ネットニュースやテレビなどで「毒親」というワードを見かける。俗に、子どもへの過度な期待や願望からしつけが行き過ぎ、子どもに負の影響を与えてしまう親のことをいう。だが実際、しつけの質や程度を計ることは難しく、「教えて!goo」にも「毒親と厳しい親の境界線は?」と質問が寄せられていた。そこで、心理学の専門家である横山人美さんに、親が毒親になる背景や正しいしつけのポイントに加え、毒親に育てられた子どもの対処法について話を聞いた。

■毒親になる背景

親が毒親になってしまう背景から教えてもらった。

「まず、『親自身が精神的に自立できていないこと』が挙げられます。精神的に成熟した親なら、子どもがある程度の年齢になれば自立させ、自分の人生を生きていくものです。しかし親自身が自立できていないと、子どもに執着、依存し、いつまでも自分の支配下で管理しようと過度に干渉、束縛してしまいます」(横山さん)

「親自身が叶えられなかった夢を子どもに託すこと」も一因だそう。

「親自身の挫折体験がコンプレックスやトラウマになっている場合、自身に代わって子どもに夢を実現させようとします。子どもの成績や習い事、友達関係にまで幅広く影響を及ぼし、子どもの心身を束縛します」(横山さん)

無趣味、友人がいない、夫婦仲が悪い親も要注意とか。

「有り余る時間を子どものために使うしかないため、過干渉や過保護、過度な支配、管理、執着などが生じます」(横山さん)

また親自身が上記のような親を持つ場合、自身が親からされたことを我が子へしてしまう“負の連鎖”を起こす可能性があるという。


■正しいしつけのポイント

しつけについて、迷い悩む親は多いだろう。

「『改正児童虐待防止法』の中に、『たとえしつけのためだと親が思っても、身体に何らかの苦痛又は不快感を引き起こす行為(罰)である場合は、どんなに軽いものであっても体罰に該当』という一文があります。しつけと体罰や虐待や、愛情と溺愛の境界線がわかりにくい場合は、子どもが不快でないか、子どもの自由を奪っていないかを考えるとよいでしょう」(横山さん)

具体的なNG例を挙げてもらった。

「『子どもの価値観、考え方、行動を否定すること』です。子どもが言うことを聞かないからと、怒鳴ったり暴言を浴びせたりすること、親を頼って生きるしかない子どもに食べる、寝る、排泄することを制限することなどは、子どもの健やかな成長、発達に悪影響を及ぼすだけでなく命の危険にも繋がります」(横山さん)

「あらゆることに手や口を出し、子どもの自立心を育てないこと」もNGだ。

「子ども自身が解決すべき問題に対し、失敗しないよう親が先回りして手を出すことは、子どもの自立心を奪う『溺愛』です。溺愛され、自身の挑戦による失敗経験や達成感を得る機会を奪われて育った子どもは、考える力、決断する力が育たないまま成長し、何か問題が起きたとき他者や環境の責任にしてしまうようになります」(横山さん)

しつけで大切なのは、「子どもの成長や行動を信じて待ち、子どもが困ったとき自ら『助けて』と言える環境を整え見守ること」と横山さん。それが正しいしつけのポイントといえそうだ。


■毒親に育てられた子どもの対処法

毒親のもとで育った子どもは、自己肯定感や主体性、自立心、判断力、決断力などが十分に育まれていないことが多い。対処法や改善策はあるか。

「改めて親が自身の育ちや両親との関係を振り返り、心地よかった経験を思い出すこと。自身も不完全な人であることを認識し、子どもを“一人の人”として向き合うことが大切です」(横山さん)

その上で、子どもが間違ったことをしたら責めないことがポイントとのこと。

「心を整え、できれば笑顔で子どもの顔を見て、なぜ間違ったことをしてしまったか理由を聞きましょう。そして、自分のしたことを理解させ、ダメな理由と改善策を提案します」(横山さん)

今回の話を機に、子供との距離やしつけの仕方を見直せたらよいかもしれない。親子の信頼関係を築く上で大切なのは、「愛情、根気、忍耐力、一貫性があること」とのこと。正しいしつけは、強い信頼関係のもとに成り立ち、子どもの健全な成長、発達を促すだろう。


●専門家プロフィール:横山 人美
Keep Smiling代表。パーソナリティーコンサルタント、講演・セミナー講師。各種メディア執筆やテレビ出演など多数。前向きな発達障害とのかかわり方を始め、子育てや人間関係の悩みが楽になる心理学を伝えている。

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教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)