間仕切りで新たな価値を創造する間づくりカンパニーのコマニー株式会社(本社:石川県小松市、代表取締役社長執行役員:塚本健太)は、国立大学法人金沢大学、ならびに株式会社LIXIL (本社:東京都品川区、社長:瀬戸 欣哉)と共同で発足した「トイレのオールジェンダー利用に関する研究会」(以下、本研究会。座長:岩本健良 金沢大学人間社会研究域人文学系 准教授)にて、トイレのオールジェンダー利用に関する意識調査を行いました。

本研究会では「トイレ利用は、人間の尊厳にもかかわる人権のひとつである」という認識のもと、「性自認(注1)に関わらず、利用しやすいトイレのあり方」を追求し、すべての人々のトイレ利用に関する人権が尊重される社会環境実現の一助となることをめざしています。
2017年には、顔見知り同士が利用することで課題がより深刻になりやすいオフィスのトイレに焦点を当て「オフィストイレのオールジェンダー利用に関する調査」を実施し、 2019年5月31日に結果を公開(注2)しました。また、研究成果の一部を『SDGsとトイレ(進化するトイレシリーズ)』(日本トイレ協会編、柏書房、2022年9月発行)に寄稿しました。

5年後となる2022年にはオフィスのトイレに加え、駅・ショッピングセンターなど不特定多数の人が利用する公共施設(以下、公共施設)のトイレについても調査を実施しました。
本リリースでは、この調査結果の速報として、この5年間でのトランスジェンダー(注3)のトイレ利用に対するシスジェンダー(注4)の意識の変化、およびオフィスと公共施設でのトランスジェンダーのトイレ利用実態などについてご報告します。
 その他の調査結果等、詳細については2023年秋ごろに公開予定です。

(注1)性自認:自分の性別をどう認識しているか?という概念。
(注2)http://iwamoto.w3.kanazawa-u.ac.jp/Report_on_Office_Restrooms_for_All_Gender_Use_all.pdf
(注3)トランスジェンダー:出生時に付けられた性別(出生時に判断され、割り当てられた性別。日本においては戸籍や住民票に記載され、女性または男性の二者択一)と性自認が一致しない人の総称。当研究会においては、WHOなど国際機関の報告書などを参考に、トランスジェンダーを「自身の性別を、出生時に付けられた性別とは異なるものとして認識している人」と定義し、調査分析を実施。
(注4)シスジェンダー:出生時に付けられた性別と性自認が一致し、それに沿って生きる人。

リリース内容のポイント

1.トランスジェンダーが性自認に沿ってトイレを利用することに対するシスジェンダーの意識
・「どちらかといえば抵抗はない/抵抗はない」と回答したシスジェンダーは、オフィス、公共施設共に約7割。
・2017年の調査と比較して、オフィスでは「抵抗はない」が11.9ポイント上昇。
・性的マイノリティに関する研修やセミナーを受講したことのある人は、受講したことのない人よりも「抵抗はない」が4.6ポイント高い。ただし、研修やセミナーを受講したことのある人は1割程度に過ぎない。

2.トランスジェンダーのトイレ利用の実態
・「利用したいトイレ」を利用できていないトランスジェンダーは、オフィスでは約4割、公共施設では約3割。
・「利用しているトイレ」も「利用したいトイレ」も様々であり、選択肢があることが重要。
< アンケート調査概要 >

調査方法 :インターネット調査
調査実施時期 :2022年11月18日~29日の計12日間
調査発表日:2023年6月8日
調査対象者 :調査会社に登録しているモニターのうち、20~59歳の日本在住の有職者6万人を対象に事前調査を実施。
さらに、設定条件【※1】により抽出した1,325人(シスジェンダー計 1,000人、トランスジェンダー計325人)【※2】に対し、トイレに関する本調査を実施。


