1991年に公開されたアニメーション作品「リトル・マーメイド」(USは1989年に公開/ディズニープラスで配信中)が実写化され、日本では6月9日(金)に公開される。ディズニー創立100周年となる2023年を飾るのにふさわしいこの実写版が制作されること、ヒロインの人魚・アリエル役にハリー・ベイリー(吹替:豊原江理佳)が選ばれたことがアナウンスされたのは今から4年前、2019年のこと。以来、公開日を楽しみにしていた日本のディズニーファン、音楽ファン、アニメファンは多いに違いない。そこで今回、音楽をはじめ幅広いエンタメに精通するフリージャーナリスト・原田和典氏が、日本公開に先駆けて一足先に試写会で鑑賞。独自の視点で見どころを紹介する。(以下、ネタバレを含みます)

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■人間界に憧れを抱くアリエル

素晴らしい歌声の持ち主でもあるアリエルは、理解ある仲間たち、ちょっと厳しい父親・トリトン王(ハビエル・バルデム/吹替:大塚明夫)らと、海の中で楽しい毎日を過ごしているが、実は人間の世界を知りたくて仕方がない。海底に沈む船の中に置き忘れられていた道具を見ては興味津々に手に取り、「これは何のために使うのだろう?」「地上はどうなっているのだろう?」と関心を強めるばかり。

掟によって禁じられているとはいっても、禁じられていれば、ますます高まる気持ちというのはあるもので、アリエルは周りの目を盗んで人間の世界に近づき、偶然にも遭難しそうになった王子・エリック(ジョナ・ハウアー=キング/吹替:海宝直人)を助けることになる。結果、アリエルの人間世界に憧れる思いが一気に加速した。

そんな彼女に下心たっぷりに近づくのが海の魔女・アースラ(メリッサ・マッカーシー/吹替:浦嶋りんこ)だ。「3日間だけ人間の姿にしてあげますよ。だけどあなたの“世界で最も美しい声”を私に預けなさい」という感じで。アリエルは声を失った人間の女性となり、親友のフランダー(声:ジェイコブ・トレンブレイ/吹替:野地祐翔)や執事長・セバスチャン(声:ダヴィード・ディグス/吹替:木村昴)の応援を得て、どうにか王子とお近づきになれたが、ここからの展開が分かりやすく、しかもさらにスリリングなのだ。

■安定の音楽でリズミカルに物語が進む

海の美しさ、色とりどりの魚やサンゴ礁、海中と地上の色合いのコントラストに見とれ、カリプソなどカリブ系の音楽を取り入れたトロピカルなアラン・メンケンの音作りに酔いしれる。地上に憧れるアリエルに“海の中もいいもんだよ”とセバスチャンが歌う「アンダー・ザ・シー」が実にユーモラスだ。

そして亡くなったハワード・アッシュマンに替わり新曲の作詞家に選ばれたリン=マニュエル・ミランダのいい仕事っぷりにうなり、純愛の行方にハラハラし、エリック役の海宝、セバスチャン役の木村、アースラ役の浦嶋、トリトン王役の大塚、そしてもちろんアリエル役の豊原の見事な歌声、好演に引かれていると、決して短いとは言えない約135分が小気味よく過ぎていく。日本語版も“プレミアム吹替版”というだけあって、本当に芸達者がそろっている。

実写版アリエル役のハリー・ベイリーは、姉のクローイ・ベイリーとのボーカル・デュオ“クロイ&ハリー”で5度グラミー賞にノミネートされ、さらにビヨンセのオープニング・アクトを務めた経験を持つエンターテイナー。

影響を受けた歌手には伝説的ジャズ・シンガー、ビリー・ホリデイの名を挙げている。3歳の時にはディズニーチャンネルのオリジナルムービー「レット・イット・シャイン」に出ていたというから役者としての経験も豊富で、歌にも演技にも堪能、しかもディズニーとの繋がりも強い(2018年には『リンクル・イン・タイム』のサウンドトラックにも参加)。2021年にはディズニーワールドの50周年テレビイベントに登場し、「ライオン・キング」から「愛を感じて」を歌唱したことも話題を集めた。

ロブ・マーシャル監督、およびスタッフ側は「アリエル役は、彼女しかない」というほど気合を込めてキャスティングしたはず。ロブ監督は5月のワールドプレミアで「ハリーは素晴らしい歌声の持ち主で、しかも彼女には、この世のものではないような魅力、純粋さ、情熱、強さもあったんだ」と絶賛していたのだから。

誰しも洋画を見る時の好み(字幕派・吹替派)やこだわりはあると思うが、英語版、プレミアム吹替版と両方を見ることによってこの作品の魅力はさらに増すことだろう。

◆文=原田和典

映画「リトル・マーメイド」は6月9日(金)より公開/(C) 2023 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.