IQ)が高い人は簡単な問題なら即座に答えることができる。ところが問題の難易度が上がると、状況が逆転するという。

 新たな研究によると、IQの高い人は、難問に直面した場合、一般的な人に比べて、ゆっくりと時間をかけて考えることが明らかになったそうだ。

 これらの発見は脳をfMRIを調べることで裏付けられたもので、賢さと、より難解な問題に時間をかけることには一定の関連性があるという。

【画像】 IQの高い人と一般的な人の脳の違いを調査

 とびきりIQの高い人と一般的なIQの人では、脳にどのような違いがあるのだろうか?

 これを調べるためにドイツ、シャリテ・ベルリン医科大学の研究チームは、人が問題に取り組んでいる時の脳をfMRIで検査して、そのつながりを調べたデータを分析している。

 参加者が取り組んだ問題は、パターンの中に隠された何らかの法則を見つけ出すというもので、最初は簡単だが、解くほどにだんだんと難しくなっていく。

 このときの脳の活動とIQなどを比較したところ、少々予想外の結果がえられたのだ。

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IQが高い人ほど難解な問題を解くのに時間がかかることが判明

 脳内ではさまざまな領域が連携しながら仕事をしている。今回の研究では、一般にIQが高い人ほど脳領域がうまく連携しており、答えをさっと導き出せることがわかった。

 が、それはあくまで簡単な問題の場合だ。

 問題が複雑になると、賢い人ほど答えるのに時間がかかるようになったのだ。

 それはいったいなぜなのか? どうもIQの高い人の脳は、目の前の答えにパッと飛びつかないことと関係があるようだ。

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高IQの人は脳の全ての領域が処理を終えるまで結論を出さない

 脳内の各領域とうまく連携が取れていない脳の場合、とにかく急いで結論を出そうとする。

 ところが高IQの脳は、すべての領域が処理を終えるまで、最終的な結論を出すのを控えるのである。つまり、脳の全エリアが必要な処理を完了するまで待つのだ。

 研究チームのミヒャエル・シルナー氏はこう語る。

より難易度の高い問題に直面した際、脳の同期性は遅い反応と関連していました。

同期性の低い脳は早急に結論に至る一方で、より同期性の高い脳の前頭葉の神経回路は、全脳が必要な処理を完了するまで判断を保留する傾向がありました。

これらの結果は、650人の参加者を対象としたより詳細な観察で確認されました。

「難易度の高い問題では、それまでの経過をワーキングメモリに保存しつつ、他の答えを検討し、それらをまとめる必要があります」と、プレスリリースで説明する。

 そのために、答えが出るまで時間がかかるようになる。だが、よく検討されたことで、より良い答えである可能性が高いという。

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試験の制限時間を考え直す必要がある可能性

 こうした結果に基づき、個人の脳の特性を反映したシミュレーション・モデルを作ってみたところ、生物学的な脳と同じように、それぞれ個性的な振る舞いをすることがわかったそうだ。

 こうした個人の脳の振る舞いを真似する人工脳の研究は、神経変性疾患の患者一人一人に合わせた治療法を探る便利なツールになると期待されている。

 そしてもう1つ、この研究からは大切なことが言えそうだ。それは学校のテストや資格試験などのやり方についてだ。

 テストには必ず制限時間があるが、現在のそれは適切なものだろうか?

 今回の結果がどんな問題にも言えることならば、簡単な問題が多いテストなら制限時間を短めにしてもいいだろう。

 だが難しい問題を出題するなら、たっぷりと時間を与えた方がよさそうだ。

 できる人はすぐに解けるだろうと制限時間を厳しくしすぎては、かえって能力のある人を選び出せないことにもなりかねないという。

 この研究は『Nature Communications』(2023年5月23日付)に掲載された。

References:Intelligent brains take longer to solve difficult problems - News - BIH at Charite / Highly Intelligent People Are Slower To Answer Complex Problems | IFLScience / written by hiroching / edited by / parumo

 
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IQが高い人ほど難しい問題に時間をかけて答えることが判明