【※1】「職場」への出勤日数が、シスジェンダーは週2~3日以上、トランスジェンダーは週1日以上。シスジェンダーのみ就業するフロアの人数(他社等も含む)が30人以上
【※2】 シスジェンダー:男性:500人、女性500人の計1,000人 トランスジェンダーFTM:50人、FTX:105人、MTX:83人、MTF:87人※3の計325人
【※3】 トランスジェンダーのあり方も多様であり、本来単純な区分はできないが、分析の都合上、出生時に付けられた性別(この調査では、「出生時の戸籍性別」として尋ねた。)と性自認の組み合わせから構成される以下の4つに分類した。
FTM=Female to Male(トランスジェンダー男性), FTX=Female to X-gender, MTX=Male to X-gender,MTF=Male to Female(トランスジェンダー女性)また、出生時の戸籍性別は男性=Male、女性=Femaleとし、性自認の場合は男性=Male、女性=Female、 Xジェンダー=X-gender【補足1】とする。
【補足1】Xジェンダーとは、出生時に付けられた性別にかかわらず、性自認が男性/女性に二分できない人、男女の枠にとらわれない性のあり方の人。性自認は中性や、男女どちらにも属さない無性、どちらにも属する両性など、さまざま。
なお、Xジェンダーは日本独特の呼称であり、近年ではノンバイナリーということばが一般的になりつつある。
今回の調査では、性自認を問う設問にて「Xジェンダー、中性、無性など」または「わからない、決めたくない、その他」を選んだ回答者を「Xジェンダー」として分類した。選択肢の「わからない、決めたくない、その他」は、本来「Questioning/クエスチョニング【補足2】」や「Queer/クィア【補足3】」に該当するが、今回はトイレに関する調査であり、性自認が男女二元論に当てはまらないという観点から、すべて「Xジェン ダー」に含めた。
【補足2】クエスチョニングとは、自己のジェンダーや性的指向が決まってない人や模索している人を指す。
【補足3】クィアとは、元は「不思議な」「奇妙な」などを表す侮蔑的な言葉だが、1990年代以降性的マイノリティ全  体を包摂する用語として肯定的に使用されている。

< 調査結果概要 >
1.トランスジェンダーが性自認に沿ってトイレを利用することに対するシスジェンダーの意識
1-1.「抵抗はない」と回答した人の割合

 トランスジェンダーが性自認に沿ってトイレを利用することについて、“どちらかといえば”も含めて「抵抗はない」と回答したシスジェンダーの割合は、オフィス、公共施設共に約7割でした。両施設を比較すると、オフィスは71.5%、公共施設は66.9%であり、オフィスの方が抵抗を感じない人がやや多い傾向が見られました。 なお、オフィスについては、“どちらかといえば”も含めて「抵抗はない」と回答した人の割合は2017年の65.5%から2022年では6ポイント増加し、71.5%でした。特に、「抵抗はない」が11.9ポイント増加し、この5年で性自認に沿ったトイレ利用に対する意識の変化がみられます。

Q.トランスジェンダーの中には、性自認(心の性別)に沿った男女別トイレを利用したい人もます。 上記を踏まえたうえでお聞きします。あなたが利用しているトイレと同じトイレを、トランスジェンダーの人が 性自認(心の性別)に沿って利用することについて、どう思いますか?



1-2.「LGBT等性的マイノリティ」に関する研修等の受講経験の影響

LGBT等性的マイノリティ」に関する研修やセミナー等を受けたことのある人は、シスジェンダー全体の12.8%に過ぎず、まだまだ少ない状況です。
また、研修等の受講経験がある人は、ない人に比べて、トランスジェンダーが性自認に沿ってトイレを利用することに対して「抵抗はない」と回答した人の割合が4.6ポイント高い結果となりました。
皆が安心して快適に利用できるトイレ環境の実現には、トランスジェンダーや性の多様性について正しく知ることも重要だと考えられます。

Q.あなたは「LGBT等性的マイノリティ」に関する研修やセミナー等を受けたことがありますか?(図3)

Q .あなたは、「LGBT等性的マイノリティ」に関する研修やセミナー等を受けたことがありますか?(図4)

Q. あなたが利用しているトイレと同じトイレを、トランスジェンダーの人が性自認(心の性別)に沿って利用する ことについて、どう思いますか?(図4)






2.トランスジェンダーのトイレ利用実態
2-1.「利用しているトイレ」と「利用したいトイレ」

オフィス、公共施設共に、トランスジェンダーが「利用しているトイレ」も「利用したいトイレ」もさまざまです。「利用したいトイレ」では、両施設共に5割強が男女別トイレ、4割強が性別を問わず利用できる「多機能トイレ」や「男女共用トイレ」と回答しました。
前回の調査では、オフィスのトイレに「選択肢があること」の重要性を明らかにしましたが、今回の調査にて、公共トイレにおいても同様であることがわかりました。

オフィスのトイレ
Q.あなたが、職場で「主に利用しているトイレ」と「利用したいトイレ」の種類をお知らせください。(図5、図6)

・公共施設のトイレ
Q.あなたが、駅・ショッピングセンター等の公共施設で「主に利用しているトイレ」と「利用したいトイレ」の 種類をお知らせください。(図7、図8)





