自転車の全国一斉取締りの結果、検挙件数が急増。警察も厳しい姿勢で臨んでいることが浮き彫りになりました。その違反件数の内容は、小学生でもわかる基本的な違反がほとんど。最低限のルールを守らないと、痛手を被りそうです。

厳しい姿勢への転換がわかる検挙件数の増加

2023年5月30日自転車の全国一斉指導取締りが実施されました。自転車利用が多い都市部で定められている自転車指導啓発重点地区・路線を中心とした全国2880か所で、警察官約9300人が動員されています。その結果、いわゆる違反切符などの交付を受けた検挙件数は約500件。谷 公一国家公安委員長は「昨年秋と比べると45.4%増加であった」と話しました。

自転車を対象とした全国一斉取締りの結果、罰則を伴わない指導警告票の交付は1万1525件、罰金の対象となる検挙件数は516件でした。

このうち検挙件数に注目してみると、信号無視の189件(36.6%)と指定場所一時不停止の199件(38.6%)の違反だけで、全体の約75%占めます。重点地区・路線は幹線道路を中心に指定されており、自転車も車道を走ることが基本となっている現状で、これらの違反は重大事故に直結する可能性があります。

結果を受けて、谷国家公安委員長6月3日の閣議後会見で、こう話しました。「基本的なルールを周知するとともに、合わせて4分の3がそういう違反行為をしたということで、その辺もしっかり徹底を図る必要があるのかなと思っている」。

自転車には罰則のない指導警告票の交付があります。今回の交付件数の1万1525件は、昨年の秋の一斉取締りと比較すると24.7%の増加でした。自転車での違反は罰金の対象となる可能性があるため指導警告票が多く使われてきましたが、昨秋比較の増加率からみると、事故に直結する違反に厳しい姿勢で臨んでいることがわかります。

自転車の運転 最低限「信号を守る」

一斉取締りの実施結果を、検挙件数の最も多い東京都と、2022年の交通事故死者数が最多だった大阪府に絞ってみてみました。

東京都内の検挙件数は121件で全国の約20%を占めます。指導警告票の交付は608件。大阪府は検挙件数54件、指導警告票交付513件でした。

東京での検挙121件のうち111件は、信号無視と一時不停止の違反です。わずかに右側通行(2)、ブレーキ不良(1)、踏切をかいくぐる遮断踏切(7)がありますが、それ以外は指導警告票の交付で終わっています。また、大阪での検挙54件のうち40件は信号無視でした。そのほかは指定場所一時不停止(5)、遮断踏切(7)に限定されています。

ちなみに、信号無視で検挙された場合は「3か月以下の懲役または5万円以下の罰金」の可能性があるほか、信号無視など危険な運転を繰り返すと、自転車講習を命じられます。

自転車利用の安全啓発では気を付けることがいろいろありますが、この結果で見る限り、自転車の乗り方で最低限守らなければならないことは、信号を守ることに尽きるのではないでしょうか。

一方、全国的にみると、違反項目は一時不停止が信号無視をわずかに上回っています。厳しい取締りは、事故に直結する交差点での不注意に絞られています。

自転車の全国一斉取締りで検挙件数が急増した。写真はイメージ(madrabothair/123RF)。