善光寺参りの精進落としの湯として親しまれ、開湯120年を超える戸倉上山田温泉。各地で開催される夏祭りのなかでも、戸倉上山田温泉の由緒ある笹屋ホテルの名建築に泊まって、迫力ある夏祭りを体験するプランがこの夏のイチ押しです。

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取材・文=TEAM GOKUH 取材協力=春燈社(小西眞由美) 

温泉街全体が盛り上がる夏祭り

 北陸新幹線長野駅もしくは上田駅から、しなの鉄道で戸倉駅まで、都心からは2時間ちょっとで着く戸倉上山田温泉。「美肌の湯」として知られる長野県屈指の温泉は美肌だけでなく、さまざまな薬効があることから、温泉療法医もすすめる名湯百選のひとつです。

 温泉街は三味線・踊り・長唄と芸を磨く芸者衆が今も活躍する昭和レトロ感があふれています。浴衣でなつかしい射的などに興じたり、ネオン街のスナックなどをめぐってみるのも風情があります。

 ここで一番盛り上がるのが、夏祭り。2023年は4年ぶりに7月15日(土)・16日(日)の2日間開催されます。開湯当時から水害に悩まされてきたことから、水神さまの怒りを鎮め、いで湯に感謝する水天宮の祭事が由来のお祭りです。

 迫力ある勇獅子や御神輿などが盛大に行われ、たくさんの露店も立ち並びます。夜の花火も壮麗です。

 お祭り当日はお昼から通行止めなどもあるので、早めにチェックインして、お祭りを楽しんでください。また、8月7日には千曲川納涼煙火大会が開かれるので、花火がお好きな方は、こちらもおすすめです。

有形文化財のホテルに泊まる

 戸倉上山田温泉でおすすめの宿が明治36年創業の老舗旅館「笹屋ホテル」。なかでも登録有形文化財に泊まることができるのが別棟8室の「豊年虫」です。

 昭和7年(1932)、近代建築の巨匠フランク・ロイド・ ライトに師事した日本人建築家・遠藤新が敷地の一角に別荘として設計した数寄屋造りの個室8室で、笹屋ホテルが創業100年を迎えた2003年、文化庁より登録有形文化財の指定を受けました。これを機に別荘の名を改め、専用厨房を備えた8室だけの宿、「笹屋ホテル・豊年虫」として開業しました。

 豊年虫とは千曲川から羽化する「かげろう」のことで、地元ではこの虫を数多く見た年は豊作になると伝えられています。昭和2年、文豪志賀直哉が笹屋ホテルに逗留中に短編小説「豊年蟲」を執筆していることがその名の由来です。

 遠藤新は和と洋の融合という共通を試みながら、床の間をはじめとした各部屋の細部に至るまで、それぞれに異なる意匠を与えました。書の楷書、行書、草書のように、「真」にあたる客室「蘭」を基本に、ほかの7部屋を「行」「草」と変化を付け、館全体に遊び心が感じられる設計です。

 部屋の空間をさらに生かしているのが池を配した庭です。自生する樹木の間に池のある庭園と和風建築がよく調和しています。作庭は遠藤新と同郷で、ともに東京帝国大学に学んだ、幼少時代からの親友である阿部貞著によるものです。

 お祭りで盛り上がった後は大浴場や貸切風呂で体をいたわり、繊細な美を宿したお部屋で、のんびりと豊かな時間を過ごしてはいかがでしょう。

 また、翌日、時間があれは善光寺まで足を延ばし、国宝の本堂にお参りしましょう。善光寺のご本尊、一光三尊阿弥陀如来は秘仏です。お祀りしてある本堂の瑠璃壇の下の暗闇の回廊を巡り、ご本尊の真下にかかる身代わりの「極楽のお錠前」に触れてみてください。御本尊とご縁を結ぶといわれるこの「お戒壇巡り」で、極楽のお錠前に触れることができた人は、必ず極楽往生できると信仰されています。

 最後は仲見世の美味しいお蕎麦でしめ、長野の夏を満喫してください。

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迫力満点の御神輿 写真提供=信州千曲観光局