2-2.「利用したいトイレ」が利用できていない状況

オフィス、公共施設にて「利用しているトイレ」と、「利用したいトイレ」が不一致トランスジェンダーは、オフィスでは約4割、公共施設では約3割でした。シスジェンダーと比較して、オフィスでは37.6ポイント、公共施設では26.2ポイントも高い結果となりました。
また、公共施設に比べてオフィスの方が「不一致」の割合が高く、不一致の理由として、オフィスの方が公共施設以上に「周囲の目」を気にするものが多くありました。顔見知り同士で利用するオフィスの方が、より課題が深刻であることが伺えます。その背景には、働きたい性別で働くことができていない状況があり、トイレの課題は、就労困難の要因のひとつとも指摘されています。トイレの整備とともに、トランスジェンダーが働きやすい環境を整えることが求められます。

Q. あなたが、職場、および駅・ショッピングセンターなどの公共施設で「主に利用しているトイレ(実態)」と「利用したいトイレ(希望)」の種類【※】をお知らせください。(図9)

【※種類】男性用トイレ、女性用トイレ、多機能トイレ、男女共用トイレ(多機能トイレ以外)、どれも使わない・我慢する





不一致の主な理由(自由回答)】
多機能トイレを利用したいが、障害のある人などの利用を妨げそうで不安。
・そもそも職場には多機能トイレがない。
・男女共用トイレを利用したいが、公共施設、職場ともにないことが多い。
・自認する性別のトイレを利用したいが、自分の外見が利用したいトイレの性別に合っていない。
・出生時の戸籍性別で働いているため、職場では自認する性別のトイレは利用できない。

<研究会からのメッセージ>

トイレ利用は、人間の尊厳にも関わる人権のひとつでもあります。本研究は、研究会メンバー(3者の知見を掛け合わせることで、「オールジェンダーに対してあるべきトイレ」を追求し、すべての人のトイレ利用に関する人権が尊重される社会環境実現の一助となることを目指しています。
利用者一人ひとりの性?認やプライバシーが尊重され、尊厳が保障されること、そして、利用者の意思に沿う選択肢があること、それらを利用しやすい環境を整えることが重要です。また、オフィスのように特定の人が利用する場合は、利用者に寄り添った個別対応も求められます。
そうした社会環境の実現には、設備などのハードを整備することはもちろん、啓発や教育により偏見をなくし、すべての?が正しい知識とダイバーシティ&インクルージョンの視点を持つことも?切です。
ひとりでも多くの人が、トイレで悩むことがなくなるように願っております。

<研究会の概要>
研究会名称 :トイレのオールジェンダー利用に関する研究会
※2017年8月に「オフィストイレのオールジェンダー利用に関する研究会」を発足。その後各種活動を共同で実施。第2回調査では、オフィスに限らず、公共トイレ全般を対象に調査を実施するにあたり、2022年5月に名称を変更。
参加メンバー :金沢大学、コマニー、LIXIL
座 長 :岩本 健良(金沢大学
研究会の目的 :性自認(Gender Identity)に関わらず、誰もが「安心して、快適に利用できるトイレ環境」を明らかにすること。
※本研究会では、当調査の実施を受け、各種学会などにて調査結果を報告する予定です。

・座長プロフィール
岩本 健良 (いわもと たけよし)
金沢大学人間社会研究域人文学系 准教授
関西学院大学社会学部卒業、北海道大学大学院文学研究科修了
専門分野:ジェンダー学・教育社会学
主な業績:『教育とLGBTIをつなぐ』(共著:青弓社)、『ダイバーシティ時代の教育の原理』(共著:学文社)、『セクシュアリティの人口学』(共著:原書房)など
LGBT法連合会監事

・研究会メンバープロフィール(コマニー)
高橋 未樹子 (たかはし みきこ)
コマニー株式会社 研究開発本部 研究開発課
金沢大学大学院機械科学専攻卒業後、コマニー(株)に入社。(独)建築研究所の交流研究員、金沢大学の非常勤講師を経て、東洋大学大学院福祉社会デザイン研究科で博士号(人間環境デザイン学)を取得。
コマニーに入社以来、ユニバーサルデザインに配慮した建築計画についての研究に従事。トイレに関しては車椅子使用者や乳幼児連れ、性的マイノリティに関するテーマの他、衛生器具の適正数に関する研究に取り組んでいる。
一般社団法人 日本トイレ協会 理事。



配信元企業:コマニー株式会社

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