厚生労働省年金局『令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』より、都道府県別の年金受給状況をみていきます。

年金平均「14万円」…支出を考えるとまったく足りない

超少子高齢社会となった日本。財務省の発表では2020年より向こう40年、19歳以下の人口は減少の一途をたどる一方で、65歳以上の人口はほぼ横ばいに推移していく見込みです(ちなみに2022年時点で全人口は約1億2,000万人ですが、2065年には8,808万人まで減ってしまう算段です)。

高齢化に伴い、社会保障費の負担は増すばかり。財務省は現況に対し強い警鐘を鳴らしており、ホームぺージには「私たちの子や孫の世代に負担を先送りしている状況」と太字で大きく記されています。

2023年度(予算ベース)の社会保障給付費の内訳をみていくと、「年金」60.1兆円、「介護」13.5兆円、「医療」41.6兆円、「子ども・子育て」10.0兆円と、年金や医療関連の支出が多くを占めていることがわかります。

特に年金について、「いくらもらえるのか?」は気になるところです。そこで厚生労働省年金局発表『令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』より、現在の受給状況をみていくと、公的年金受給者数(延人数)は、令和3年度末現在で7,698万人。厚生年金保険(第1号)受給者の平均年金月額は、老齢年金が14万5,665円です。一方、国民年金受給者の老齢年金の平均年金月額は、5万6,000円となっています。

平均14万円。生きていくには心もとない金額です。

厚生労働省『家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)』によると、高齢夫婦無職世帯の家計支出の平均は、消費支出が22万4,436円、非消費支出(税金や社会保険料など)が3万664円で、トータル25万5,100円となっています。

なお65歳以上の単身無職世帯の支出をみると、消費支出が13万2,476円、 非消費支出が1万2,271円です。単身者でも赤字という現実があらわになっています。

都道府県別「年金ランキング」最高額の県は?

厚生労働省年金局『令和3年厚生年金保険・国民年金事業の概況』では、年金支給金額を地域別に発表しています。

まずは厚生年金の受給状況をみていくと、受給月額平均が最も高いのは、1位神奈川県「16万5,321円」。2位千葉県「16万17円」、3位東京都「15万8,661円」と続きます。なお受給者数が100万人を超えるのは神奈川と東京の2都県だけです。

全国平均(14万5,665円)と近しい金額となったのは、13位静岡県「14万5,975円」、14位広島県「14万5,408円」。以降、21位福岡県「14万261円」と続き、22位宮城県「13万9,086円」より14万円を割り込みます。13万円台となったのは、34位福島県までの計13県。さらにそれ以降の13県が年金「12万円台」という結果でした。

一方、国民年金を地域別にみると、厚生年金とはまた違った様相がみえてきます。

国民年金ランキングで上位となったのは、1位富山県「6万34円」、2位福井県「5万9,339円」、3位島根県「5万9,276円」。全国平均(5万6,479円)と近しい金額になったのは、24位福島県「5万6,653円」、25位宮崎県「5万6,469円」です。

厚生年金のような万単位の差額はありませんが、47位の沖縄県は「5万2,112円」という結果です。

なお国民年金については、納付率の地域差が問題になっています。日本年金機構『令和元 年 国民年金保険料納付率の地域差について』によると、最も納付率が高いのは島根県「87.0%」。一方最も納付率が低いのは沖縄県「61.5%」と、島根県と25.5%ものかい離が生じています。

納付率の差について同調査では「口座振替の利用有無」を一因として挙げています。 口座振替を利用したことがない者について、その理由を調査したところ、下位3県(東京・大阪・沖縄)では、6割から7割程度が「今までの方法で特に不都合はないから」「自分の都合で納めたいから」と回答しています。

「どうせもらえない…」といった現役世代の嘆きの声も聞こえますが、「もう国民年金保険料を払うのやめた!」という選択肢をとってしまうと、受給資格そのものがなくなってしまうことも。

とはいえ、老後資金のために今の生活が苦しくなるのはもってのほかです。受給状況、納付率ともに、地域格差の是正が急がれています。

(※写真はイメージです/PIXTA)